第9話
ベイ・ブリッジの下調べを終えると、オフィスへ拳銃を取りに戻った。
久し振りの部屋は、窓枠に蜘蛛の巣が出来ていた。
ビルの裏に停めっぱなしだった車……なりばかりデカい73年型のポンコツマスタングで「モンタナ」へ着いたのは6時前だった。
とっくに日は落ちている。
店では、先に着いたサムがブリュエット氏と一緒に待っていた。
テーブルの上からポンプ式の散弾銃を取り上げ、サムは言った。
「こいつは脅しのためだ。俺の車は裏にある。車種はトヨタのワンボックス。車高の高いほうがいいからな」
「なら、もう一台は俺のを使おう」
「大丈夫か。ちゃんと走るんだろうな」
サムが混ぜっ返す。
「茶化すなよ。さて、ブリュエットさん。あなたは私の車に乗ってください。乗り心地は保証の限りじゃありませんが」
ブリュエット氏は暖かそうなツィードのコートを着、黒い皮の手袋をしていた。
権利書の入ったマニラ封筒を携えている。
「手順を確認しておきましょう」
車に乗り込むと、私は運転席のブリュエット氏に言った。
「いいですか。我々はまず、橋の湾側から行きます。周囲の暗闇を味方にするなら、その方が好都合だからです。車を降りたら、あなたはライトを持って連中の指示通り橋の中央まで行く。その際、私が車内にいることを気取られないよう、二度と振り返らないのが良いでしょう。そして、背後で車のエンジン音がしたら、すぐにライトを消し、ジェシィと一緒にその場へ伏せてください」
「ああ、わかった。わかっている」
「後は手はず通りに頼む」と、私は開いた窓からサムに言った。
サムは腕時計を見た。
「いよいよだな。行こうか」
我々は車を発進させた。
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