第14話 幸&栄vs木沢

「今ので逃げずにその場にとどまったのは?」

「8人だな」


「何かを考えてる様子のやつは?」

「5人だな」


「お前の読唇術で分かる今のが敵の仕業だって言ってるやつは?」


「2人だな」

「よし、木沢もくざわ!仕事だ、起きろ!」


弁平が叫ぶと近くで寝転がっていたもう一人の友人、木沢が起き上がる。


「ふぁあぁ、何だよせっかく良い夢見てたのに……」


「試験中に寝るな馬鹿が、それより今からちょっと動いてもらう」


「なにすればいいわけ?」

「簡単だ、今から俺の杭についていって何人かの逃走者をリタイアさせるだけだ」


「オッケー」

そうして木沢は弁平の作り出した杭を追って森の中に消えていった。


♦︎♢♦︎♢♦︎


「……って感じでいいか?」

「ばっちりだよ」


幸と栄は作戦会議をしていた。突然杭が落ちて来た後、二人はこれを敵の仕業と仮定してその敵をどう退場させるか考えていた。


そしてある程度作戦が決まりいざ出陣といった時、木沢が二人の前に姿を表す。


「こんにちは〜」

「誰だてめえ?」


幸は警戒しながら問いかける。


「同じ受験者の木沢だ、よ!」

木沢は一気距離を詰め拳を前に素早く突き出す。


「危なっ」

幸はそれをギリギリで回避する。


「やるねえ」

砂縛さばく


栄がそう唱えると木沢の足元から大量の砂が出現し木沢の足を地面に固定する。


「んだこれ?」

「余所見はいけねー、ぞ!」

木沢が下を見た瞬間、幸の拳が木沢の顔にクリーンヒットする。


「っつう」木沢は一旦距離を空ける。


本当は木刀が望ましかったが今は手の届かぬ位置にある為幸は拳での戦闘を選んだ。


「いいパンチだ、ボクシング部の俺からしてもな」

「そりゃどうも」


互いに様子を見る幸と木沢だったが、栄が攻撃を仕掛けたことで再び両者が動いた。


砂刃さじん

すると木沢の目の前に三日月のような形をした砂が出現し、木沢に迫る。


「やべっ」

咄嗟のことで木沢は反応できずもろに攻撃を食らってしまう。


「とった!」

幸は一気に距離を詰め、再び顔に拳繰り出そうとしていた。


「同じ轍は二度踏まねえよ!」

だが木沢の蹴りによってそれは阻止される。


「じゃあ別の轍は踏むんだな!」仰向けに蹴りを避けた幸はそのまま木沢の股関に蹴りを入れる。


「ひゃっ!?」

思い切り蹴られたため木沢は痛みに悶える。「もういっちょ!」再び拳を繰り出す幸、だが入った拳はゴンという音と共に痛みはじめた。


「いっつ!?」


そして先ほどまで屈んでいた木沢が立ち上がり、言い放った。


「てめえの強さはよおく分かった、だがお前の強さが物理的なものである限り俺には勝てない」


「んだと?!」

「断言しよう、絶対だ」

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