第11話  求める水晶

「それは、そうだけど……今度にしようか!?」


「誘拐で、神殿に訴えるわよ。来たくもない砂漠に連れ出されて、着る物まで盗られてるのよ!!約束は守ってもらうわ!!」


 全く、後に引き気の無いロジーナである。


「これだから、平民は……」


「はあ!?あんたは貴族だって言うの!?」


「あ!!いや、透明度の高い、大きな水晶だっけ!?ルイス!!この家にあるよな?ナシオが収集している中で、一番大きな大きな水晶玉を持ってこい!!」


 ルイスは、またビックリした。

 女の人は、王子の彼女という訳でも無さそうだ。

 神殿に訴えると言ってるし、王子は、物で釣ってここまで来たようだし?


 父、ナシオには、骨董のコレクターであった。

 中には、占い師の使った水晶もあったはずだ。


 父は特別に大事にしていた。

 それをユージィンに言うと、


「そんな、ナシオにバレたら大目玉になるようなものじゃなくても良いさ。大きくて、透明度のあるのなら良いそうだ。」


「こちらの、お嬢様は占い師ですか?」

「らしい」


 ルイスの問いかけに、ユージィンは面倒くさそうに答えた。


「アスタナシヤのロウィーナだ」


「裏路地のロウィーナ・ダイン!?」


 今度は、ロジーナがビックリした。

 なんで、姉の名をこんなオアシスの住人が知っているのか??


「10日前に、族長の奥方様の腕輪を見つけられた占い師ですね?」


「あ、あれ……ここのオアシスの族長だったの!?」


 思わず、口に出てしまった。

 だが、ルイスにはそれだけで十分だった。


 実際には、ロジーナは表通りで族長をカモって来ただけなのだが。

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