第四戦闘配備 第二種戦闘配置 馬と鹿vs紅きモノ
〜レッドの場合 其の参の二〜
「夜……か。俺、なんでこんな所で寝てたんだ?それに暗くてなんも見えないな……仕方無い、手探りで周りの状況を確かめるしか方法は無い……か」
むにゅッ
「なっ?!なんだこの柔らかくて温かくて程よい弾力のあるモノは?俺の周りに何があるっていうんだ?」
俺は得体の知れない何かを触る……どころか握り締めた気がした。それがもしも動物の糞とかだったら遣る瀬無くなるのは目に見えていた。
何も見えないからと言って、手探りで周囲の状況を確かめようとした俺の誤算だった。
「仕方無い。この状況は緊急避難だ!だから緊急事態じゃないが、
ぼっ
ぼぼぼっ
「火力調整間違えると、森林火災になっちまうからな、こんなモンだろ」
俺は目を疑った。こんな事なら糞を握り締めた方が良かったとすら思った。それくらい火を点けて
「おわぁッ?!女の子!?しかも全裸……だと?いや、待てよ?この子、さっき見た子だよな?さっきは身体中が体毛で覆われてたと思ったが、気のせいだったのか……それにやっぱり頭のてっぺんに耳があるよな?ん?お尻に尻尾?コスプレか?コスプレ女の子のむむむ、胸を揉んじまったのか、俺はッ!」
この状況を誰かに見られでもしたら、俺は通報されて犯罪者になるだろう。それも性犯罪と言う悲惨なレッテルを貼られるのは間違いが無い。
このままでは「“元”戦隊ヒーロー(レッド)の性技が女の子を襲った!!」みたいな記事を書かれてしまうかも知れない……それだけはなんとしてでも回避しなければならない。そんな事になれば、今までのキャリアが台無しになるし、金輪際戦隊ヒーローには戻れなくなるからだ。
「それにしても、良くできたコスプレだよな。耳なんて触るとピクピク動くし、尻尾も温かくて実にリアル……はっ!俺は何を?ついモフりたくなるなんて……」
「う、ううん……はぁ……あぅん……そこ、ダメぇ」
「えっ?まさか!まさかまさかまさかだよな?これ……本物なの……か?」
さっきまで考えていた事とは正反対の行動を俺は抑えられなかった。寝込みを襲うみたいに寝ている女の子の胸を揉もうとは思わなかった(不可抗力は除く)俺だが、ケモミミとケモシッポだけはモフりたい魔力に取り憑かれ抗う事が出来なかった。
だから気付けばケモミミケモシッポをモフってたワケだが、その矢先に女の子の口から漏れて来たのは甘い吐息と言葉だった……。
ぱちッ
「「あッ」」
俺は女の子と目が合ってしまった。俺の手の中には女の子の尻尾があり、俺はそれをモフモフしている真っ最中で、その状況を見られたのだ。もう、言い訳が出来る状況では無いし言い逃れをさせてもくれないだろう。
だから完全に俺の詰みだった。
ずざざざざざざッ
「ま、待ってくれ!話し合おう!話せば分かる!出来るなら示談したい!週刊誌には告発しないで欲しい!それに警察にも!」
「こ、来ないで!近寄らないで!もう犯さないでッ!——アタイ……初めてだったのに……絶対に責任取らせてやる」
「えっ?一体……何を?俺は尻尾をモフってただけ……いや、さっき胸を触っちゃったけど、それは不可抗力と言うか……。いや、そもそも尻尾を触ったくらいでそこまで酷く罵らなくてもいいじゃないかッ」
「いやッ。ダメッ!近寄らないで、こっちに来ないでッ!」
それは完全なる拒絶だった。俺は完全に変質者扱いをされていた。
後悔先に立たずと言うが、モフりたい衝動を抑えられなかった俺に責任も過失もあるだろう。だがそれでも、この仕打ちは遣る瀬無さを増大させていた。
「そこまでにしてもらいますわよ?アテシの妹にそれ以上、近付くのはやめておくんなましッ!」
「今度は誰だ?週刊誌の記者か?ん……妹?えっと……ごほん。それなら示談にしたいんだが、いいかな?俺がやったのは不可抗力だったから、悪意も他意も全く無いんだ」
「ヌッコから聞きましたわよ。アナタ、凄く強そうなんですってね。アテシ……ゾクゾクしますわ。お相手しておくんなましッ」
駄目だった。新たに来たのも俺の話しを聞く耳……うーん、今度もまた頭のてっぺんに耳がある。いや、そんな事よりも今は敵意と殺気剥き出しで構えてるこの女性の対処が先決だな。
ぶぉんッ
「うぉっと」
ぶおぉんッ
「うわっと」
しゅぼぉんッ
「うぉんばっと」
認めよう。モフらせてもらった女の子のパンチも凶悪な風切り音だったが、新たに出て来た女性の蹴りも大したモノだ。高らかと蹴り上げて来るハイキックなんて素晴らしい威力だろう。
しかし俺の個人的見解からすれば、女性がハイキックなんて
死人に口なしと言うからな。
ちなみに、そんな事を考えながらも俺は周囲の様子を窺っていた。最初に空から落ちて来た女の子が連れて来たのはどうやら二人。一人は現状で相手にしているが一人は見学の様子だ。今の所戦闘に参加する気配は無いが、参加して来ようモンなら三対一になる。
そうなれば数の暴力で流石の俺でも苦戦するかもしれない。
「ちょこまかと小賢しいですわッ!それならアテシの力、見せてあげますわッ。イッマ、合わせておくんなましッ」
「サッカ姉さん、了解だよッ」
「
「
二人が同時に放った技。サッカが使ったのはイッマへのバフであり、バフを受けたイッマが放ったのは目にも映らない程の神速の剛脚による蹴撃の連続だった。
だだだだだだだだだだだだだだだだッ
「流石にそれなら躱せませんわよね?」
「ぐっ。一蹴り一蹴りが重い。だが、
がしッ
「えっ?!ボクの蹴りを、止め……うわぁ〜」
「嘘……ですわよね?イッマの蹴りを掴むなんて……」
俺は立て続けに蹴られていたワケだが、その動きを見極めると蹴りのタイミングに合わせて足首を掴み、そのまま持ち上げて逆さ吊りにしてみせた。
流石に女性に対して行うような事ではないと思ったが、これ以上蹴られてあげる程、俺はお人好しではないしそんな性癖も持ち合わせていない。
ちなみに足首を掴んでいるが、その先の足に変な靴を履いているんだなとかは観察出来ていた。
——その時だった。俺を囲んでいた三人目……ヌッコが必死な形相で叫び声を上げていたその声が、俺の耳に飛び込んで来たんだ。
「サッカお姉ちゃん、後ろぉッ!」
ざしゅッ
こうして、俺を襲って来たサッカは凶刃に因って背中を切り裂かれ、その場に崩れ落ちて行った。
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