第12話 花野原栄

ばんっ!ばんっ!ばんっ!っと眼鏡男が銃を三回撃つ。


「んなもんきかねえよ!」

そう言いながら大男は棍棒で異力の弾丸を弾き返す。


「くそったれが!」

だが眼鏡男は構わずに撃ち続ける。


「どこ狙ってんだよ!馬鹿が!」

大男が突進しようとしたその時、男の後ろの木が倒れる。眼鏡男は木に向かって撃つことで男の方に倒すことに成功した。


「なっ」


大男は躱そうとするができずそのまま木の下敷きになってしまう。その隙に眼鏡男は幸を担いでその場から離脱する。


♦︎♢♦︎♢♦︎


「ここは……」


幸はゆっくりと目を開ける。


「大丈夫ですか?」すると幸がぶつかった眼鏡男が心配して聞いてくる。

「さっきはすみません僕のせいで……」


「えーと……」


「あ、自己紹介がまだでしたね。ぼくは花野原はなのばらえいです、同じ逃走者としてよろしくお願いします」


「俺は幸、どうぞよろしく……それで自分のせいって」

「えーと……笑わないって約束できます?」


「?もちろん」


「その……ゲートを通った次の瞬間、視界にはさっきの大男がいて……首につけていた輪の色を見てすぐに襲いかかってきて、持っていた銃で撃退しようと思ったんですがうまく行かず……今に至ります」


「なるほど……なあ」

「はい?」

「協力しないか?」


「え?」「同じチームだし二人で行動した方がピンチも切り抜けられるかもだろ?」


「……はい!」


ということで、幸は栄と行動を共にすることにした。それから10分程経った頃、


「まずいですね」

栄が深刻そうに呟いた。


「どうしたんだ?」幸の問いに栄は手に持っていた円形の機械を見せる。


「なんだそれ?」

「え?はじまった時に取ってないんですか?」

「いや?木刀とったらすぐにゲート通ったし」


「とりあえずこれをみてください」「?」


そこには画面の真ん中に線が引かれており、右に逃走者の、左には鬼の人数が書いてあった。


「これのなにが……って逃走者20人!?」

幸はその数字に心底驚いていた。


「しかも鬼側は30人、このままじゃ負けちゃいます、なんとか手を打たないと」「……なあ」

「はい?」


「どうやれば鬼側ってリタイアになると思う?」


「分かりませんよ、だってこれは鬼ごっこだからそもそもの通過条件である人数が多いチームってのが僕ら逃走者側には無理なんですよ、よくて引き分けなんですもん」


「あ〜なるほど……なあ」「はい?」「退場ゲートってあるよな」「?ええ途中三つぐらい見かけましたね」「あれを使ってちょっと試したいことがあるんだけど……」




♦︎♢♦︎♢♦︎




「ちくしょう、あいつらどこいきやがった?木の下敷きになってだいぶ時間が無駄になっちまった。はやく逃走者を見つけねーと……ん?」


大男の視線の先には気持ち良さそうに寝ている幸の姿があった。それを見た大男はニタァっと不気味な笑みを浮かべながら幸に向かって走り出す。


「馬鹿野郎発ー見!」

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