【旧作】聖女の見ている世界!妹に婚約者を奪われましたが、聖女の座もプレゼントします!
石のやっさん
第1話 婚約者の地位が奪われたから、聖女の地位もあげますね
私の名前はマリア...この国の公爵家の娘で「聖女」だ。
そして、ある理由がが元で王太子フリード様の婚約者をしている。
この話を聞くと凄く幸せに感じる人も多いと思います。
だけど、私は、聖女に何て本当に成りたくなかったのよ。
そして、王太子の婚約何て全く関心もないし興味が無かったわ。
いや寧ろ面倒だから、「王太子の婚約者になんて本当は成りたく無い」それが本音。
この日は、何故か、態々王宮に呼び出され、妹の横に居るリード殿下からお叱りを受けている。
何で怒られるのか...本当に解らないよ、だって凄く忙しい毎日を送っているから王子や妹に殆ど接していないし、余り宮中の事は興味ないから宮中に出入りじたいもして無いんだけどな...
「数々のロゼへの陰湿な嫌がらせ。申し開きはあるか、マリア」
ロゼへの嫌がらせ? 全く覚えは無いわ、本当に忙しいから構ってなんていられないし、実家ともそんなに仲良く無いから余り話もしない。
時間が惜しくて仕方ない私は、そんな物に時間なんてとられたく無いもの。
「ロゼへの嫌がらせ...身に覚えは本当にありません!」
本当に身に覚えは無いわ、そもそも私は実家に嫌われているせいか、廊下で会っても妹のロゼは挨拶も返して来ない。
最初はそれでも挨拶位はしていたけど、返さない相手に馬鹿馬鹿しいから私も挨拶をしなくなった、ロゼとは交流その物がない。
当然妹のロゼに何かをした記憶など全く無いし、聖女として既に働かされていて、忙しいからそんな事している暇なんて、全く無いわ。
「身に覚えが無いだと! あれ程、陰湿な事をしながらお前という女は良心が全く無いのか!」
本当に身に覚えが無いわ...聖女の仕事が忙しすぎてそんな事する暇なんて本当に私には無いもの。
「フリードさま...本当に何の事か解りません、言わせて頂ければ、私は実家に嫌われているので、妹のロゼとは交流が殆どありません、しかも、聖女の仕事が本当に忙しいから宮中にも余り来ません、そんな私が何でそんな事が出来るのでしょうか?」
周りは静まりかえり、王子の取り巻きたちは距離を置いて私たちを見ているわね。
誰もが、黙ってその様子を見ていた。
「待って、フリード殿下そんなに姉を怒らないであげて下さい」
「ロゼ、もう庇わなくて良いんだ、無視や取り巻きを使っての嫌がらせの数々、そんな陰湿な事を繰り返すような女なんてな」
何なのかな?この茶番...取り巻きなんて、私には一人も居ないわよ? 傍に居るのは王妃様がつけた私の護衛だし...まぁ無視は貴方が挨拶もしないから心当たりはあるわね。
だけど、ロゼは挨拶しても返してくれない相手なんだから、話掛けないのはお互い様だわ。
フリード殿下の言葉を聞いた周囲が、ひそひそと話し出しているけど、これで、何で私が一方的に言われるのか、本当に解らない。
「俺は貴様のような女の婚約者であったことが恥ずかしい」
もしかして婚約破棄なのかしら...本当に?
ついている...私は凄くついているわ!
向こうから言い出した、これは「私のせいじゃない」私から言い出してないから責任は全部むこうだ。
慎重に、慎重にしなくちゃ。
「では、フリード殿下はどの様にしたいのですか!」
焦るな私、次の言葉を...早く
「黙れ! 気安く俺の名前を呼ぶな!」
私が聴きたいのはそれじゃない!早く、早く...
