第12話「そこにいた」


その空き家は「出る」らしい。

大学のサークルから不良の肝試し、果てには有名配信者まで、あらゆる人間がその空き家に訪れたらしい。

結果、確率としては5割。

半分の確率で、そこには幽霊が出るのだという。

条件は分からない。けれど、必ずある場所でそれは発見される。

見えるだけで被害はない、ただそこにいるだけだ。それゆえ、怖いもの見たさの人間がそこにはよく訪れている。


最近某掲示板で噂になっている心霊スポットへやってきた黒里は、あちこちに描かれた落書きを横目に、煙草の吸殻を苦労して避けていた。


時刻は15時を少し過ぎたくらいだろうか、今回は怪異に出会うというより、雑誌に載せる資料を集めるためにやって来ていた。

まだ日が高いうちということもあり、幸運にも他に来客はいない。

しかも目撃情報は1箇所だけだ、黒里は数分と経たないうちにその場所へ辿り着いた。

そこには、残念と言うべきかやはりと言うべきか、なんの姿も目に写すことは出来ない。

けれど、それは確かにそこにいたし、今もまだ、ここにいるのだろう。




「死んだら、解放されると思ってたのにね」




目の前にあるドアノブには、麻縄の輪が括り付けられていた。

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