第四戦闘配備 第一種戦闘配置 紅き咆哮と犬の慟哭
〜レッドの場合 其の参の二〜
「もらったッ!」
「出た……俺の
「えっ?!止まれ……ない。ちぃッ、ヌッコ回避して!」
「無理ぃぃぃぃぃぃぃッ!」
ぎいぃぃぃぃぃぃぃんッ
俺は何が起きたのかよく分かっていなかった。だが一つ分かったのは、俺がたまたま呼び出した
そもそも空から人が降って来るなんて思ってないワケだが、この場合、不用意に
少なくとも事故に変わりは無いから俺は事故った人の元へと急いで走って行った。
「ヌッコ無事?」
ぽたッぽたたッ
「アッヌ……ドジッた。でも一応、無事……」
「えっと、その大丈夫ですか?怪我とかしてませんか?救急車呼びましょうか?」
「よくもヌッコをッ!許さないッ!」
「えっ?!そんなに大怪我を?まさか、死……」
「勝手に妹を殺すなッ!アンタはヌッコのカタキ!絶対にアタイが殺すッ!殺してやるッ」
「アッヌ……ヌッコ、死んでないから……」
なんか死んだのか死んでないのか重傷なのか軽症なのか分からない状態で俺は、殺意を向けられていた。明らかに俺を殺そうとしてるのは分かる。でもこれは事故であって、空から降って来た側にも少なからず過失はあるだろう。
だから俺は示談をしたかったんだが、目の前の少女は聞く耳を持ってなさそうだった……。ってか、耳が頭のてっぺんにある……なんだこれ?
「でやあぁぁぁぁぁぁぁッ」
ぶぉんッ
「おっと。ふぅ、危ない危ない。当たったら危ないじゃないか!なぁ、俺の話しを聞いてくれないか?そっちは空から降って来たんだから、俺が一方的に悪いとは思えない。もし良ければ示談をしたいんだが……」
「聞く耳持たぁぁぁぁんッ!」
ぶぉぉんッ
おいおい、正気か?それにこの子、女の子だよな?なんか風切り音がえげつないほど凶悪なんだが……。それに威力ありそうなのに、なんか速いし……だけど俺はなんとか躱しながら交渉する事にした。
それでも少女は攻撃の手を緩めてくれそうになかった。
「くそうッ!なんで当たらないんだよッ」
「いや、だから、俺は闘いたくなんかないんだってば、話しを聞いてくれないか?」
「アンタは許さない!絶対にカタキを討つんだからッ!」
「なぁ、その子……死んでないよな?カタキカタキって、それって死んでから言うモンじゃないのか?それに、その子……ケガを……?」
どくんッ……どくんッ……どくんッ……どくんッ
「ゔわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
「見ィィィィィィィィィたァァァァァァァァァァぞォォォォォォォォォォ」
「お前の血はぁぁぁぁぁぁぁナニイロだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「な、なんだなんだ?一体、これ……?」
「へっへっへ、俺様と闘いてぇのか?いいだろう。ヤろうってんならヤってやんぜ!勝ったら俺様のモノだがなッ」
「な……何が……?さっきまでと、まるで別人……?」
アッヌは驚愕していた。赤い獲物が吼えた次の瞬間、それは自分に向けて強烈な殺気を放って来ていたからだった。
そして、その殺気にアッヌは全身の体毛を逆立たせていた。
「ヌッコ、生きてる?生きてるなら自力で逃げて今すぐにッ!」
「アッヌ……勝手に殺さないでよぉ。って、ナニ……アレ?殺気の塊……?」
「早く逃げなさいッ!コイツはアタイがなんとかするッ!だから姉さん達にこの事を伝えてッ!」
「イヤッ!ヌッコも闘う!アレはアッヌ一人じゃ絶対に無理」
「アタイ一人で無理なのに、ヌッコがいても変わらない。アタイが少しでも時間を稼ぐから、ヌッコは姉さん達を連れて来て」
「でも……」
「いいから行けッ!」
「わ、分かった……絶対に死んだらダメだよッ!死んだらヌッコがアッヌを殺すからねッ!」
それは決死の覚悟だった。アッヌもヌッコも、お互いに野生の勘が死を告げている事に気付いていた。
そんな中で少なくとも姉として
「話しは終いか?なら、俺様の狩り……獲物……遠慮なく狩らせてもらうゼッ!」
「ひゃッはァァァァァァァァァァァッ!」
しゅしゅしゅ
しゃしゃしゃ
「速過ぎる!回避が追い付かない……」
ざしゅッざしゅッざしゅッ
「くっ……アタイの鋼より硬い体毛が切り裂かれてる……そんな……嘘」
「まだまだァ!びゃひゃひゃひゃひゃッ。このままひん剥いてやんぜッ」
しゅばんッしゅばんッしゅばんッ
ざしゅざしゅざしゅざしゅざしゅざしゅ
「くっ……こうなったら……
一方でアッヌの中に爆発的に力が増して行くのは理解したが、レッドはその様子を……
そしてその刃が振り下ろされる度に、アッヌの身体を護る体毛は刈り取られて行く。
レッドがその手に持つ
その外装には血糊がまぶしてあり禍々しい形相だった為に、以前の仲間内からは
「く……喰らえッ!“
「ひゃっはあぁぁぁぁぁぁッ!面白れぇ!そのまま毛刈りして裸にひん剥いてやんよぉッ!
アッヌが放った
対するレッドの
しゅばばばばばばんッ
「う……そ……アタイの
「おっと、まだ
「えっ……な……何?そんな……まさ……か、嘘……でしょ?」
「今度は俺様のマグナムで、気持ち良くしてイカしてやんよッ」
「こ、来ないでッ!い、イヤァァァァァァァァァァァァッ」
こうして、深い森の中にアッヌの悲痛な叫びが木霊して行った。
空は太陽が既に鳴りを潜めつつあり、アッヌの叫びも慟哭も全ては夜の帳がその包容力で、二人の情事と言う名の一方的な陵辱の全てをひた隠しにしていたのだった——。
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