深夜の散歩で起きたこと

一河 吉人

第1話 深夜の散歩で起きたこと



 ――そう、起きたんです。



 はい、深夜の散歩は以前から好きで、この公園へはよく来てました。大体は日付が変わったくらいの時間ですね。家から歩いて10分ほどで、距離がちょうどいいんです。歩道も広くて明るいし、コンビニも2件あって安全ですし。気分転換がてらにぐるっと回ってそのまま帰ったり、コンビニで買ったコーヒーを、そこのベンチでチビチビやったり。特にこの時期は気持ちいいですよ、もう少しすれば夜桜を眺めながらで乙なものです。


 ですから、昨夜のことについては、まだ心の整理がついていません。まさか、ここで起きてしまうなんて……。


 いえ、特に思い当たることはありません。昨日はいつも通り出勤して、いつも通りに帰ってきて。そうですね……前回この公園に来たのは、一週間ほど前でしょうか? それくらい間隔が空くのはこれまでにもよくありましたし、特別というわけでは。ですから、あんなことになるなんて考えもしなかったんです。


 最初に違和感があったのは足元ですね。あれ、裸足なんだな、靴を履いてないんだなって。ただ、そっちに水場があるでしょう? よく子どもたちが靴を脱いで遊び回っていますから、そういう人もいるかな、とぼんやり思うくらいで。


 でも、そうしたら次は服装です。あれ、これパジャマだなって。しかも私のと被ってるじゃんって。いえ、量販店の安物なんで使ってる人は多いと思います。ですから、まあそういうことともあるかなって。


 それよりも、後ろの花壇に意識がいきました。チューリップが咲いてたんです、赤いのが数本。それで、わあって思って。もっとよく見ようって、近づいたんです。そうしたら、小枝を踏んづけちゃったみたいで。痛みでびっくりしちゃって、すこし血も出てて。でも、そこで、全てを理解したんです。



 今でも、まだ信じられません。



 まさか、あの公園で起きるなんて。



 私が、夢遊病者だったなんて。

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