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№61

夜を灯す/八蜜 光

……魔が差す、とか逢魔が刻、とかいう言葉が日本語にはある。日常ではそれとわからないトンデモないものが、確かに存在して、それを魔とよぶのなら、いつ出くわすか分からない。それは事実だし、そういう根源的な恐怖は人の心に根付いたままだし、人間はゆめゆめ油断してはいけない。妖怪や悪魔でなく、ちょっとした気のゆるみとか油断でも酷い災難になるもので、そういうのも含めて、魔だ。いわばそんな、一見してわからない魔にすれ違った男の、背筋を冷たいものが這ってくるようでいて、どこかもの悲しい掌編。ほんと世の中何があるかわかりません。



◇◇

 ちょっと感想から、ハナシが飛ぶ。

 でも、聞いてほしい真剣な話だ。読んでほしい。

 俺は直接は関係ない部署だけど、仕事で、事故の報告書を目にする。それはもう、想像もしたくないほど酷い障害を一生背負う人もいるし、通院で済む人まで様々。で、僕が見てかなり共通しているのは

「なぜあの人が、この日時とこの場所で、こんな行動してるんだろ……??」

 みたいな前兆が、結構ある。普段しないコト、、直に理由を聞いてみてもような変なコト。

 事故と直接関係ない業務のところで、何か変化がある。これ一種、魔が差しているシルシ、に思う。

 敢えて文学的すぎる表現で言うが、魔は常に僕達の真後ろにいる。隙を狙っていると言っても言い過ぎではない、用心しすぎで損は無い。

 「今日の自分、何か普段と違うような気が……?」と感じたら動きをいったん止めて、手元や予定や周囲を、よくよく観察してほしい。ぼくは一度、私生活の重傷で死にかけ入院した。で、今になって思い出すと別人に思えるほど、その日の自分はおかしな思い付きで動き普段しないコトをしている。

 急に説教始めて、なんなんだコイツ? と思われちゃうかな。 

 でも、どこで何があって障害負ったり、文章書けなくなったりするか、わからない。ネットだろうと多少なりとも縁があった人に、俺はそんなことが起こってほしくない。常々おそろしさを感じてる事だから書いた。かなり前だけど、死んだ人だっている。ちょっと違和感に気付けるだけで、死ななくて済む。損がない、ボロ儲けな話だろう?

◇◇



№62

緊急(?)対策会議/わたくし

……いやあ、笑う。こんなん面白いって。詳しい人は余計楽しめると思う。さほど造詣の深くない僕でもそうだったから。そういうのに限って、ちょっとでもあらすじを書くと一気に興が削がれる作りになってるんだよね。あー、もっといろいろ言いたい。とにかくすぐ読みにいくべきです。最初の醍醐味は序盤すぐに来るから、万が一合わなかったとしても失う時間はほぼない。そして面白く完読しちゃう読者さまばかりだと思うので、安心しておすすめできる。



№63

180日後に消える星/海咲有紀

……うわーん。非常に続きが気になるところで次回ご期待になっている! それはともかく、主人公が何かを決心して事を成すまでの心情がしっかり描写されてるって、すごくいいですよね。真ん中にびしっと一本それが通っているので、物語にすごく説得力があります。そういうところをシッカリ出来ているというのが、すごく羨ましいし尊敬できる。数か所句読点抜けっぽいのがあるの勿体ない。3分で直せる数なのでパっと済ませちゃえばいいと思います。

そんな枝葉より、太い幹が一本通せているのがすごいし才能でしょう。僕自身が細かいことに拘ってるうちに疲れたりするのですごく見習いたい。爪の垢ください。



№64

一般人視点のゾンビパンデミック/白夏緑自

……これは深いなぁ。深読みしてるだけだとしても。ぼくが今、人が人を襲う病気の話をだらだら書いていて、そのせいかもしれない。定型化されたゾンビイメージへのアンチテーゼ? これは、感想としては穿ちすぎか。ちょっと重たい触れ方になってしまいましたが、二千に満たない字数でここまでの表現を折りたたんであって、まずスゴイですよ。明るいっちゃ明るい話ですし。他の短編も拝見しましたが、作者さんのページいって、とりあえず読み流してみるべきだと思います。かなりの宝石箱です。正直やられた、魅せられた。イェイ。



№65

12の願い/わたあめ

……おっ異世界転生じゃーん、元気? と手を付けたまでは良いのだが。まだ一話目までしかない。願いの内容そのものについて記述はない。だが、伏線というか、これは順に明かされるのだろう。だって願いは、決まり事と同意があった上で、定められているようだから。つまりこう、禁則事項がついている訳ですよ。とまでは読み取れたがやっぱり、この状態で感想まではですね。難しい。



№66

企業戦士マッスル富沢/あぶく

……そりゃもう、タイトルで気になりますって。参加順に作品を読みつつも、たまにこのタイトルがモニターの作品一覧を、スーって通過するわけですよ? その度に、フッ、て笑っちゃうんですって。いやあ、やっと読めました。感想としては、第2話が読みたい。とても読みたい、と思いました。キャラがすごいので、リクエストは多いかと思います。アカウント自体が非常に新しいのですね。ショート4つだったので全作品読みました。『大丈夫じゃけん』が一番好き。泣いちゃう。



