プロローグ③



「ふぅ。事情は分かった」



声を発する事が出来るようになったのは感覚で分かった。

だが、それでも納得は出来てない点がある。



「それを抜きにしたとして、どうして俺なんだ?俺じゃないとダメな根拠を明確に教えてくれ」


『まだ分からないの?頭悪いんじゃない?』


「園児は黙ってパパのとこに帰んな」



ムキーーッと猿みたいに発狂するアズリューリュは放っておくとして、今は確信を得たい。


どうして俺なのか?


それを聞かなければ次のステップには行かない気がする。



『弱者一人を助けるべく、数百人の咎人を相手に一人で特攻をかけ最上位の自己犠牲を払った主の行いは常人の人間に考えられる術の範疇を超越しておる。死を予期せず、必勝を胸に据え置く主は大馬鹿者だ』


「おい」


「だが、主は事実上、弱者を助けその場からは帰還している。数百人を相手に一切の泣き言を言わずして無事に救ったのだ。純粋な正義の持ち主でなければそんな荒業をこなす事など出来ん」


「おいって」


『結果的に主の行いは弱者の暗転により事なきを得てしまった。その弱者にはそれ相応のーーー』



ギリギリッーーギリギリッーー



「もう一度、その弱者(ワード)を使ってみろ?神殺しを成し遂げる結果になるぞ」


『き、君!?ど、どうして動けるの』



決して、御厨総司の前では言ってはならないキーワードがある。

それが例え超越するものであろうとも、権化の塊であろうとも、触れてはならない事象。


神は身動きを封じる為に楔を打ち込んでいた。


だが、そのタガは一つの感情と共に引きちぎれる。


怒り。


それが御厨総司が己の中に眠る正義を呼び起こすスイッチになっている。

ただ怒れば力を覚醒させるのか?


否。


理不尽な事象・事柄

圧倒的な強者の権化

残酷で非道な調和 など。


全ての事象が個の為だけに働いてる現状や過去、その未来に繋がる糧となって時、彼は自身の爆発を抑制出来なくなる。


現に、神の御技を持ってしても、強制力は発動しない。


どういう原理で、どういう解釈をすればいいのかをアズリューリュは試行錯誤していた。



「世の中、不平等だとは思わないのか?神は二物を与えず。とは良く言えたものだと思うぜ。不条理でしかないクソみたいな世界からやっとの思いで解放されたと思えば、転生しろ?ふざけんじゃねぇぞ!!お前ら神まで弱肉強食を強いるっていうんなら、かかってこい」



神に喧嘩を売った男、御厨総司には何の迷いも無かった。

設置された椅子を蹴り飛ばし、けたたましい怒声を張り上げては青筋を浮かべてブチギレる。



『申し訳ない』



人と神の喧嘩・・・それは起きない。


何故なら神は巨体を揺らしながら、人に頭を下げたからだ。


やりあう気満々だっただけに、流石に面食らった。

機械でも木偶の坊でもなく、本当に巨大な神である事の証明にも繋がった。



『か、神様は君の味方をしただけ、じゃないか』


「黙れ」


『黙らない、よ。君の所業に対してあまりに残酷な謝礼じゃないか!それを神様が咎める事のな、にが悪いっていうんだ』



身体を萎縮させながらおどおどしくも自身の強い意見を口にするアズリューリュ。


神の御技を感情だけで解いてのけた人間にビビらない方がおかしいというモノ。


だがその眼差しと言葉には芯の強さが感じ取れる。

恐怖に支配される自我を懸命に引き戻そうとするその思いと行動に、総司は感情を静めた。


的を得ている道理だからこそというのも尾を引いているのは確かだからだ。
















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