第12話

 マスタングのライトが撃ち砕かれた瞬間、橋の向こうからヘッドライトの塊が猛然と突っ込んできた。


 バニヤー達の脇を走り抜ける刹那、運転席から突き出されたショットガンが火を噴いた。


 ガソリンタンクを撃ち抜かれた車が轟音とともに炎上した時、サムのワゴンはすでに五人の背後へ迫っていた。


 異変に気づいて振り返った連中の眼前に、迫るライトが広がった。


 彼らは撃ち返す間もなく、慌てて避けるだけで精一杯だった。


 三人が飛び退いたが、二人は避けきれずに激突し、海へ落ちて行った。


 サムの車はマスタングの手前で反転して停まった。


 ドアが勢いよく開き、ショットガンを手にしたサムが飛び出した。


 倒れ伏した三人に駆け寄り、素早く銃口を向ける。


「そこまでだ。銃を捨ててうずくまれ!」


 私はマスタングから出て、サムのところへ走り寄った。


「バニヤーはどうした?」


 サムは向こう岸へ目を遣った。


 二台目のキャデラックを包み始めた炎の向こうに、走り去るバニヤーの後姿が照らし出されている。


 私はワゴンに乗り込み、エンジンをかけた。


「二人を頼んだぞ。俺はバニヤーを追う」


 アクセルを踏み込んだ。


 途中、赤信号に捕まったのでその場へ車を乗り捨て後を追った。


 劇場の並ぶストリートは人出でごった返し、セレブな御婦人方と幾度となくぶつかった。


 前を行くバニヤーの脚はよれよれで、まるで泳ぐように走っている。


 私も息が切れかけていた。

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