歩荷の承継

Bamse_TKE

1話目

 まだ明け切らない白みつつある東の空を背景に、男が山道を一人登っていた。男の大荷物もすごいが、それ以上に目を引くのは男の体躯であった。190cm近い巨体は、ピッタリと上半身にフィットした上着を下から突き破らんばかりの筋肉で引き伸ばし、ゆっくりではあるがしっかりと山道を踏みしめるその二本の足は、今にも足元の岩場を踏み破らんばかりに鍛え上げられていた。まるで業務用の冷蔵庫に手足が生え、それが明け方の山を登っている。そんな錯覚に襲われる光景がそこにはあった。

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