「そうですか、ではどのようにしたいかお決め下さい...」
殿下は雰囲気に酔っているのか、両手を広げて声を上げる。
まるで舞台に立つ役者のよう。
「今日この時より、フリード・ルーランはマリア・ポートランドとの婚約を破棄する!...そして、俺は、代わりにロゼ・ポートランドとの婚約を宣言する」
そうよ、それよ私が聞きたかった言葉...籠の鳥の私を解き放つ可能性のある、その言葉。
「それは王や、王妃様もご存じなのでしょうか?」
言質を取らなくちゃ、王や王妃は多分知らない筈...いや王や王妃が知っていたらこんな事を絶対にさせない。
だから...言質を取らないと...まだ王妃や王様は来ていない。
私にとって最高のチャンスだ。
「まだ、知らせていない...だが」
時間が勿体ない...王や王妃が来たらこの話はひっくり返される。
「まどろっこしいです...王家として正式のお言葉か聞いております」
挑発してでも、早く、早く終わらせないといけない...
「貴様、元婚約者とは言え、不敬だが…良かろう王家として正式の言葉として伝えよう」
やった、これだけの沢山の貴族の前での宣言だ如何に王太子とて取り消しはきかないだろう。
私はこれで籠から出られる。
「謹んで、マリア.ポートランド婚約破棄をお受けします」
これで、自由が手に入る、これで私は自由だわ。
勝った...私は勝ったのよ。
ロゼには悪いけど、欲しがったのは貴方だわ...私じゃない。
私が簡単に受け入れた事で留飲が下がったのかフリード殿下は静かになった。
そして、少しだけだけど言葉を弱めた。
良いのよ、幾らでも聞くわ...だって私を自由にしてくれたんだからね。
「そうか...潔いのだな」
断罪でもしたつもり!普通なら泣き喚く、そういう場面ね...だけど私は嬉しいのよ、本当は感謝が言いたい位なのよ。
但し、私には罪は無い、そこだけは後で「利用される元」だからキッチリさせて貰うわ。
「別に、罪は認めた訳ではありません...私はフリード殿下は嫌いじゃ無かったですが...この国の王妃の激務には耐えられそうもありませんでした...だから、その責を他の方が変わってくれるのなら譲ろうと思っていたんですの...ロゼ、誓って下さい! 貴方はフリード殿下を愛してこの国の為に生きれますか?」
自分に酔っているロゼならちゃんと答えるだろう。
良いのよ、フリード殿下なんて嫌いでは無いけど「愛してもいない」から、ロゼ貴方にあげるわ。
「私はフリード殿下を愛し...この国の為に生きると誓います」
「偽りはありませんか?」
「偽りはありません」
それなら良し...本当に愛しあっているなら、うん本当に良かった。
「では、貴方に婚約者の地位と「聖女」の地位をお譲りします」
「「聖女」の地位まで譲ってくれるの?」
「この国の王妃になるなら「聖女」も当たり前ではないですか?」
「あの...お姉さま...ありがとう」
私はこれを手放したかったのよ、寧ろ受け取ってくれないと困るわ。
「聖女」の地位これを受取ってくれるなら、全部あげるわ。
無実の罪に2人して陥れたのだから良心の呵責があるでしょう?
だけど別にいいのよ...そんな事..うん、私を自由にしてくれたんだから...
