断章c・現実

家に帰り、少女は机に向かう。今日買ったレターセットを開け、ペンを取り、ただひたすらに書いていった。自らの想いを文字で表すのは意外に難しいと思ったが、それでも少女は思いつくまま、ペン先を止めずに記していく。


      #


 翌日、朝のSTになっても少女は学校に来なかった。担任によると病欠だという。しかし、だからこそ少年は少女の言葉が心に引っ掛かってならない。もしかしたらもう学校に来れないのではないか、そんな考えまで浮かんでいた。少年はただ、否定する。いや、否定したかった。授業中もずっとずっと、少女のことが頭から離れない。それなのに、視聴覚教室には足を運ぶ気にならない。ただただ、おかしいと思った。


 来る日も来る日も少女は学校を休み続け、少年の不安はより高まっていく。そんな日々が続いたある日の、朝。


 少年が学校に来ると少女の席には、一輪挿しにささった白い蓮の花が、置かれている。少年はその目で見たものが、信じられない。茫然としたまま自分の席へと座り、何かのいたずらじゃないかと思い込もうとする。だが、少女の言葉も浮かんでくる。目の前に突き付けられた現実と、それを避けようとする心。そのジレンマに少年は苦しみ、うなだれた。

 その日の朝のSTで、担任が冒頭に言う。

「最近ずっと休んでいた平川 琴美さんが亡くなったと、連絡が入りました──」

 現実が、少女の言葉と共に少年を貫き、絶望の淵へと突き落とした。 家に帰り、少女は机に向かう。今日買ったレターセットを開け、ペンを取り、ただひたすらに書いていった。自らの想いを文字で表すのは意外に難しいと思ったが、それでも少女は思いつくまま、ペン先を止めずに記していく。


      #


 翌日、朝のSTになっても少女は学校に来なかった。担任によると病欠だという。しかし、だからこそ少年は少女の言葉が心に引っ掛かってならない。もしかしたらもう学校に来れないのではないか、そんな考えまで浮かんでいた。少年はただ、否定する。いや、否定したかった。授業中もずっとずっと、少女のことが頭から離れない。それなのに、視聴覚教室には足を運ぶ気にならない。ただただ、おかしいと思った。

 来る日も来る日も少女は学校を休み続け、少年の不安はより高まっていく。そんな日々が続いたある日の、朝。

 少年が学校に来ると少女の席には、一輪挿しにささった白い蓮の花が、置かれている。少年はその目で見たものが、信じられない。茫然としたまま自分の席へと座り、何かのいたずらじゃないかと思い込もうとする。だが、少女の言葉も浮かんでくる。目の前に突き付けられた現実と、それを避けようとする心。そのジレンマに少年は苦しみ、うなだれた。


 その日の朝のSTで、担任が冒頭に言う。

「最近ずっと休んでいた平川 琴美さんが亡くなったと、連絡が入りました──」

 現実が、少女の言葉と共に少年を貫き、絶望の淵へと突き落とした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る