第4話 愛刀との再会

あれから三日がたったが今のところ、なにもない。赤桜も現れなくなっている。

(平和だな〜)

首切丸だったころは安堵だなんて微塵もなかったからな。


そんなある日、家で一人留守番をしていると庭に黒の着物姿の女が現れた。

「誰だ!」

警戒しながら問いかけると女はなぜかきょとんとしていた。


「ん?ああこの姿じゃわからんか。わしじゃ、赤桜じゃよ主」

次の瞬間幸に衝撃が走った。

(え?いや赤桜ってたしか刀であって人ではなくてかなんで主呼び?俺まだ五歳だぞ?てかどうやって入った?物音一つしなかったぞ)


「俺の前の呼び名は?」

半信半疑どころか99%疑いながら聞く。

「首切丸」

答えを聞いた瞬間再び幸に衝撃走る。

(はい確定しましたこいつ間違いなく俺の愛刀赤桜ですなんで人の姿になってんのか知らんが間違いなく赤桜です)


「おまえ何で人になってんだよ!てかどうやって俺が首切丸だってわかったんだよ!もう聞きたいこと多すぎてめっちゃ混乱してるわ!」


「まあまあ、一つ一つちゃんと答えるから焦るでない」

それから赤桜から様々なことを聞いた。

まず、オレが死んでから赤桜は辻斬りにはもったいない名刀ということで様々な持ち主の手に渡ったが最終的には本能寺の変で一度死んだ(消えた)という。


「まてまて、おまえずっと意識があったのか?」

「そこも含めて話すからちゃんと聞け」

そして一年前、二つの異能をもって蘇ったらしい。異能は『変身』と『刃姫』。自分が想像した姿に変身する異能と刃を作りだし操る異能らしい。


更に本来ないはずの意識が芽生え、今までの自分に関することが記憶として頭に流れてきたという。そして俺はここで疑問を投げかける。


「数日前に赤桜って彫られた刀を見かけたんだがあれってお前か?」

「ああ、そうじゃ。主に手にとって欲しかったのにとってくれなかったからのう」


「そりゃ当たり前だろ、今回は殺しはしないって誓ったんだから」

「だが自衛のためにもわしを持っておいたほうがよいと思うがのう」


「は?自衛?」

「知らんのか?異成ことなりと呼ばれる怪物達がこの世には存在している。やつらは異能を使い人間に害を及ぼす、まあ人間も討伐者という職を作ったりしてで奴らを駆除しようとはしてるらしいけどな」


「だったら異能で十分だろ」

「非戦闘向きの異能になる可能性もあるし何より断言できる」

「?」

「主は必ず、わしを手に取るとな」


「なにをいってんだか……」

幸は小さくため息をする。この時、幸は思いもしなかった。赤桜の言葉がほんとうになるだなんて。


◆◇◆◇◆◇


とある薄暗い場所で、肩から一本ずつ、背中から四本、計六本の腕を持つ男が黒髪の執事のような見た目の若い男に怒鳴っていた。


「おいこら二切ぃ!!俺はいつになったら暴れられるんだ!!ああ?!」

「その件についてですが、天神あまがみ様に聞いたところ、仕事が終わった後ならいいと」


「そうか、んじゃ今すぐ行けるってことか」

「失礼ですがお仕事は!?」

「んなもんとっくに終わらせたよ!んじゃあな!」

六本腕の男はピュンとその場からいなくなった。


(仕事はできるし実力もある、だが長期間外で自由にさせないとすぐごねる……)

「まったく……困ったお方です」二切は小さくため息をつきながらその場から去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る