第10話 履歴書に苗字とか必要なのか?(ドリア)
幽霊が机に向かって数十分。頭を抱えて何か悩んでいるようだ。
その様子をまめでんきゅう−ねことデメニギスは見ていた。
「あの唯一まともな性格の幽霊が悩むなんて珍しいね」
「それって幽霊褒めるのが目的?それとも俺がまともじゃないこと言うのが目的?」
「怖い怖い怖い怖い怖い」
「まぁ確かにあのしっかりした幽霊が悩むなんて、何かあったのか?」
「ちなみにプリンはたたたたたたたたたた食べてないからね?」
「食べたんですねわかります」
「うーーーーーん、どうしようか……」
幽霊が呟いた。
「あの紙何?」
「うーーーーーん、わからん。聞いてみようぜ」
「待って。あの感じ……、もしかすると気づいてほしいんじゃない?きっと自分から相談してもらうのが恥ずかしいんだよ」
「そんなこと考えるか…?あいつが?」
「まぁゆうて幽霊だし」「幽霊って言い訳に使えるか?」
「聞こえてますよ……。まめでんきゅう−ねこさん、デメニギスさん」
「おう⁉︎なんだ聞こえていたのか」
「幽霊ですから」「幽霊言い訳に使う人いたわ」
「地獄耳なんです」
「なんでこいつは地獄に堕ちなかったのかな」
「カクヨムに対する想いが届いたんですよ」
「すっげぇファンだった」
「んで、お二人に相談してもらいたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」
「いいよ!なんでも相談して!
プリン忘れるならね!」
「結構気にしているんだなそれ」
「え、プリン?」「知らない方がいいこともあるぞ!」
【プリン】…喧嘩の象徴。
「それで、なんだ?相談って」
「それがですね、苗字なんです」
「苗字?」
「お2人ともあんまり履歴書に書くことがないので、あまり悩まないと思いますが」
「それ俺らのことバカにしてるよね」
「我々には苗字がありません!」
「……………………は?」
「苗字、ありませんよね。まめでんきゅう−ねこさんの本名はなんですか?」
「まめでんきゅう−ねこだけど…」
「それです!苗字ってありますか?」
「まめでんきゅうです」
「絶対比較対象じゃないよねこいつ」
「………デメニギスさんの苗字は?」
「デメ」「嘘ですよね⁉︎⁉︎⁉︎」
「嘘だよ。まぁ確かに俺らって苗字ないよな」
「そうなんです。それで……この紙は履歴書です。塾の教師になろうと思っているんですが、私、幽霊って名前なので、苗字がないんですよね。この履歴書には苗字を書く欄があるのですが…」
「幽霊ってそれ、名前だったん?」
「え、いや、え…………知らなかったんですか?」
「マジ??????」
「嘘でしょ⁉︎そんなありきたりの名前だったの⁉︎」
「はい。………え、でもデメニギスさんだってそのまんまですよね?」
「確かに………………」
「ってことは、僕が一番こだわってるよね⁉︎名前!」
「まさかこいつに抜かされるとは思わなかった…」
「それで、苗字をどうしようか考えていたところなんです」
「確かにそれじゃどうしようもないな。……………あ、生前の名前にすれば?」
「あ、ダメです。幽霊って書いちゃったので」
「消せばいいじゃん」
「いやこれ、
油性です」
「そこは水性で書けよバカァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
【油性】…消せない過去。
「まず苗字なんて必要なのでしょうか」
「何その謎理論??????」
「苗字の始まりは平安時代後期にまで遡さかのぼります。増えすぎた藤原の氏族は、自分たちの屋敷のある京都の地名等から家名(九条・近衛・鷹司・二条・一条等)で区別されるようになり、いつからか自らもその呼び名を名乗るようになりました。その後他の公家(貴族)である源氏、平氏、橘氏にも同様に広がっていき、平安時代の終わりになると、その通称としての家名が呼び方として定着しました」
「超教育的コンテンツじゃん」
「そこに至るまでが非教育的コンテンツなんだよ」
「それで、我々は現代人。ホモサピエンスです」
「平安時代の人もホモサピエンスです」
「平安時代の人は十二単じゅうにひとえを着ていました。これはどういうことかわかりますか?」
「作者のファッションセンスが無いことですね」
は?
「1人ガチギレしてる人いるよ⁉︎」
魚にだけは言われたくないわ。
「…いいえ違います。……今この時代で十二単を着る人はいますか⁉︎」
「いないね(絶対わけわからんことになる)」
「そうです!平安時代の頃から伝わる十二単を今では誰も着ていません!」
「そ、それで?」
「つまり苗字がなくてもいいというわけです!」
「知能の超無駄遣いやめて!」
「でもこの際だから、皆んなで幽霊の苗字考えようよ!」
「それは良い案だな」
「ありがとうございます。では、大人っぽく、少々可愛げのある苗字をお願いします」
「この人数秒前まで苗字いらんって言ってたからな」
「できた!これどうかな?」
「早っ。どんなのだ?」
「大人っぽく、少々可愛げのある苗字だよ!
