第7話 ロウィーナの憂鬱
王は、城から王子の出奔の相談に来たのだった。
もちろんそれは、二番目の相談であったが。
王の一番の相談は、ロウィーナ自身の事だった。
五年前に、母を迎えに来た時は、既に故人だった。
そして、遺された義父と妹を養うためにロウィーナは、本当の父から、身を隠さなければならなくなった。
しかし、王都からは離れられなかった。
義父が、再起をかけて入った治療院が、王都にあって、月に一度の面会日に行かなければ、途端に不機嫌になって、またアルコールに走ってしまうからだ。
この三年の努力が無駄になる。
王がこんな裏路地まで来るなんて、まさか思いもしなかった。
「我が家のアホ王子がこの10日帰ってこないのだ」
「我が家の馬鹿妹もですわ」
王の言葉に、何気に答えてしまったが、父は何もかも分かって来たのだろう。
王家は、この国の占術師の発祥の家系の一族だった。
そこから、様々な占いの形が生まれていったが、王家に先読み師が出ることは、多くあった。
現王も。
ロウィーナもだ。
「では王子様は、妹と一緒だというのでしょうか?」
「だね。アホは、大金を持って砂漠を旅する気だよ」
「まあ」
王は、おどけて笑った。
「でも、こちらは断れない見合いを抱えててね」
「ロジーナが邪魔ですわね」
ロウィーナは、不機嫌に溜め息をつき、王は満足そうに頷いた。
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