2話目
「無理言ってごめんなさい。」
赤をベースにしたチェック柄のフランネルシャツにダウンベストを重ね着した、背の低い白髪混じりの女性が労を労っていた。労を労われていたのは先ほどから一人山を登っていた巨漢:太谷大治、大きくなることを運命付けられたような彼は歩荷であった。太谷大治は麓のアウトドアショップを手伝いながら、山登りのガイドをしたり、山小屋に荷を上げる歩荷をしていた。
「いえいえ、小寺先輩のためならどんな山でもエンヤーコラですよ。」
太谷は巨体を揺するように笑いながら答えた。太谷と比べるとその半分位しかないように見える白髪混じりの女性は、やれやれといった感じで答えた。
「貴方の先輩は亡くなった私の夫、私は貴方の先輩から頂いた名字を名乗っているだけよ。」
すると太谷は小寺夫人を名乗る女性の後ろ、朝日に照らされ燃えるように輝く山小屋を見つめながら言った。
「この山も、山小屋も、そして山小屋の女主人どのも、俺にとっては全て小寺先輩そのものですよ。」
その太谷が呟いたその言葉は、小寺夫人を涙ぐませずにはおかなかった。
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