一河　吉人

　俺はどこにでもいる普通のサラリーマン、穴守中（あなもりあたる）だ。先日、趣味のダンジョン探索中に遭難してる女を助けた。のはいいんだが、どうもそいつが配信者だったみたいで、俺の姿…

　眼鏡の歴史は古い。 　その起源は紀元前三世紀、太陽光を集めて火を起こすための集光具だったと言われている。水槽やレンズに拡大機能があることもやはり古来より知られており、かのロー…

最近ネットで評判のやつ、どう？　と誘われた新作映画、どんなもんだと連れ立ってみたらこれが思いの外に良作だったのだ。私達は買い物の予定を急遽変更、映画館を出たその足でカフェでの感想…

駅前の謎オブジェに佇む男に声をかけると、広い背中が振り返った。前回竹田と会ったのは忘年会だから、もう半年にもなるか。

　私はシートを右手でしっかりと掴み、怯える娘に笑って応えた。 「大丈夫、しっかり握ってるから」

「ね、嘘じゃなかったでしょ？　もちろん、今回だって本当の話さ。辞書で調べたっていい」

精霊暦773年、盟主アヴァロン王国の将バルバロッサの突然の反乱により、セレスティア大陸は、そして世界は戦乱の炎に焼き尽くされんとしていた――

ディティールを誇張して話を盛り上げるなんて、よくあることじゃないか。

　俺には三分以内にやらなければならないことがあった。 　決して避けて通ることのできない、負けられない戦い。 　明日を勝ち取るための、死力を尽くした生存競争。 　己の全てを…

放課後の国語準備室には、珍しく文芸部の部員が勢揃いしていた。

ラッキー7の由来は諸説あるが、一説にはとある野球の試合で7回の攻撃時、フラフラと上がった打球が風に流されスタンドイン、それが決め手となり優勝を勝ち取った故事に由来するという。

「タイプとかそういう問題じゃないですよ！　筋肉ですよ！？」

　いえ、特に思い当たることはありません。昨日はいつも通り出勤して、いつも通りに帰ってきて。そうですね……前回この公園に来たのは、一週間ほど前でしょうか？　それくらい間隔が空くのは…

宋代の『爾雅翼』にいわく、角は鹿、頭は駱駝に、目は鬼、首は蛇、腹は蜃、鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛に似るとされる。これを『龍』と呼ぶ。

　新しく出来た大型モールをさまよっていた私は、ぬいぐるみショップを見つけた。ふらりと立ち寄った私を出迎えたのは、温和そうな店員さんだった。

とある本屋の跡地には、幽霊が出る。「本屋が欲しい、本屋が欲しい」と哭く幽霊が……。

　少し気弱な女の子とぶっきらぼうだけど芯の強い男の子が、ガラス越しに思いを交わす、ひと夏の物語。

天より力を与えられた勇者、アマカワ・コウキ。人間勢力が魔王軍に対抗するため異世界より彼の召喚に成功してはや二年、魔王軍は勇者に関する重大な課題を解決できずにいた―― 。 　弱す…

この世界では15歳になると、成人の証として神様から加護を授けられる。具体的には自分のステータスが確認できるようになり、また当人にふさわしい職業やスキルを与えられるのだ。僕は必死で…

科学部は実験する、真理を求めて。

私の思いは、決して実を結ぶことはないのでしょう。この気持は、秘められたまま、胸の奥底に仕舞われたまま、しかし決して消えることのなく、くすぶり続けるのでしょう。

とあるペンションで起きた殺人事件。難航する捜査の現場に颯爽と現れたのは――。

メロスが走る。愛ゆえに走る。 ※青空文庫版（https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1567_14913.html）を使用…