Midnight Walking
有宮旭
Midnight Walking
ふと夜空を見上げると、金色に輝く月が見えた。なんでも今夜は満月で、3月の満月は「ワームムーン」というらしい。ワームというのはなんだかよくわからなかったが、虫のことを英語でそう呼ぶそうだ。虫が動き出す暖かい頃の月、ということらしいが、なんだよそんなに暖かくないじゃないか。
私は息を深くはいて、縁石の上をバランスを取りながら歩いていく。歩道を歩くより、少し高い縁石の上を歩くのが、昔から好きだった。まぁ、縁石もそんなに長くは続かないんだけど、交差点とか横断歩道に縁石はないからね。
こんな田舎町では、ライトなんてほとんどない。何百メートルか毎にあるライトが、細い道をほの暗い程度に照らしている。それでも私には問題なかった。夜目が利くから、ほんの少しの明かりで十分なのさ。
そんな中、向こうから一人の男性が近づいてきた。近づいて…お、おい、ちょっと待ってよ、ぶつかrほらぶつかった。私を蹴とばしておきながら知らんぷりかよ。いくら細い道とは言え、すれ違えないほど細い道じゃなかったぞ。…まぁ、黒い毛皮を着て下を向いていた私も悪くは…いや、私には彼の足元が見えてたんだから悪いのは向こうだ。後姿を見ると、なんだ歩きスマホしてるじゃないか。あんだけ危ないって注意喚起されてるのに、まったくこれだから文明の利器は困る。
しばらく歩くとコンビニが見えてきた。中では店員が一人でぼーっとレジに突っ立っている。お客はいなさそうだ。まぁ、私も買うものないし、コンビニに用はないんだけど。ただただ、いつもの道を散歩してるだけだ。
…そろそろ帰るか、ルーティーンの散歩にも飽きてきたし、少し肌寒くなってきた。生活リズムを崩すのは良くないし、何より家族と認めてくれた人たちに迷惑がかかる。少し背伸びをして、歩道の縁石に乗り帰途につく。まだ窓は開いてるかな。今から帰るよ、ご主人様。にゃおん。
Midnight Walking 有宮旭 @larjis
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