第10話  カットラー・オアシス

 カットラー・オアシスにて__


 ロウィーナは、先回りをしてカットラー・オアシスへ向かったつもりだったが、オアシスで2人と会うことは出来なかった。


 再び、ロウィーナは、カットラー・オアシスで妹の行方を占ったのだった。


 それで、ロジーナとユージィン王子に手貸した男の身元が分かったのだった。


 王家の侍従が、このオアシスの出身者なのだ。


 ユージィンは、侍従のナシオの息子ルイスに連絡を取ってオアシスの入り口で待ち合わせをして、身繕いを2人分用意してもらって、堂々と、ナシオの家に転がり込んでいた。


「水浴びをしたいなあ~」


「無理は言わないで下さい。王子様、このオアシスの水源は安定してないんです。いつも水不足なのですよ」


 呑気なユージィン王子にルイスは、窘めるように言った。


「砂だらけなんだぜ~桶、一杯で良いよ。


「一緒にいらしたお嬢さんと使うなら」


 王子は、不服そうである。


「後ろでお嬢さんが、俺の事をさっきから睨んでいるんですよ」


「分かったから、早く水を持ってこい!!」


 ユージィン王子は、ルイスを追いたてて桶の水でやっと身を清めることが出来たのだった。

 もちろん、ロジーナの分の水は残っていない。


「私だって砂まみれなのに!」


「平民なら、身体を拭くだけで平気だろ?大体ここは、僕の知人の家だよ?」


「追い剥ぎにもあって、帰りたかったかったのに、わざわざ砂漠の旅をさせたのはあんたでしょ!!責任取りなさいよ!!」


 ロジーナは、怒れていた。

 用意してくれた服も、男物だったのだ。

 髪だって洗いたかったが、我慢である。


 でも、我慢はここまでだ。

 高価な水晶を買ってくれると言ったのだ。

 つてがある、と言っていた。

 つてとは、水を持ってきてくれた男の事に違いない。

 だから、ルイスが二人に飲み物を持ってきてくれた時に大きな声で言ってやった。


「ねえ、水晶玉は?足りないお金は借りれるのよね?」


 ユージィンは、ドキリとした。

 多分、この忠実な侍従の息子は、王城にいる父に自分の事を知らせたはずだ。

 いや、父の事だから先読みの力とやらで、自分たちのあった被害さえ、予見していたかも知れなかった。

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