オレたちー、キンニクー!!

うり北 うりこ

オレたちー、キンニクー! マッスルマッスルー!!


「なぁ、大腿四頭筋だいたいしとうきん。おまえら、最近良い感じだな!」


「おっ! やっぱ、分かるか?」

「流石、上腕二頭筋じょうわんにとうきん。他の筋肉やつとは、目の付け所が違うな」

「俺らも早くムキムキになりたいぜ」

「かなり早い時期から上腕二頭筋は腕立てしてもらってたもんなぁ」

「「「「早くマッスルになりたーい!!」」」」


 大腿四頭筋と呼ばれる太ももの4つの筋肉たちは叫んだ。そして、大腿四頭筋よりも先に筋肉がつき始めていた、腕の筋肉である上腕二頭筋たちは先輩顔で頷いている。

 そもそもマッスルは日本語で筋肉という意味だ。なので、既に筋肉マッスルになりたいという願望は生まれながらに達成している。だが、誰もそのことには気が付かない。


「マッスルはいいぞ。可愛い女の子たちに、すごーい! 触ってもいいですか? なんて言ってもらえるからな」

「「「「おぉー!! 流石、上腕二頭筋の兄貴! 早く俺らもそうなりたいッス」」」」


 実際、上腕二頭筋たちはそんな経験をしたことはない。だが彼らの主である、この体の持ち主がそう信じて疑わないため、その男の筋肉たちもまたマッスル=モテる、と勘違いしていた。

 筋肉たちは、女の子たちにキャッキャと触られることを夢見た。「こんなに素敵な大腿四頭筋はじめて!」と言われる日を。


 だが「マッスルー! マッスルー!」と毎日欠かさずトレーニングを続けていたある日、男は急にトレーニングを止めた。


「どうなってるんだ? このままでは痩せてしまう!」

「なぜ、主はトレーニングをサボってるんだ?」

「プロテインも飲んでないぞ!」

「……そういえば、マッスル好きの女の子にフラれてたな」

「「「「うわぁぁぁぁぁあ!! 主よ早まるな! キャッキャウフフ計画がー!!」」」」


 大腿四頭筋たちは代わる代わるに主へとトレーニングをするように訴える。だが、彼らは一日、一日と元の姿へと戻っていったのであった。


「「「「あぁ、マッスルになりたーい」」」」


 

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