7話目

 太谷大治はかくして小寺先輩と一緒にスポーツ用品店で働き始めた。ただしこのスポーツ用品店は小寺先輩が就職した頃と違い、昨今の流行りに乗ったアウトドアやいわゆる山歩きグッズ中心にシフトしていた。太谷は初めの頃こそ勤務に悪戦苦闘していたものの、従順に従い言われたことを言われたとおりにこなす能力が圧倒的に高く、すぐに店を任せておけるレベルに達した。小寺先輩はある程度予想はしていたが、ここまで状況対応能力が高いとは、推薦した自分が一番驚いていた。そしてもう一つ、小寺先輩を驚かせたのは太谷の肉体であった。ラグビー選手にはもちろん筋肉という鎧が必要ではあるが、その鎧は重く走力を低下させてしまう。そのためラグビー選手は重い筋肉を最低限ぎりぎりで配分を考える。だが走力を考える必要が無くなった太谷は興味本位で現役時代の筋トレ+アルファを続け、さらに体重を増やし過ぎないように抑えていた栄養を摂取し続けた結果、現役時代の1.5倍はあろうかというメガサイズの筋肉美がそこには誕生していた。

「お前はどこを目指しているんだ。」

 バキバキに切れた肉体を目にした小寺先輩に、太谷は白い歯を光らせたスマイルを披露し、その行為が何も考えていないマッチョのすべてを物語っていた。

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