ACT.1 アンチヒーロー⑧


マシンガン、はたまた九官鳥。


止まる事を知らないトークのオンパレードがアズリューリュから始まり、ヴァンドラや他の勇者達の話題の中心になっている。


口は災いの元というが、言葉一つで俺達の情報を洗いざらい流すのはどうかと思う。


しかもさっき会ったばかりの敵か味方かも分からない奴らに、堂々と。


総司の悩みの種は尽きないという事だけは明確だった。



『お前さんの相棒面白ぇな!』


「相棒ではない。ただの子守り対象だ」



輪から外れたヴァンドラは総司に歩行速度を合わせる。



『長旅をするにあたって世話を焼かなければならない奴がいるというのは中々の刺激になるんだぜ?黙々と旅路を進むより、豊かな心で歩む方が考えた方が広がるってもんだ』


「刺激が強すぎる奴は落とし穴を見誤る可能性が高い。災いの種はごめんだ」


『慎重派と感覚派の組み合わせか。それもまた一興よな』



他人事だからそう言えるのだろ。一つのミスが重大な局面を呼ぶ事がある、それを回避するためには如何に緻密な戦略を用いて場をこなして行くかが鍵となるというのに。


感覚も大切ではある。だが、それは一種の運任せという事。


調子が左右する運を味方に付けるのも管理や策あっての事象。ならばどうするのが効率良く物事を進められるかは明確だろう。


分かり合えるとは思えないが。



『しかしパーティーに近接タイプしか居ないというのもな』



確かに策を興じるにあたって、均等な配分が叶わないというのは内容の幅が狭まるというもの。



「私は近接タイプではないですけどね」



いつのまにか輪を離れて当たり前のように会話に混ざるアズリューリュ。



「系統でいうならオールラウンダーですかね。だって私はかみ」


「オールラウンダーの定義を理解してない奴がオールラウンダーになれるわけないだろ」


「はぁ?」


「我先にの精神を優先する奴が全方位の作戦において活躍すると思うのか?そういうのは後先考えないタダのバカがやる事だ」



極論。


この二人の相性は最悪と言っていいだろ。

感情的に動く無鉄砲幼児とthe堅物人間の間を取り持とうとする人はかなりの物好きで無いと割って入ろうなどとは思わない。


当初の目的を忘れて、ひたすら自論をぶつけ合う二人を見たヴァンドラはやれやれといった様子で溜息を吐く。


が、その状況はすぐに変化した。



『お、ナイスタイミング!』



長い帰路を移動している時、前方を見て声を上げた。


口論していた二人はその声に耳を傾け、首を前方へと振る。その光景に驚愕を覚えてはヴァンドラの表情を伺いつつ、二人は顔を見合わせた。



前方100m程先、子供達が列を成して歩いている。

これだけなら何ら不思議は無い。

だが、その光景には続きがある。


子供達は手足を枷で繋がれ、最前列と最後方には大人が監視の得物を盾に監視目的で強制を強いているように見える。


身体は痩せ細り、衣服と呼べる物とは思えない服装に身を包んでいる。

表情は見ず共分かっていた。


あれは間違いなく奴隷や捕虜の類の子ら。



「あれは?」


『見ての通り、別動隊が近隣の村から攫ってきたガキだ!ガキはいいんだぜ?高値で売買出来るランキングの上位に入っててな、あれだけ居ればまず間違いなく安定した拠点が持てる!ガハハ、でかしたでかした!』



能天気にもその光景を生み出した張本人がヴァンドラ自身だと聞いた瞬間、二人はシンクロした。


やはり、この世界に正真正銘の勇者は存在しないのかもしれないと。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者戦線〜白黒はっきりしようや、クソ勇者共〜 @waon2910

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