第5話  嘘つき

「僕も、暫くは家へ帰れないんだ。だから、この路地の封鎖が終わるまで、僕と付き合ってくれない?」


 ユージィンは、この美しい少女を気に入った。


「僕は、ジィン・ロゥだよ、君は?」


 ユージィンは、お忍びで城下に出ることが多いので、仮の名前も用意していた。

 名前を聞かれて、思わず口をつぐんでしまったのはロジーナの方である。

 路地裏でのロジーナの悪い噂は、広まっていた。

 昼間から表通りに行っては、遊び歩いている。

 身体を売っているのではないか?と。


 反対に姉は、ほとんど家から出ない。

 客が来た時に、留守では申し訳ないと律義に家にいる。

 家事は、姉が完璧にやっていた。


 姉の出掛けるのは、母の墓参りの時と、父の入っている治療院にお金を払いに行く時だけだ。


 ロジーナは考えて、


「ロウィ-ナ・ダインよ」


 思わず、姉の名前を口にした。


「ダイン!?」


 ユージィンでも知ってる名前だ。


「レジーナ・ダインの親戚さん?」


 ユージィンの驚いた表情にロジーナは、笑いを隠せなかった。



「おばあちゃんよ、レジーナは」


「凄いなぁ!!伝説の水晶占い師のレジーナのお孫さんとお近づきになれるなんて!!」


「おばあちゃんて、そんなに凄いの!?」


「宮廷占術師としては、トップだと聞いてるよ」


「おばあちゃんは、小さい頃に死んで覚えてないのよね~」


「ふ~ん?そうなんだ。で、君は占いが出来るの?」


 急に話を振られて、ロジーナは焦った。


「もちろんよ。水晶があれば出来るわ」


 嘘は言っていない……はずである。


「でも、今家にあるのは安物ばかりで、良く視えないの」


「どういうのなら、視えるワケ?」


 ユージィンも興味で、突っ込みを入れた。


「つるつるで、曇りが無くて、大きめの特大サイズの水晶なら視えると思うわ!」


「それだったら、僕にも何か視えそうだね~」


 ロジーナの力説に、ユージィンは納得してしまった。


「はぁ!?」


「実は、僕も占い師の家系なんだ。でも、僕は他国から嫁いできた母上に似たらしくて才能が無いんだよ」


「そうなの!?で、跡取りなのに困ってるとか!?」


「まぁ、そうだね」


 ユージィンは苦笑した。



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