第9話 おはぎ弾
残念…基本スキルで、魔法スキルが手に入ったので、【土魔法】が使えるようになりたいと思う。
武器スキルを魔法スキルに付け替えると、ステータスが若干変化した。
何か法則があるのかもしれないけど、一つのスキルは、2種類のステータスを上げるような効果があるようだ。
【土魔法】【土耐性】はMPが10、INTが1、【鎌スキル】はHPが10、STR1上がる。
これでスキルがコピーし放題なら、最強を目指せそうだけど、この世界はそうそう優しくないみたいだ。
じいちゃん達は【エディット】スキルはあるのにスキルのコピーについては何それ?という感じのコピー自体の意味もわからないらしい。
スキル欄を直接見ないとコピー出来ないと言う事であれば、【VR表示】があってできる事なのかも知れない。
それでいて、基本スキルに【エディット】があるのは、人のスキルを真似て覚えてたり、教えてもらう事で技術が上達するような、人が当たり前に持っている学習スキルなのかも知れない。
気を取り直して、魔法の修得を目指す。
しかしスキルがあると言って、魔法が使える訳でもない。
スキル持ちのじいちゃんに聞いてみても、じいちゃんは魔法なんか使ったこともないと言っている。
土魔法は手のひらから石を飛ばしたり、土を盛り上げて壁を作ったり、地面に落とし穴を作ったり出来ると知識は言っている。
「じいちゃん、土魔法って、石飛ばしたり、土の壁作ったり、穴掘ったり出来ないの?」
「そうじゃのう…わしは見たことないが、火魔法は手から火の玉を飛ばすそうじゃから、土魔法なら、石でもとばせそうじゃの」
どこからか湧いてくる知識は正解。
「だったら、じいちゃんは手から石飛ばせないの?」
「わしは魔法なんか、使えないからのう…」
スキルのレベルアップは、【VR表示】のレベルの上がり方からも使用の積み重ねだと思っているが、実際にじいちゃんは魔法を使わずにレベルアップしている。
そう思いながら、じいちゃんの畑仕事を手伝っている。
じいちゃんの振り下ろす鍬は勢いで、土に刺さってるというより、鍬が土に沈んでいるように見えた。
ステータス画面を確認すると、鍬を振り下ろすたびにじいちゃんのMPが減っているのが分かる。また鍬が土に食い込んだ以上の土が掘り起こされている。
じいちゃんは鍬を使いながら、無意識に土を操作しているので、それを魔法だと思っていないのだろう。
子供の体では鍬は大きすぎるので、体の半分くらい長さの木の棒を土に刺してみる。
差した棒を倒して、土を持ち上げてみる。
これを繰り返していくと、急に土が柔らかくなって、棒のほとんどが土にめり込んだ。
そのままでは掘り起こせないので、棒を半分くらいにまで引き抜いてから、棒を倒すと簡単に土が掘り起こせるようになった。
19あったMPが18に減っていた。0になると怖いので、MPが1になるまで土をいじった。
翌朝になると、MPは19に戻っていたので、毎日これを繰り返す。
じいちゃん、ばあちゃんからは土遊びと言われた棒での穴掘りを30日続けたその日。
棒を使わずに、土が盛り上がるようになった。
土魔法とは、土を操作する魔法だ、それは知識ではなく、体の感覚が教えてくれた。
次の日から、土を飛ばす練習を始めた。
手のひらに意識を集中すると、足元の土が盛り上がる。手のひらの先に、おはぎのような土の塊が漂い、それを飛べと念じる。
土の塊は狙った木に当たって、飛び散る。
威力はみたまんまの『おはぎ弾』だった。
土を硬くするか、石を操作しないといけないようだ。
これはこれで目潰しや嫌がらせに使えるかも知れないけど…
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