第7話 ジューネスティーンの研究


 ジューネスティーンとレィオーンパードは、教官の説明が終わるまで貪るように聞いていた。


 教官の説明が終わると、2人1組になって今の説明の通りの事を試すようにと指示があったので、ジューネスティーンとレィオーンパードも2人で組んで、言われた通りお互いに技の掛け方について確認し合っていた。


「ねえ、にいちゃん。これのコツって、何かあの?」


 ジューネスティーンは、レィオーンパードを動かすだけで、技に入る様子は無い。


 そんなジューネスティーンとは対照的に、周囲は直ぐに体を相手に入れるようにして技を磨こうとしていた。


 そんなジューネスティーンの行動からレィオーンパードは、ジューネスティーンが何かを掴んだのかと思ったのか確認した。


「ああ、これは、技をかける前が、きっと、重要なんだよ。だって、重心の移動って、相手の体重移動だろ。それって、はいそうですかって、相手は素直に従ってくれるのか?」


 ジューネスティーンは、レィオーンパードの腕を引きつつ、足元を見ながら答えた。


 レィオーンパードは、自分の腕を引いたり戻したりしているジューネスティーンの視線の方向を見て不思議そうな表情を浮かべたが、今までの付き合いから、その動作によって何かを掴もうとしていると思ったようだ。


 そして、自分自身が教官に投げられた時の事を思い出していた。


「そうだね。 投げられるって、嫌だから、絶対に抵抗するよね」


 納得するような表情をしつつ、ジューネスティーンにされるがまま体を動かされていた。


 すると、ジューネスティーンは、動きを止めると、レィオーンパードを見た。


「なあ、今度は、俺が腕を引いた時に、引っ張られないように力を入れてくれないか?」


 レィオーンパードは、一瞬、考えたようだが、直ぐに、ふーんというような表情をした。


「うん、分かった」


 レィオーンパードとしたら、今は何をするのか良く分からないと思ったようだが、それは、ジューネスティーンが何かに気がついて、それを確認しようとしていると思ったからだ。


 レィオーンパードは、ジューネスティーンの要求を聞いてくれたので、今度は、レィオーンパードの上半身を視界に捉えるように見ると、持っていたレィオーンパードの腕を引っ張った。


 最初はゆっくりと引くので、レィオーンパードは、直ぐに力を入れて引っ張られないようにした。


 その様子にジューネスティーンは納得するような表情をし、元に戻すと、今度は、もっと早く、自分自身の出せる一番早い速度で引っ張った。


 だが、直ぐにレィオーンパードは、力を入れたので、体重がつま先に掛かるような事は無く、その早い動作を何度か行うと、ジューネスティーンは納得するような表情をした。


「うん、タイミングだけだと、本気で受けようとしている相手には通用し難いかもしれないな」


 呟くように言葉にしたので、レィオーンパードは、少し困ったような表情をしたが黙って聞いていた。


 それは、ジューネスティーンが、考え事に没頭してしまい、その考えが言葉になってしまっている事を知っているので、レィオーンパードは黙って聞いて、ジューネスティーンの考えの邪魔をしないようにと思っていた。


「レオン、今度は、持ち上げるまでするからな」


 ジューネスティーンは、そう言うと直ぐに腕を引いてしまった。


「えっ!」


 レィオーンパードは、思わず声に出すが、突然、条件が変更になった事で、自分の気持ちの切り替えができなかった。


 ジューネスティーンとしたら、今までのようにレィオーンパードが抵抗してくると思って、それなりの力を加えた。


 レィオーンパードは、突然の変更についていけず、抵抗する力をかけるタイミングが遅れてしまったので、持ち上げられた勢いで、そのまま投げられてしまった。


 ジューネスティーンは、自分の考えをまとめるつもりで持ち上げたつもりだったのだが、レィオーンパードは準備が整わなかった事もあり、勢いのまま投げられてしまった。


「あっ!」


「ってぇ〜っ!」


 ジューネスティーンは、持ち上げるだけだと思っていたのだが、目の前の床に叩きつけられたレィオーンパードを見て、何でなんだという表情をしていた。


 一方、レィオーンパードは、床に叩きつけられるとは思ってなかったから痛そうな表情をしていた。


「にいちゃん、酷いよ。 条件が変わるなら、もう一呼吸位タイミングをずらしてよ! こっちの準備が整ってないのに投げないでよ!」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、レィオーンパードが準備できてない状況だった事に気が付いた。


「ごめんよ」


 そういうと、ジューネスティーンは、レィオーンパードを引き起こすように手を引いて立たせてあげると、恨めしそうな顔をジューネスティーンに向けた。


「にいちゃん、変更する時は、ちゃんとこっちの様子を確認してよ。意識しているかどうかで、体の反応が変わってくるんだからね」


 ムッとしたように言ったが、言い終わると、ジューネスティーンの表情が変わっている事に気がついた。


「にいちゃん、何か閃いたの?」


 興味深そうに聞いたのだが、ジューネスティーンは、まだ、しっくりしたような表情ではなかった。


「うーん、何となくかな。でも、今ので、もう少し考えたら、どうすれば良いか分かりそうだよ」


 それを聞いてレィオーンパードは、ジューネスティーンがヒントを得たのかもしれなと思った。


 レィオーンパードも教官に、手も足も出ずに完膚なきまでに倒されてしまっていたので、ジューネスティーンが掴んだ内容を知ることができれば、自分のこれからも決まってくるように思えた。


 レィオーンパードにも、打倒教官という意識があった事から、ジューネスティーンの強くなる為の方法に便乗しようとしている。


 方法が分からず、ただ、ガムシャラに行うのも一つの手ではあるが、理由やコツを知り、そこから思浮かべる事ができる理想に近づけられたら上達は早くなる事をレィオーンパードも分かっていた。

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