第3話  突然ですが、

 突然ですが、ロジーナがいなくなってしまった。

 奔放な性格のロジーナの、外泊など珍しくも無いのだが、さすがに10日を超えるというのはあり得ない。


 ロウィーナは、カードを使って探りを入れてみた。

 外泊する前に、誰かと会っていたようだ。


《誰だろう……》


 ロウィーナは、カードが、50枚しかないことに苛立ちを感じた。

 カードで占えることは、50枚のカードを使ってのことだけ。

 限度があるのだ。

 それ以上の事を知ろうとすれば、違う事をしなくてはならなかった。


 どうしようかと迷っていたら、扉のベルがなり、来客を告げた。


「そなたが、ロウィーナ・ダインか?」


 ロウィーナは、驚いた。

 一番会いたくない人物が、訪ねて来たからだ。


「私は、ロジーナです」


 思わず、嘘が口に出た。


「ああ、名前も顔もそっくりな妹御がいるそうだね」


 金髪の紳士は、ニコニコとロウィーナを見た。ロウィーナの嘘など初めから分かっているとばかりに。


「取り込み中なので、またにしてください」


 そう言って、紳士を追い返そうとしたロウィーナだったが、紳士も後には引かない態度である。


「占いをしていたようだね?何か、分かったかね?」


「あなたには、関係の無いことです」


「それは、カードに出ていたかね?」


 紳士は、優しい声で聞いてきた。


「いいえ」


「だろうね。こちらも困った事が起きたのだ」


「どうしたのですか?」


 しまった、と思った。聞くつもりの無いことを聞いてしまったのだ。

 関わりを持ってはいけない人なのに。


 紳士は、自分の息子と妹のロジーナは、一緒にいるという。


「何故、そんなことがお分かりになるのですか?」

「当然だな。この力は、先祖ゆかりのものだし、余は、この国の王だよ」


 その言葉にロウィーナは、黙って頭を下げ、膝を折ってお辞儀をした。




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