第21話  アレイン対王

 ロウィーナの東方の神殿行きに、義父のアレインの耳に入ったのは、ロウィーナが、妹のロジーナに打ち明けた次の日だった。


「馬鹿野郎!!そんな話があるか~!!ちょっと、文句を言ってくらぁ!!」


「何処に文句を言いに行くというのです?」


「王に決まってらぁ!!」


「王様から言われましたが、神殿からの正式な要請なのですよ。

 恥ずかしいことは、お止めくださいな」


 ロウィーナは言ったが、アレインは納得がいかない。

 アレインには、ロウィーナは、自慢の娘だったのだ。

 妻のセレアンに似た顔も、占術師だった祖母の血を色濃く引いた所も。

 実の娘のロジーナよりも可愛かった。いや、愛していた!!


「ロウィーナ!!お前は俺のものだ!!何処にもやらんぞ!!」


 アレインは、そのまま家を出て行った。


「父さん!!」


《本当に困った人だ……》


 ロウィーナは溜息をついた。


 アレインは、真っすぐに王宮に向かった。


 王門の所で、


「たのもう!!ロウィーナ・ダインの父だ。王に会わせて欲しい!!」


 こんな調子で、近衛の騎士に突っかかっていったのである。

 ロウィーナの名は、王城では既に公にされていたから、この人物がロウィーナの義父であるという事は、分かっていた。


 ♦


 王の一日は、多忙である。

 その日も、大量の書類の前に、政務に追われていた。

 ドーリア王国は、たくさんのオアシスを有している。

 それぞれ、自治を持っているので、王に要望してくることは多岐に渡っていた。


 その中でも主な事は、オアシスの水不足の件だ。

 東方の神殿に頼んで、水の魔法使いに水呼びをしてもらうのだが、そのお代が馬鹿高い。

 その代わり、こちらも先読みの占者を神殿に送り込んでいたのだが、ここ数年は腕の良い占い師も出ていなかったのだ。


「リドとカットラー、ジェダインか。もう少し、泉を深くしてみよと達しを出せ」


 王は、宰相に命令を下す。


「はい、そのように」


「王!!話がある!!」


「こら!!王様は、政務中だ!!」


 アレインは、近衛を振り切って、執務室まで乗り込んできたのだ。

 アレインが、王の娘の義父と知る近衛の騎士は、彼のことを無下にも出来なかった。


「良い、その者とはある意味、同士だ。話があるのだろう?続きの間に席を用意しておきなさい。茶を頼む」


 王は侍従に命じた。


「アレイン・ナギだったかな?今、ここにそなたが居るのは、誰のおかげか分かっているのか!?」


「それは、ロウィーナの……」


 アレインは言葉に詰まる。


「そう、酒に溺れたそなたを更生させるために、高い金を払って、治療させたおかげだな」


「俺から、ロウィーナを取り上げないでくれ!!あいつは俺の生甲斐なんだ!!」

「娘なら、もう一人いるだろう?あの子もロウィーナにソックリなはずだ」


「あれは、中身が俺ソックリの偽物だ。」


 アレインは、盛大な溜息をついた。

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