ACT.1アンチヒーロー④
総司の思考に少しの疑問が残る。
「アンタ、部隊長なんだよな?」
『そうだと今言っただろ!』
部隊長・・・その立場にしてはあまりにもーーー
『お粗末過ぎる。だろ?』
ズドドーーン!!!
思考を巡らせようとした時、不意に聞き覚えのない声が聞こえたと思えば地面を叩き割り、凄まじい爆風と共に一つの影が舞い降りる。
それはあまりにも勇者らしからぬ勇者。
浅黒い肌に2m越えの巨体、その体躯に似合う巨大過ぎる大斧から元居た世界ではありえない現象が起きている。
まさにアニメの世界にでも来たかのように思わせられる超常現象、火山の噴火の如く斧から炎が放出している。
抉れた地面を溶かすような勢いで燃え盛る炎に威圧感が合わさってか、空間が一気に張り詰める。
『そりゃそうだろうよ。コイツは偵察隊の隊長であって、バトるのは専門じゃねぇからな』
「なるほどな」
『ガハハ!えらい落ち着いてるなぁ兄さん』
落ち着いてる?そう見えてるんだとすれば、それは大きな大間違いだ。
不思議と恐怖はない。
恐怖はないが、とある感情が芽生えてきている。
その感情は自分にとって少し厄介な物なだけに、極力出ないようにしなくては。
『それにしても妙な形をしているが、兄さん達は何者だい?』
「・・・」
『ガハハ、だんまりかい?信念を貫くという事は良いことだ。俺はそういう考えが嫌いじゃない、だが、時と場合は選んだ方がいいな。それが命運を分かる事もある』
「彼は見ての通り、仏頂面の口下手なんだ。代わりにこの私が代弁しようじゃないか」
場の空気は相変わらず緊迫している事に変わりはない。
こちらはポーカーフェイスを保つのも一苦労だというのに、全く場の空気を読めない奴もいる。
どれだけアピールをしたいのやら。
『使者。だろ?』
「っ!?』
真っ白い歯を見せてニカッと笑う男の言葉に流石のアズリューリュも意表を突かれたようで目を見開いて言葉を詰まらせる。
『嬢ちゃんが連れてるソイツ等とは数年前に一度だけ手合わせしててな、あの時の余興はそれなりに心踊ったなぁ』
「バカな事言わないでください!私は貴方みたいな獣に会った事などありませんよ!?」
『そりゃ俺だってねぇよ。あの時にバトったのは別品な姉さんだったんだからよ』
「姉さんって・・・もしかして、アシュナ様の事を言っているのですか!?」
高圧的かつ小馬鹿にした物言いしか出来ないと思っていたアズリューリュが感情を露わにしている。
ちんぷんかんなやり取りを前に総司は無力化した勇者を解放し、考察の姿勢に入る。
時間稼ぎは長ければ長いほど良いが、どれだけ持ち堪えられるのかは定かではない。
『そうそう!確かそんな名前だったな。あの時の護衛達とは色合いが違うようだが、また楽しませてくれるかい?お嬢ちゃん』
「・・・いいえ。彼らでは君には敵わないでしょう。」
『だったら大人しく降伏してくれると助かるんだが』
「勘違いしないでください。あくまで彼らでは厳しいというだけの話です」
『というと?』
対面に立つ両者。
パチンと指を鳴らすとアズリューリュの周辺を護衛していた守護者達は天に向けて飛び立ち、羽だけを数枚残して消えていった。
「その前に、お名前を教えて頂けますか?」
『これは失礼。名はヴァンドラ。【鬣の勇者】なんて呼ばれるしがない傭兵だ』
「・・・やはりそうでしたか。」
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