第13話 遺族年金って…


 お金は大切だ。

 お金があっても幸せにはなれないけれど、お金があればそれなりに不幸は回避できる。

 よって私は常々、お金を稼げる人のことを尊敬していた。夫しかり、共働きのママ友しかり。

 だって―――――自分があまりにポンコツだったから。

 夫はかなり現実主義? な人で「法律を守って、ちゃんと納税して、この国のルールにのっとって夫婦になって、扶養されているんだから何の問題もない」と言っていて、私が一時的に専業主婦になった時も態度は変わらなかった。

 むしろ「小さな子供がいて、介護もあって、働くのは無理。働けるようになっても扶養の範囲内でかまわない」とまで言ってくれていた。

 正直、子供が少し手をかけるべき子で(発達障害の診断をされていた)、お姑さんの通院等もあったから、夫のそれは本当に有り難かった。

 が、やはり人生とは、何かを選んだら、別の可能性は捨てているわけで。

 夫が急逝してしまったら、稼ぐ能力のない私と子供はたちまち困窮に追いやられてしまうのが現実。当然の帰結というわけだ。

 だがこの国のシステムというのは複雑で、いわゆる年金という、ほとんど強制的に支払わされるという税金みたいなシステムが、ここにきて私達に恩恵をもたらした。つまるところ、遺族年金がもらえたのだ。



 私も夫も、何の疑問も持たず、ただただシステムに従って―この国で生きる、この国の民として従順に―払い続けてきたそれらを、私はあまりに知らなさすぎた。たぶん、夫が急逝しなければ知らないままだった。

 遺族年金にはいくつかの条件があることを知った。

 けれど私が最初に思ったのは「夫は二十歳からずぅっと払ってきたのに、一円も受け取れなかったんだなぁ」ってことだった。

 もらっておいて、不謹慎なんだけれど。なんだかなぁ、と。

 基礎年金も厚生年金も、もらうには条件があった。問答無用みたいに給料からさっ引いていくくせに、申請しなければもらえない。男性が死んだ時は手厚いのに、女性が死んだ時の父子家庭にはそうでもない、とか。なんだか色々イロと、気になってしまった。

 ただこの事を調べている最中で、子育て中に夫が亡くなる、いわゆる未亡人のシングルマザーがかなりレアな存在であることも知った。シングルマザーの多くは離別であり、ひとり親への支援はそれをベースにしているようだった。

 死別の場合、結婚しているとみなされる、配偶者あり、とすることもあった。そして死後離婚というものもあるということ。

 この国の戸籍制度もなかなか複雑で、手続き等、本当に本当に理解するのが難しかった。

 それでも生きていく為、子供の為にはやるしかなく、そして実際は役場や年金事務所の職員が助けてくれた。

 ただこの一連で、私に金言をくれたのは、古い同性の友人だった。彼女は「年金を貰っていることは公言しない方がいいよ」と言った。

 年金に限らずだが、この知恵は人生において本当に有用だった。それは後々に書いていきたいと思う。

 こうして私は稼ぎも少なく子供も抱えている状況下でも、それなりに生活していける基盤を得た。

 ああ、重要なことを書き忘れていた。この遺族年金というもの、なんと非課税だった。知らなかった!

 私の収入、年収は恐ろしく低かったが、この遺族年金はそれとは別ということ。つまり私は非課税世帯であったけれど、年金はもらっているという…自分でもこれってズルいんじゃ?? という状態だった。

 しかしこれ、年金を貰っている人―例えば高齢者等―にはよくある状態だそうだ。それにも、うーん? となってしまったものの。

 実際は有り難いし。私自身、自分の稼げなさも解っているし。何より子供が成人するまでだし!

 開き直って、年金貰ってこそこそと非課税世帯で支援してもらうことにしたのでした。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る