第21話 一人目の泥棒

「それ、もらっていいかな?」

仮面男はバトンを指差す。


「っち」


(こいつは疲れていて使い物にならない、幸いなのはバトンを持っている俺の異能が広範囲なこと)


「渡すかバーカ!」

弁平は二つの杭で攻撃を仕掛ける。


「おっと」

だが仮面男は容易くそれを避ける。


(早いな……けど!)

弁平は早さと数を倍にして再び攻撃を仕掛ける。


「当たらないよ」

仮面男はそのすべてを避けて一気に距離を詰める。


「もーらい」


そして仮面男の手がバトン触れようとした時、地面から巨大な杭が勢いよく出てくる。


「ゴフッ」

平面が仮面男の腹に直撃し、仮面男は距離を取る。

「いーい一撃だったね」


「よく言うぜ、わざと受けたくせによ」

「ありゃ、バレてた?」


弁平の言う通り、仮面男は弁平の異能がどれほどの物かを確かめるためにわざと攻撃を受けたのだ。


「じゃあこっちからいくよ……」

弁平は防御体制を取る。


「雷鳴・移」

弁平が瞬きをすると、既に仮面男そこにいなかった。


「どいつもこいつも……」

弁平は急いで360度に杭を向けて警戒する。


「速すぎんだよ!」


「ズドーン!」

仮面男は弁平の頭上に現れ、踵を勢いよく落とす。


「っが!?」突然の衝撃に弁平は驚きよろめいてしまう。


「隙だらけだよ〜?」

後ろに着地した仮面男は弁平の後頭部に向かって拳を繰り出す。


雨杭あまくい

すると小さな杭が仮面男の上から大量に降り注ぐ。


「痛てっ」

杭によるダメージはあまりなく、せいぜい強めにチクッとするだけである。


巨杭きょっくい


今度は巨大な杭が仮面男の前に現れ、そのまま男の仮面に向かって一直線に動く。


「だから当たらないって」

仮面男はそれをも躱し、再びバトンを奪おうと距離を詰める。


「あがっ!?」

仮面男の後頭部に回し蹴りが直撃する。


「なんだあ!?」

仮面男が振り返ると、そこには幸がいた。


「いつの間に……ってあっぶな!」

弁平は隙をついて攻撃を仕掛けるが避けられてしまう。


「君どっかで特別な訓練でも受けてたの?気配の消し方が討伐者のそれだ」

「なんだっていいだ、ろ!」


幸は一気に距離を詰め、顎に向かって拳を繰り出す。

「当たらないよ」


仮面男はそれすらも避ける。


「回避ばっかしてても、バトンは取れないぜ?」

幸が仮面男に語りかける。


「ちゃんと策はあるから、ご心配なく!」

仮面男は斜めに拳を突き出した。


「おっと」

「へえ、これを避けるか、なら!」


仮面男は拳を下ろし、左足に電気を纏わせる。


「食らえ!」

仮面男は高速の回し蹴りを使うが、幸は容易く避ける。


「食らったら感電しそうだな」

「だったら一旦食らってみたら?」


なんとも言えない緊張感が、その場を支配していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る