第8話  追い剥ぎにあって

 後をつけられていたのだろう。

 王都で最高金貨を見せびらかせていたのである。

 カットラー・オアシスにつく前に、ユージィン王子とロジーナは、追い剥ぎにあって、無一文になってしまった。

 着ているものを上着ごと身ぐるみ剥がれ、有り金は全部持っていかれた。

 ロジーナは、今更ながらこんな軽薄野郎についてきたことを激しく後悔していた。


 これではまだ、裏路地で貧乏生活をしていた方がましである。

 姉は、食べることには不自由無いくらいは稼いでいる。

 貧乏なのは、父の入っている特別な治療院のせいだ。

 社会復帰を視野に入れて、治療するとかで馬鹿高い治療費がかかるのだ。


 そのお金は、姉が一人で稼いでいた。

 ロジーナは、たまに表通りで客引きだ。といっても、姉のロウィーナにとっては、家事の片手間に出来るような客ばかりで、なかなか上客には当たらない。


 馬も取り上げられ、気温が耐えられる朝と夕に移動して、夜は、異常に寒くなるので小さなオアシスを見つけるか、砂を掘って休んだ。

 王都に戻ることも考えたのだが、それはユージィンが断固として拒否した。


 幸い、ロジーナが星を見ることが出来たので、砂漠で迷子にはならなかったし、カットラー・オアシスが、王都から一番近いオアシスであることも幸いだった。


 無人のオアシスで、たっぷり食糧を仕入れて、カットラー・オアシスに辿り着くことが出来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る