父がうざい
奈月沙耶
父がうざい
お風呂あがりにお父さんはスクワットを始める。
パンイチで。
死ぬほどキモイ。死ね。
しかも人がテレビを見ている真横で。
ウザい、ハゲ死ね。
ふーふー言いながらこっちを向いて、固くなったから触ってみろって強要する。
セクハラハゲおやじ死ね。
「キモイ、あっち行け」
「触れよー」
「キモイ、ゴミカス死ね」
「お父さんに向かって生意気言ったな。スマホ禁止。寝てる間に隠しておくからなぁ!」
うっせぇ、でかい声出すな近所迷惑。スマホ禁止とかって別に困りませんけど。ゲーム機でだってメッセージのやりとりはできるし動画見れるし。
「わかったかぁ!」
あー、ウザい。子ども相手に大人気ない、死ね、ゴミカスが。
お父さんがキモイせいでこっちはすっかり現実の男の子を素敵だと思えなくなった。カッコイイと思えるのは二次元のクール系キャラに対してだけ。
お母さんだってクールで無口な人が好きって話してたのに、結婚したのはキモイうざキャラなお父さん。どうしてこうなったって問い詰めたいけど、訊いたらいけない気もする。
そのお母さんは、お父さんがシェーカーにプロテインを入れるときに床にこぼした粉末を雑巾で拭いている。あきらめたような背中から「高いんだから無駄にしないでよ」って心の声が聞こえてくる。
あたしとお兄ちゃんは塾にも行ってないっていうのに、お父さんはジムに通ってる。こうして高いプロテインも買っている。
腹が割れてきたって喜んでるけど、だからなんだ。今度はマンガを読んでいるお兄ちゃんの邪魔をしてキレられてる。
「なんだぁ、ケンカするかあ、お父さんに勝てると思ってるのかぁ!」
キモイ、ウザい、大人気ない、死ね。
筋肉アピールにしたって言うほどムキムキなわけじゃなく「正しくは筋トレアピール」とお母さんも言っていた。
この無駄な筋トレアピールはいつまで続くのか。
今夜もウザい父の大声でやかましく夜は更けていく。
父がうざい 奈月沙耶 @chibi915
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます