スキル《超筋肉》発動!~シークレットダンジョンの悪魔に放り込まれたボス部屋で、ムキムキに!

るるあ

パワー!!


 “いくぞースグル!ぼくと同じポーズを取って、発動呪文「Yaaaaaaaaa!!!」って叫ぶんだ!”


 デーデッ♪ででででーんでーんでん♪

 じゃんじゃん♪

 いっつまい♪

 “「Yaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」”


 全身を、あたたかいひかりが、包む!


 さっきまで見上げていたはずの目線は目の前のボスーーミノタウロスよりも高く、身体には力がみなぎっている。


 《GU……Gurrroooooo!!!》


 僕の変化に戸惑っていたミノタウロスは気を取り直したのか、僕に向かってまた、威圧の咆哮を放つ!!

 …が、そんなもの、ムキムキになった僕には効くものか!


 「ふんっ!」

 筋肉で、ミスリル鉱石みたいに硬くしなやかになった腕を、ぶんっ!と一振り。

 離散した威圧と、振った腕により起きた衝撃波でよろめいたミノタウロスを見て、笑ってしまった。


 「じゃあ、こっちからも行きます!」

 宣言しながら、ミノタウロスへ向かう!


 まず拳で連打!打つ打つ打つ打つ!!


 攻撃しようとする腕を手刀で落とす!!


 逃げ出そうとする足を掴んで、握り潰す!!

 やらなければこっちが殺られる!ですよね、父さん!!


 …気がつけば、ミノタウロスは光の粒となり、目の前には大きな魔石と、宝箱。


 「僕、が…倒した?」


 本当はヒョロガリの僕が?


 急に力が抜けて地面に倒れ込み、意識を失った。



★★★★★★★☆


 僕はスグル。

 辺境の寒村、ハジーコ村の出身で、謎スキル《超筋肉》を持て余す、12才のヒョロガリ体型な男だ。


 村は貧しく、子供は長男、頑張って次男までは暮らして行けるがそれ意外は、大体村を出される。養えないのだ。

 でも、生まれながらに神から授かるスキルを磨けば、一攫千金も夢じゃない。


 僕には素晴らしいスキルを持つ幼なじみ達がいる。《剣鬼》のユウシ、《慈愛》のマリア、《影操作》のジャド、《天のイカヅチ》ライミだ。

 みんな三男とか、四女とかなので、赤ちゃんの頃から一緒に育った。僕達は幼なじみとして、村では助け合って暮らしていた。


 12歳になり、これからどうやって身を立てるのかという話になった頃、村から一番近い町、トナリーシテイにダンジョンが発生した。

 ダンジョンとは、神が与えた《スキル》を磨くため、モンスターを討伐してその報奨を得られる特殊な空間の事だ。

 できたてのダンジョンは不安定ではあるが、そんなに強いモンスターは発生しないらしいし、既存の物と違ってまだ報奨が奪い尽くされていない。

 そう、一攫千金のチャンスだ!


 僕らは5人で一緒に、トナリーシテイに移り住む事にした。

 身分証も欲しかったし、まだ自分の謎スキルを諦めきれなかった僕は、とりあえずみんなと一緒に冒険者登録をした。

 気心が知れた仲間がいいよね、ということでパーティにも入れて貰えた。

 足手まといにならないよう、精一杯やっていこうと思って頑張った。


 でも…。



 「おい、あれ見ろよ。」

 「ルーキー“掌中の珠玉”の、ちっこいやつはまだいるのか。」

 「かーわいーいねぇ~!ハハハ!」


 ギルドに今日の報告に行くと、併設酒場で屯してる奴らに、僕だけ必ずからかわれる。


 「ちょっと!!」

 「マリア、僕は大丈夫だから!

 みんな、ギルドは私闘禁止だよ?落ち着いて、ね。ジャドも、影縫い解除して?…ライミ、飲んだらビリビリってなるやつは結構な衝撃だから、やめといて…」

 殺気立つみんなを、なんとかなだめた。


 「……スグル、無理にギルドの報告に付き合わなくていいんだぞ?バカの相手は疲れるだろ?」

 剣から手を離さず、僕に笑顔を向けるユウシ(目が怖い…)が言う。


「ありがとう、でも気にしてないから。」

ニッコリ笑顔でそう返せば、みんなはちょっと複雑な顔してた。



 その優しさが嬉しくて、でもちょっと悲しくて。

 僕以外のみんなは大活躍している中で、どんなにトレーニングしても筋肉もつかず、スキルも全く発動しない。


 何でもやれる事はやってるけど、現実問題として…僕はお荷物だと思う。



★☆★★★


 そんなある日。

 僕たちは、ダンジョン内で見たことのない

部屋を見つけた。


 「この部屋、前は無かったわよね、ジャド?」

 「ん。…影分身、で、探らせてたけど、急に現れた、気が、する。」

 「ああ、ここは壁だったぜ。一昨日、ホブゴブリンをこの辺に叩き込んでとどめを刺した所だったはず。…だよな?」

 「アハッ!スグルに飛びかかったの見て、切れたユウシが暴走したやつねー!