「マリア...」
「もう、何も言わないで良いですわ...妹は貴方にふさわしいわ...お幸せに」
「済まないな...」
「私はこの国から出て行きます...流石に追手までは掛けないで下さいますか?」
これで本当の自由...ようやく自由に生きられる。
「そこまでしなくても良い」
いえいえ、私がしたいのよ
「いえ、妹にした意地悪は身に覚えがありません、ですが未来の王妃が言ったのですから私に何か手落ちがあったのでしょう..それで許して下さいませ...フリード殿下、妹、いえロゼ様と呼ばせて頂きます」
「フリード様、私はもうこれで良いです、姉の言う通りにしてあげましょう...私は許します...ただのボタンのかけ間違いかも知れません」
「解かった..認めよう」
やった、やったわ...もう遅いわ、此処まで話が進んでしまえばもう絶対に覆せない。
事件の事を衛士が伝えたのか、いきなり国王ユーラシアン6世、王妃マドリーヌ、それにオルド―伯爵を含む古き有力貴族がなだれ込んできた。
だが、もう遅い...既に終わってしまった後だ。
「婚約破棄とは何事ですか?」
「たった今、マリアとの婚約破棄をして新たな婚約者にロゼを指名しました」
驚いているでしょうね...貴方達が私に付けた枷を枷自らが壊したんだから。
「フリード...それは正式な言葉として発してしまったのですか?」
「はい、王家として正式な言葉として伝えましたが何か問題でも?」
ええっ正式の言葉よ...間違いないわ。
「マ、マリアはそれを受けたのですか..受けないわよね」
「いえ、しっかりと受けさせて頂きました...聖女の地位もロゼにお渡ししました」
私が絶対に受けるのは解っていますよね。
「そ、そうなの...貴方以外に聖女になれそうな者は居なかったのですが...仕方ないですわね...決して貴方が罠を仕組んだ...そういう事では無いのね」
「はい、私は嵌められた方ですね」
まぁその話には乗りましたけど..
「まぁ良いわ...それでどうするの貴方は?」
「国から出て行く許しも得たので隣国にでも行ってヒーラーにでもなるつもりです」
「規格外の魔力に聖女の技術を会得した貴方なら可能ですね...さようなら」
「待て、女公爵の地位を与える、息子も廃嫡する..この国に居ては貰えぬか?」
「私は聖女には向いておりません、王妃様に師事してどうにか聖女に成れましたが...心までは身につかなかったようです...欠陥品の私は真の聖女にはなれそうもありません」
こんな感じで良いわよね!折角自由になれるチャンス、絶対に手放しませんわ。
「そうか...息子が王族として言ってしまった事だ仕方ない...今迄ありがとう! 王として礼を言う!」
「有難うございます...お世話になりました」
「実家には顔を出さぬのか?」
「出さないで国を出るつもりです..聖女になった時から形だけの親子ですから」
実質縁がきれているような物だしね...
「そうか、ならば好きな場所まで馬車で送ろう...金貨も30枚出す、宝物庫の中から好きな物を一つ譲ろう...今迄ありがとう...」
「これ迄本当にお世話になりました」
「ご苦労様でした...言えた義理ではありませんが...幸せに暮らしなさい」
「有難うございます王妃様、いえ師匠」
「師匠と呼んでくれるのね」
それでは聖女の能力を譲渡して終わりね
「はい...では、「偉大なる女神ノートリアよ! 聖女マリアの聖女の義務を、新たな聖女ロゼに移行します」」
マリアの中から黒い靄が現れ、その靄がロゼにまとわりついたが他には何も起こらなかった。
「お姉さま、何をされたのですか?」
「聖女の義務を譲渡したのです! 暫くは大丈夫ですが後は頼みます...解らない事が起きたら王妃様にお聞きなさい!」
これで全てが終わったわ。
「...」
「それでは私はこれで失礼させて頂きます...最後にロゼ!」
「何でしょうか?」
「ありがとう...貴方は最高の妹よ!そしてフリード様もありがとう!」
「「えっ!」」
「さようなら」
これで本当に終わり...私は自由だわ。
「あの母上、聖女とはいえ...何故あそこまで去るマリアを厚遇するのですか」
「貴方には説明していませんでしたね...聖女とは国に全てを捧げて国を守る盾です」
「国を守る者...それは一体」
まさか、真実を話す前にこんな事になるなんて...
「それについては、これからロゼが引き継ぐ事になる」
「はぁ...私はマリア以外聖女が務まる人間は居ないと思っていたのに...」
「母上?」
「貴方達はこれから気の休まる日々は無いと思いなさい」
「王妃様...冗談ですよね、その位大変という事ですよね」
「...」
王様も王妃も黙っている。
そして、その周りにいる古くから仕えている貴族も沈黙している。
これから起きることは決して軽い事では無い...
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