海姫のしきたり

@kakka1209

たのしいかくれんぼ

「どこかなー?出ておいで!」

外から声が聞こえる。

鬼が探しているターゲットは、暗い倉庫に身を隠している。健気に見えるが、子供特有のわんぱくさを持ち合わせているようだ。

「かくれんぼ飽きちゃった。でもまだ見つかりたくはないな。だって遊びは真剣にやれってお母さんが言ってたもん。」

少女が自分に言い聞かせるように小さく呟いた。目立たない場所にいる為、物音を出さなければ見つかるようなことはないだろう。

ーーーーー

一時間が経過したが、鬼はまだ少女を見つけていない。外もすっかり暗くなっているだろう。

「カラスが鳴き始めたし、そろそろ帰らなくちゃ…」

「でも、お父さんが作った竹とんぼ壊しちゃったし。帰ったら怒られるかも。嫌だなぁ。」

「しかも家に帰ったら勉強しなきゃだなんて。」

ぼうっとしながら呟いてるうちに、少女の意識がまどろんできた。

(…疲れて眠くなっちゃった。鬼の声も聞こえてこないや。少しだけなら…寝てもいいよね。)

壊れた竹とんぼを左手に握りしめ、眠りにつく。

ーーーーー

…数時間後、少女は目が覚めた。なんだか寒いし、外は何故か騒がしい。

「なんだろう…お祭りはおととい終わったはずなんだけどな。」

倉庫の扉が勢いよく開く。お父さんが心配して探しにきてしまったのかも…

すると、知らない男3人がこちらを見つめている。

安堵したと同時に、気味悪そうな表情を浮かべていた。「おい、これは…」「とりあえず、この子だけでも無事で…」少女は困惑していた。知らない男たちが来てわけのわからない言葉を発しているからだ。

「あの…おじさん達は?」「ああ、ごめんね、おじさん達は、君を助けにきたんだ。」

「…助けに?」「そうだよ。ところで…その…隣に居るのは、誰かわかるかな?」「誰?人なんか…」左を振り向くと、そこには


優しかった父の死体があり、左手には、「壊れて動かない」父の指が握られていた。

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