第10話 眠る狂気

「もっとこい!」

幸は身を屈め、低くジャンプする。

「ぐるああ!」巨木は左手で幸を掴もうとするがあまりの早さにまったく掴めない。


「もらったぁ!」

そして肩に到着した幸は木刀を構える。

「芝岸さん!あの子もしかしたら巨木を!」


「無理ですよ」

「え」

「例え異力で木刀は強化しようと巨木の首を切るのは物理的に不可能です、なにせ 巨木は約200の分厚い層から成る外皮を持っていますからね」


「それに核は剥き出しの状態で胸にあります、首を切るなんてせいぜい2、3分行動不能になるだけです。そんな無駄な行動をとるのはやはり失格ですね」

「それに。。。。。。」


「うわっ!」

巨木は腕を揺らすことで幸を振り落とした。

「巨木には知性があります」

「っと!」


幸は容易く着地する

(伸びる腕、あれが厄介だ。あれのせいで逃げても簡単に捕まるから戦うしかねえ)幸は冷静に敵の分析をする。


「。。。。。。なんてさっきまでの俺なら思っただろうな」

「?」

試験官たちは首を傾げる。

「てめえなんぞに木刀はもったいねえ、そこら辺の木の枝で十分だ!」


「ぐ、ぐうるうおおお!」

巨木は両腕で猛攻撃を仕掛ける。

「。。。。。。考えましたね」

「どういうことですか?」


「おそらくですが彼は今までの戦闘で巨木は知性を持っているが限りなく低いと判断し一か八か挑発したのでしょう」


「でも巨木には目や耳はありませんよね?どうやって挑発を聞いたのでしょうか?」


「異成の中には異音という特殊な超音波を発するものがいます。巨木は周囲の音を異音に変換することで音を聞いているのです、そして視覚は単純に異力の気配で代用しています」


「というか彼を助けなくても。。。。。。」

「必要だったらとっくにやっています、上をみてください」


「上?」

そして一人の試験官補助が上を見るとそこには宙を舞う幸の姿があった。「え?嘘一体どうやって」


「異力を使ったようには見えません、おそらく単にジャンプしたんでしょう」

「だとしたらとんでもない跳躍力ですよ彼!」

「まあね」


(赤髪の彼、おそらく本気で巨木を倒す気でいますね)


「なんだ?」

「おいおい」

「なにあれ」


試験は終盤、徐々に参加者の注目が幸と巨木の戦いに集まる。

「ぐるあ!」

巨木は両腕を頭上に伸ばし幸を捕らえようと試みる。


「わざわざ道作ってくれてありがとよ!」幸は両腕の間をジグザグに駆け抜け、首に向かって跳んで異能を発動する。


熱帯ネツオビ


すると木刀の持ち手以外の箇所が高温になりそれに触れた巨木の首が溶け頭が地面に落ち、体が動かなくなる。

「意外と弱かったな」


幸は少し落胆した後、体から抜け落ちた核を拾う。


試験官である芝岸は目を見開いた、

「驚きましたね。。。。。。まさか巨木を倒すとは」

「でももう時間がありませんよ、彼まだ一体も倒していないのに」


「。。。。。。す」

「え?」

「合格です、彼」


「本当ですか!?」

「ええ、本格的な教育前から巨木を倒すほどの実力、逃がさない手はありません」





第一試験、からくり人形討伐試験


試験時間、30分

通過者、55名

脱落者、3名






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