プロローグ②
言葉遊び?
いや、これはただのエゴという名の罵り合いというべきか。
相手は人ではない、神に仕える者というカテゴリーに属する高位の存在。一筋縄では無いだろう、どれだけ思考を巡らせなければならないのかを考慮した結果・・・
『そ、そこまで、いうひつ、よう、ないじゃないかぁーー』
ボロ勝ちだった。
その最中に怒りの感情は静まり、逆になんだか可哀想に思えてきた自分はまだまだ甘いと思った。
『幼児体型とか子供っぽいとかはまだ分かるよ?でも、幼稚園児とかクソ生意気なマセガキとかはあんまりだとは思わないのかい!?』
「・・・事実を述べたまでだ」
『っ・・・うわぁぁん』
これが神。
いや正確には使者か。
倫理や理論、あらゆる工作を用いる必要があると思ったんだが、まさか悪口のオンパレードだけで勝利してしまうとは想像以下だったな。
「何でもいいんだが、早いとこ決断してくれ。俺の意思は変わらないけどな」
『勇者戦線』
「あ?」
泣きじゃくる使者ことアズリューリュとの楽勝なやりとりを終えるまで一切のだんまりを決め込んでいた神様なる奴が口を開く。
『主を転生させる世界には多種多様な勇者が存在を許されている』
「聞いてねぇて言ってん」
『本来の勇者とは希望を導き、悪邪を祓い、魔を滅する事を担う高位の者が得られる称号のようなもの』
『だから聞いてーー!?』
パチンッと甲高い音が空間を響いた瞬間から俺の声は消えた。
思考を張り巡らせようとすれば、枯渇する泉のように考察力が途絶え、抗う事の一切を封じられた。
『ざまぁみろ!』
このガキっ。
泣きじゃくっていたはずのアズリューリュは俺のかけられた状況を鼻水が垂れる鼻で大いに笑い、小馬鹿にしてくる。
ボルテージを上げようと奮闘するが、それも叶わない。
何という汚い行いだろうか。
『だが、この【ハイルドウェイ】という世界では勇者は悪の種になりつつある。それも、我々の存在を脅かすまでの』
ふと、気付いた。
コイツの言葉を鼓膜が捉える事で、ハイルドウェイならぬ別世界の情報が脳内にビジョンで広がっている事に。
弱きを助け、強きを挫くはずの勇者という立場の人達の行いがいかに愚かで、罪深い事なのか。
悪邪を祓うどころか、コイツらがやっているのはただの自己主張の延長線であり、欲望や願望を叶えたいが為の弱い者イジメ。
執行という名の無慈悲な殺戮だった。
そしてそれは、世界の中だけにとどまらないという事。
強すぎる力を得た者の半数以上は自己の利益の為だけに力を働かせる。
それを繰り返せば望みはとめどなく巨大化し、全ての願望を叶えるために動き始める。
事実、この領域にも危険が迫っているという。
神を凌駕する力を宿す者達の手によって。
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