第16話  見合って!!見合って!!

 妹のロジーナの手を引いて部屋を出ていこうとした時に


「お待ちください、姉上」


 この国の、世継ぎの王子に呼び止められてしまったのだ。

 しかも、姉と。

 妹は、ビックリしている。

 無理もない。

 一連のことは、母とロウィーナだけの秘密であった。

 酒グセの悪い義父や、虚栄心の強いこの妹に知られては、絶対に王家に迷惑事を持ってくるだろうことは、容易に察しが出来た。


「なんですの?ユージィン殿下」


「見合いの席に、臨席してください。そして、カミラ姫を見極めてください」


「あなたは、王家の人間としてカットラ-の姫を娶る義務があるのですよ」


 ロウィーナは、ユージィンがこの婚礼を望んでいないことを心から分かっていた。

 だが、王家に生まれた者に政略結婚はつきものだ。拒むことは許されない。

 それは、ロウィーナ自身もそうなのかもしれない……と、ずっと思っていた。


 いずれ迎えが来れば、王の手駒として、どこぞの国に嫁がされるのだろう、と思っていた。

 だから、裏路地に身を隠していたのだ。

 父王にあの家を見つかってしまった以上、隠れている必要も無くなったわけだが。


「お願いです。僕の姉として、占い師のロウィーナ・ダインとしてでも良い!!出来れば、断る口実を見つけてください!!」


 なんという甘えた男か!!

 ロウィーナは、頭を抱えたくなった。


 ロウィーナの頭痛は、もう一つある。

 さっきから、隣でロジーナが私も?私も?とうるさく聞いてくる。


「ロジーナ、あなたの父親は、アレイン・ナギで間違えないわ。王子、言いたいことは分かりましたから、泣かないで下さいませ」


 ユージィン王子は、本当に泣いていたのだ。


 そうして、ロウィーナは、今ここにいる。

 お相手のカミラ姫も、一人ではなかった。

 胡散臭いと評判の族長の父が隣で座っていた。

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