第3話 赤桜

そして帰宅後、幸は帰り道に見かけた刀について考えていた。

(赤桜。。。。。。偶然か?)

赤桜とはかつて幸が首切り丸時代に愛用した刀の名でもあった。


赤桜の特徴といえば圧倒的な強度からくる抜群の切れ味。使い始めた頃はよく誤って家の床や壁を切ったものだ。


だがもしのあの赤桜が幸の愛用していた赤桜だとすると、一つおかしい点がある。それは古くなっていないのだ。道路にポツンと置いてあったこともおかしいが。


幸がいた時代からかなりの年月が流れたため本来錆びたりしててもなんらおかしくはないのだがあの時見た赤桜は錆びどころか変形もしておらずまるで新品のようだった。


そしてふと小さい庭の方を見るとそこには刀がポツンと置かれていた。瞬間幸は食べていたクッキーを喉に詰まらせ急いで水で流し込む。


もしやと思い庭に近づくと予想通り刀には赤桜と彫られていた。

「どういうことか。。。。。。さっぱり分からん!」


赤桜をどうするかについて迷っているとピンポーンという音が聞こえてくる。恐らく仕事に行っていた父が帰ってきたのだろう、まあ母さんが開けるか。


母さんは基本的に家で仕事をするので俺の面倒は大体母さんが見る。そして再び刀に目を戻すとついさっきまであったはずの刀がなくなっていた。


(は。。。。。。?)突然現れ突然消える、そんな刀に困惑する幸であった。


一方その日の夜、とある公園では


「またお主か」

「なあいい加減大人しく捕まってくれよ、悪いようにはしないからさあ」

「嫌に決まっておる、ワシが素直に言うことを聞くのはあるじだけじゃ」


「仕方がない、それじゃ今日も力づくでやるけど。。。。。。いいね?」

「やれるもんならやってみろウジ虫が」

「ウジ虫って。。。。。。一応こっちが格上なんだけど」


「格上ならとっとワシを捕まえろ、これでもう三回目じゃぞ」

「それだけあんたに価値があるってことさ」

「御託はよい、とりあえず死ね」

次の瞬間、黒い着物を身にまとった女の手のひらから刃が放たれる、持ち手がない状態で。


だが男はそれを容易く避け女に向かって突進する。

「鋼鉄化」男の体が銀色になり鉄のように硬くなる。「刀壁とうへき」女の前に無数の長い刃が地面から横並びに生え、壁のようになり男の突進を阻止する。


「跳躍!」すると男が刀の壁を超えるぐらい高いジャンプを繰り出す。「隙だらけじゃ」すると再び女が刃を男に向けて放つ。だがガキン!という音ともに刃弾き返される。


「残念!鋼鉄化は継続中!」だが次の瞬間には女はいなくなっていた。「今回も逃したか……ほんと逃げ足だけは早いんだから」男はため息をつきながら夜の闇へと消えていったのだった……










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