№67

昭和日本男児異世界に推参す/グレコローマン・タカ

……いやもうタイトルとPNで気になりますって。アーメンて言っちゃっていいのかな? 異世界の信仰って。とか思いはじめた僕だったが。読み進むにつれ「そんなものは細かい!」と感じてしまっていた。この熱にあてられてしまった。細かいことはいい! 理屈を突き抜ける魅力がある。そしてこの主人公、ケンカと推進力でなんでもかんでも押し通す訳ではない。振り上げかけたコブシでも、相手に筋なり道理があれば、素直に収めるし作戦だったりする。いや作戦なのか正直なのかよく分からなくもある所がスゴイ魅力なのだが、結果としては何が人間として大事なのかを周囲に考えさせていく。これはもうヒーロー。昭和50年代の日本男児がこんな立派だったかなんて知らない。純粋に彼の行き先を追いたい。



№68

GHOST BLOOD/佐伯 寂

……アメリカの警察機構に対悪魔犯罪の担当局がある。ネットワーク化されており、各管轄に対悪魔捜査官の部署があり、捜査だけではなく状況によっては実力で悪魔を排除する。そんな彼らの姿が描かれる。ざっくりいうとそんな感じ。映像で想像すると、洋画。だけど対サイバー犯罪警察ドラマみたいな、滅茶苦茶IT化された舞台セットではない。(あくまで僕に浮かぶ情景ですよ)

 むしろ、ちょっと昔の市警のオフィスのようなアナログさもあるセット。デカ達がタバコやコーヒーやテイクアウトメシを口にしつつ愚痴りつつ、関係各所との書類の舞う中、軽口や皮肉をたたき合いながらボードや地図に手書きメモ貼りながら会議する。そして「オーケー、行こうか紳士諸君ジェントルメン」「あー今日も深夜確定またヨメが爆発するぜ全く」「ボクなんて仮眠室4泊目ですけどね」なーんて言いながら男達がジャケットを羽織りながら発進。そんなイメージ。廊下の古い自販機にコイン入れたのに商品出てこなくて、蹴ったりしてそう。ああいう感じ良いよね!

 あ、でも上記はすべて主催者が読んだイメージだからね? 実際こんなセリフは出てこないからね?

つまり、すごい好みで面白いんだけど。これタダで読んでていいの? こういう気持ちがギフトとかになるのか、と送る人の気持ちが察せられた。

 なので、逆に読まれない理由が全く分からない。簡単にプロフィールを拝見する限りではマルチに創作やってらっしゃる様子。となると、投稿以外にあまり時間をかけられないので、単純に企画以外に露出が少ない? 近況ノートもないようだ。あと外国人名のカナ書き登場人物が多いので、とっつきにくかったりする可能性もあるか? 例が卑近で恐縮だが、僕はカタカナと音が記憶に残りやすく覚えやすかったから世界史を選んだ。日本史を取った友人は「その感覚が分からねえ、有意文字の漢字こそ中身を含めて頭に入るに決まってる」と言った。そういう認識論の以前なのか以後なのか。以前かな。ストリートの目につく場所に置いてあれば、この品質ならかなりの人が読むに決まってるから。



№69

聖マリア帝空学園クロニクル/翳 暗鳴(かげ・あんな)

……おー。SFで少女で学園というところは今風ですけども、インベーダーがいる。最近の人類の敵はいろいろいますから結構スタンダードに感じます。でも、このインベーダー1とは一応対話のチャンネルがあって、他にも地球外勢力がいるようです。つまり差し当たっての局面に関する交渉はできるみたい。いろんな方向にお話が伸びていきそうな下地です。それに、戦闘描写が結構楽しいです。まずはレーザー砲ライフルを用いる少女がクローズアップされます。エネルギー補充が必要なところとか、近未来時代設定にマッチしていてイイですね。ガールズラブのタグもついてて、学園を生かした繊細なあれこれがこの先あるのかと思うと、すごく広い層を取り込めるポテンシャルがあるように感じます。

 他一作もちらっとみてきました。基礎文章力の高さが感じられます。こうなると安心して誰にでもオススメできる。なので要素がストライクゾーンに入ってる方はブクマしといて損がない作品。このレベルで読まれないの? ひょっとして百合要素入ると、かなり競合率が高くなるのですか? 界隈詳しい方いたらぜひご教示願いたい。



№70

怠惰すぎて信仰を失った女神さま、天界を追放されてしまう~しょうがないので知恵と工夫でハードな下界を生き抜こうと思うよ/すすに

……いい加減な神様や女神のせいで主人公が迷惑をこうむる。あるいは転移OR転生者に問題を丸投げしてくる神様は結構見た気がする。で、これは逆に女神が「そういう天界の決まりなので」って地上にいきなり落とされるわけだけども、超常能力なし。天界でノンビリしていたのでフィジカルもなし。栄養に不自由しなかったので豊満なプロポーションは残っているぽい? ぐらい。あとは人間の生み出すものに対する、他の神様連中とは違う、好奇心と探求心が秀でている。

 魔法っぽいのは光を出すだけ。つまり、もともとは自ら創造した世界の人間から得た成長の意思と結果を、フィードバックされてこの女神は武器にしていくのか。熱い展開ですよ。面白そう。でもゼロスタートですが、信仰というか信頼ポイント? (神と認識されてるか不明なので)が得られればちょっと強い奇跡も起こせるのか。

 これかなり楽しくないですか。町作りシミュレーションだって支持率とか信頼とかないと詰みますもんね。

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