 …その後、何故か魔石が報酬ドロップしなかったよね?」


 「……僕がうまくマッピングできてなかったのかも「「「「それはない!!」」」」


 「スグルはいつもニコニコピコピコ可愛らしく頑張ってるわ!!私達の癒しなのよ!!」

 「そうだ!!剣しかできない馬鹿な俺をキラキラした目で見て応援するお前が可愛くて可愛くて!」

 「魔力操作出来なくて帯電して遠巻きにされてた私に、ピカピカで綺麗、かっこいいなんて言ってくれたのはスグルだけよ!」

 「…いつも、うまく話せない、おれの、話…嬉しそうに…聞いてくれる…。おまえしか、いない。」


 “ホントウニ、ソウカ?”


 僕らは、いつの間にか、白い靄みたいなものに閉じ込められている!


  “コイツがイナケレバ、オマエタチ四ニンデ、モット上ヲ目指セルノデハナイカ?”


 変な声が、頭に響いて……


  “スグル、オマエハ無能デ役ニ立タナイ、オニモツダ〜!”


 怖い顔した、幼なじみたちが、僕を、

 「スグル!!それはモンスターだ!俺たちじゃな…!」


 “バイバ〜イ、スグル♪”


 僕を、別の場所に、転移させた。

 


 ……その時、スグルの額に、「肉」の文字が現れ、全身を光が包んだ!!


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆



 気がつくと、少し薄暗く、ジメジメした石造りの部屋で、僕はへたり込んていた。


 なんだか、額が熱い…?


 “スグル少年!!やっとこの時が来たぞ!”


 目の前に突然、手のひら大の、羽がついたおじさん?妖精?みたいなものが現れた。

 そいつは父さんみたいにムキムキな体をタンクトップと、藍色の短い、裾のほつれた短パンで包んでいて、母さんみたいに耳が縦に長かった。


 “僕はスキルの妖精!!よろしく!”

 サイドチェストとかいうポーズ(父さんがやってた)を決め、白い歯を見せてにかっと笑いかけてくる。


 《 Gooorooooo!!!!! 》


 突然の咆哮に、身体が強ばる!

 声の方を見上げれば、災害急ランクのモンスター、ミノタウロス……!


 “わー!説明してる暇ないネ!じゃ、ぼくが発動の補助するから、君のお父さんみたいに、やってみて!”


 何が起きてるのか全く消化できないけど、父さんの戦いは遠目で毎日見ていた。


 やるしかない!!


 「よ、妖精さん、お願いします!」


 僕は、ミノタウロスに挑むべく、立ち上がった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 ふっと気がつくと、いつも泊まってる宿屋の、ベッドの上だった。


 体中がギシギシする。筋肉痛の極限まで酷いやつ?という感じかな…?


 「……スグル?スグル!?」

 静かに扉が開く。

 暗い顔した幼なじみ達が、ぼくを見て笑顔になったり、涙を浮かべたり。

 入れ替わり立ち代わりぎゅってされて、ちょっと痛かった。でも、すごく嬉しかった。ぼく、生きてる。


 みんなに甲斐甲斐しく世話をされながら(毎食あーんってされるのは恥ずかしい)、あのダンジョンでの出来事を聞いた。


 あの隠し部屋は、最近発見されたもので、人の弱味や妬みなどの悪感情を操作して、仲間割れさせたり、物理的に人数を分断して、強制的にボス部屋に放り込むという、やっかいな罠らしい。

 しかし攻略できれば、必ずスキルの強化がされるというものなので、ある程度の上位者のみが知ってる、言わばシークレットダンジョンなのだそう。


 「俺達はスキルがそれぞれ《剣豪》《聖女》《影王》《雷女王》になってた。」


 みんなは四人で、あの声の主?らしい悪魔みたいなモンスターと戦ったそうだ。

 スグルを返せ!って必死だったよな、なんてユウシに言われてくすぐったい。

 でも、スグルの居るボス部屋の場所を吐くまで、影操作て逆さ吊り、雷炙りコースって…。現場まで簀巻きにした奴を引き摺って扉を開けさせたとか、みんなやっぱすごいなって思った。


 「でも、扉開けたら、ムキムキのスグルがミノタウロスをタコ殴りしてて、マジビビった!」

 スグルは母ちゃん似の美人かと思ったら、スキルは父ちゃんソックリなんだな〜!なんてユウシとジャドに笑われた。

 マリアとライミには、あのままで戻らなかったら、悪魔とスキル妖精は生き地獄見せてやるところだった…おかえりなさい、しょた?と涙目で言われたけど、何度聞いても“しょた”が何なのか教えて貰えなかった。僕の名前はスグルだよ??


 とりあえず、僕もこのパーティで役に立てそう!


 がんばるぞー!!



 

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スキル《超筋肉》発動!~シークレットダンジョンの悪魔に放り込まれたボス部屋で、ムキムキに! るるあ @ayan7944

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