「期待した俺らがバカだった」
「じゃあお詫びに料理作っていくよ」
「「え??????」」
「言い忘れてたけど、この回も料理企画なんだよ」
「マジかよ」
「ちゅーわけで、幽霊が好きな、ドリアを作っていくよ」
「それは楽しみです!」
「まめでんきゅう−ねこ、お前………
まさか謝ることを知っているとはな」
「今の謝ってほしいんだけど」
「でも料理企画だからならやめるわ」
「言わなきゃ良かった発言TOP3」
「そういやドリアとグラタンって似てるよな」
「マカロニの部分がお米になったのがドリアって印象だけど知らないね」
「ドリアは、バターライスまたはピラフにホワイトソースをかけて天火で焼いた料理ですね。
グラタンは、魚介類・肉・麺類・野菜などにホワイト-ソースを合わせ、パン粉・粉チーズなどをかけて焼き皿に入れ、天火で表面に焦げ目がつく程度に焼いた料理です」
「以外と明確に違うんだな」
「まぁ美味しければなんでも良いでしょ」
「相変わらず適当だなお前」
「まずは玉ねぎを微塵切りしていくよ。
んで切ったら、ニンニク1かけらをまた微塵切りしていくよ。
これは適当に慎重に切ってね」
「すまんニンニクを適当に切ったら手を怪我するから慎重だけにしろ」
「やだ」
「なぜ??????」
「僕の癖みたいな感じかなぁ?まぁなんとなくなんだけどね」
「なんとなくで怪我させるのやめてもらっていいですか?」
「嘘ついてないよ?」
「○ろ○きじゃねーから」
「ちょっと鍋っぽい?フライパンに油を入れて、サイコロステーキ先輩になったニンニクを入れていくよ。
香りづけをしたら玉ねぎを投入!」
「ってか今ドリアの何作ってるんだ?」
「ここで問題!今ドリアのどこを作っているでしょーか!
正解は、ご飯にかけるソースでした!」
「最初から言え」
「んで、飴色?になったら一旦フライパンから取り出すよ。
まぁご自身の判断に委ねます」
「曖昧と適当のパレードだなこりゃ」
「何言ってるの?」
「すまん忘れろ」
「今度はトマト缶を入れるよ。間違っても缶詰ごと入れないでね」
「余計な心配だ……」
「適当に慎重にとはこういうことだよ」
「深いというより不快」
「んでトマトが少し煮詰めたら、さっきのニンニクと玉ねぎを入れていくよ。
多少ソルトを振ってしばらく煮詰めれば完成かなぁ。
そしてここで登場するのが、ソーセージ!」
「ちょ待て、それシャウエッセンじゃねーか」
「うん。冷蔵庫の奥にあったから、使おうとしたんだけど……ダメ?」
「いや、別に?」
「もしかして1人で焼いて食べようとしてた?」
「まさかねぇ!そんなことないから⁉︎」
「じゃあ全部使いまーす」
「……………」
「シャウエッセンを食べやすい大きさに切ったら、オリーブオイルをフライパンにかけて炒めていくよ。
ソーセージも焼き終わって、トマトソースも準備OK!」
「順調ですね」
「耐熱皿にバターを塗ったら、お米を敷き詰めて、チーズを上に好きなだけばら撒くよ。
その後トマトソースを上にかけて平らにし、ウィンナーも上に乗せるよ」
「乗せすぎじゃね?」
「保険が?」
「ざけんな」
「ただの暴言だよそれ⁉︎」
「はい、喧嘩するのはやめましょう」
「「さーせん」」
「(そこだけ息ぴったりなのなんなんでしょうか……)」
「ウィンナーの上にまたチーズの雨を降らす!」
「さすがにチーズ乗せすぎじゃね?」
「保k…………なんでもない」
「(空気を読んだだと⁉︎)」
「さすがにカロリー高いから、まぁ乗せたい人はブロッコリーを置いてね」
「申し訳程度のブロッコリー」
「全部乗せたらトースターに入れて、まぁ、うまく焼けるように頑張って」
「投げやりするな」
「まぁ片方ずつ5分くらいで焼けたよ。
これをテーブルに置いて完成!さぁ、どうぞ!」
「ありがとうございます。ではいただきます」
幽霊は溶けている熱いチーズを口に入れた。
「お、美味しい!やはりドリアですね!」
「そう?ありがとうね!」
「これはまめでんきゅう−ねこさんに感謝の気持ちを表さなければ!
苗字は………
「感謝の表し方ならもっと良い方法あんだろ!」
「もう履歴書に書いてしまいました」
「俺はもう寝る!」
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