6話目
小寺先輩は太谷大治の長かった現役時代を慰労し、彼の新しい門出を祝おうと二人きりで一席設けてくれた。太谷は喜んで参加し、現役時代の節制を忘れて大いに飲みそして食らった。
「ところでお前はこれからどうするつもりなんだ?」
夜もふけた頃、小寺先輩は本日の核心とも言うべき質問を太谷に投げかけた。
「なんにも考えていません。しばらくは自由人ですね、どうせ独身で養う家族も居ませんし、のんびりあちこちを旅したりラグビーのない生活を謳歌します。」
小寺先輩の予想をはるかに上回るなんとも脳天気な返答が返ってきた。小寺先輩は天真爛漫に確証のない明日を夢見る巨漢の後輩を見て、自分の心配が取り越し苦労でなかったこと実感させられた。
「お前、俺がいる店で働いてみないか?」
小寺先輩は用意していた太谷の就職プランを話し始めた。新しい人生のプランが全く無く、それを叱責されている自分を忘れ学生時代やプロリーグ時代のように嬉しそうに目をキラキラさせる、来年四十とは思えないこのたわけた後輩に呆れながら冷静に彼の人生を設計し始めた。
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