第3話
「チッ。祓魔師か。邪魔が入ってもうたのう。」
爺が一瞬、イラついた様子を見せたが、すぐにまた余裕の表情に戻った。
祓魔師?聞いたことない言葉だ。でも、助けが来てくれた。女子高生だろうか。私は、フラフラと尻もちをついた。そして、明らかに私より年下の彼女に、私は縋るように視線を送る。
「ちっがーう。ヒーローだっての!」
ヒーローと名乗る彼女は、大きな声で否定した。その幼さが残る様子に、私は少し不安を感じた。
「グアアアアアアア!!!!」
ヒーローを名乗る少女に頭を踏まれていた熊が、大きなうめき声をあげて動こうとする。
「おぬしは、もういいよ。散り様は美しくなければならんのじゃよ。」
爺はそう言うと、杖を地面にポンとついた。途端、熊は一気に爆発し、その破片は花びらとなりひらひらと降りた。私は、その光景を美しいと思ったが、我に戻った。
「ヒーローとやら、それに人の子よ。2人まとめて、わしを楽しませておくれ。」
爺は、花びらを何枚も手のひらに置くと、それに息を吹きかける。すると、先ほどとは違い、10匹を超える黒い熊が私とヒーローを囲むように現れた。
「ちょっと、ヤバイかも。今更だけど、私は茜。お姉さん、名前は?」
「和泉青です。てか、そんな呑気な感じでいいの?」
「名乗りは大事だよー。それで、青さんって戦えたりする?」
「うーん。あんまり期待しないで。」
「へえ。戦えないとは言わないんだね。青さん、おもしろーい。」
「グァググァアア!」
一匹の熊が、私たちの方へと突っ込んできた。
「じゃあ、青さん。出来るだけ私の後ろに居てね!」
茜は、言葉を言い終わる前に熊の腹に正拳突きをした。
「ガアアアア!!」
「まずは、1匹目!」
茜は、殴る蹴るの大立ち回りで、熊をバッタバッタと倒していった。そして、残る熊は後2匹となった。
「……はぁはぁ。あと……少し……。」
もう茜の体力も限界だ。私はとにかく、逃げ回っていただけで、戦いは茜が全部していた。
「……しまった!」
熊の一匹が私の方に向かって突っ込んできた。茜の方には、もう一匹の熊が突っ込んできている。
――どうする。茜が、もう一匹を倒すまで待つ?
――それとも、戦う?いや、さっきそれで負けている。
――じゃあ、逃げ回る?どっちにしろ体がうごかない。
――それなら、私は……
ヒーローになれる夜 朝霞まひろ @asakamahiro
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