心臓を証明できたら……
雨宮 苺香
- Episode -
君の背中をひそかになぞり見る。
日常風景の中でたったそれだけなのに、私の心臓はパーンっと弾けたように高鳴り始めた。
それが私に〝好き〟の感情を教えてくるようで痛くて脆い『心』の存在を確かに知るんだ。
――心臓は心とリンクしている。
でも心の存在は明確じゃないから不思議だ。
不可解なくせに胸の真ん中で恋を教えてきて、私をもてあそぶ。
雲のように移り変わる心模様は晴れたと思ったら雨が降って、ずぶぬれになったと思ったら虹がかかって……。
なんで恋なんてするんだろう。
死ぬまでに人は何回ドキドキするんだろう。
恋なんてしなければいいのに。
それか、からくり人形だったらよかったのに。
ゼンマイの巻き戻る音のように心臓も一定のリズムだけだったら――。
ねぇ、ドキドキなんてしたくないよ……。
なんで好きになっちゃったんだろう。
言えない
だれか、私の心の
知ってたのにな。誰も答えを知らないこと。
知らないからこそ表現者たちは人の生死や心について表現をしたがることも、共感を求めて作品を残すってこともわかってたのにな……。
――ふと私の中に疑問が浮かんで
なんで心臓はあまり表現の先に置かれないんだろう。
心という代名詞があるから?
明確に証明されているから?
小学生でも知ってるもんね、
心臓が人間にとってポンプのような役割を持つ、死ぬまで動き続ける筋肉だってこと。
でも、医学的に生物学的に証明されても、私には理解できないことばかりだよ。
どうして体の真ん中に存在するんだろう。
どうしてなければならないものなのだろう。
どうしてこんなにも私を、私の存在を、生きてるって自覚させるんだろう。
みんなそう疑問は持たないのかな。
〝心臓=こころ〟だったら――って考えないのかな。
私は考えちゃうよ。
不可解な生死と心。それと私自信を繋ぐ心臓のこと。
そして心臓が高鳴って存在を主張する恋のこと。
もしかしたら人の恋は、私の恋は、心臓由来なのかもしれない。
そんな仮想の物語を書き記そうと私は表現者として筆を取った。
- END -
心臓を証明できたら…… 雨宮 苺香 @ichika__ama
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