応援コメント

05 世界の向きを変えたもの」への応援コメント

  • >曾祖父は地面と激突する瞬間、祖母を守るために体の向きを変えたようです。

    これはまあわかります。反射的に子供を守ろうという本能があるので。
    でも、これを意図して「自分が死ぬかもしれないからやめとこう」って判断できる人間はいないと思うのですよ。ワゴンに撥ねられながらですからね。

    >「考えてみてください。まるで同じ事故だったんです。時間、場所、登場人物の性別から年齢、関係性にいたるまで」

    ここも謎です。平行宇宙でもまるで違ってることがあるのは、ここまでの説明でも何度も数出ていますし。
    カスミが〈あちら〉の事故状況を調べた上で語ってるならわかるんです。
    でもそんな素振りもなく、状況的にも不可能だと思われます。
    向こうのマキセさんが許すはずもないでしょうし。
    その部分が引っかかったままなので、長文の説明もひどく空々しく思われます。

    カスミが暴発したのも、心情は多少理解できますが、性格的に見ても、「なぜここで爆発するのか」って感じです。
    思うにこれは、オオノの描写不足に起因するのではと。
    オオノの何気に高圧的な部分などは、カスミが語りで触れているだけで、具体的に物語に出てきません。
    カスミへの要求も、曽祖父が望む程度のもので、向こうに引き止めるでもなし、老人のわがままとしては可愛いレベルのものですし。
    ここでカスミの昂りを読者に共有させるのであれば、オオノの動きをより不愉快気味に描写した方がよかったと考えます。それこそ強引にこちらにカスミを住ませる手続きを始めるとか。

    >「カスミさんのお祖母さんはきっと、お二人が仲互いされたままなんて望まないと思いますよ」

    私が四話目を読み終えて思っていたのは、
    「祖母が生きてたらなんて言うでしょうね」だったので、ほとんどまんまで出てきて驚きましたw
    この台詞自体は正鵠を射たもので、とてもいいと思いますよ。

    ただ、これを言い出すのがマキセというのがどうにも……他に登場人物がいないとはいえ、かなり違和感があります。人間関係構築した描写もないし。
    マキセの過去が語られたりしますが、それ以前に仕事上の関係ですよね?それも政府中枢に近い? と思うんですが。
    ここだけいきなりふわっふわになるのは、ちょっといただけない気がします。
    自分の立場を知った上で、あえて一言……もちろん政府に都合がいいとわかった上で。
    くらいのスタンスで言った方が、世界観的にも納得いったような。


    以下、全体の感想です。

    あらすじからSFテイストのヒューマンドラマなのかなと読み始めましたが、内容的にも文章的にもSF方向に寄せた作品でしたね。
    語られるカスミの心理に、情と呼べる感覚が乏しく、ハードボイルドといってもいいかもしれません。

    それが最後にいきなりヒューマンドラマに着地して、面食らいました。
    当初求めてたエンドは確かにこれなんですが、過程がすっ飛ばされた感じです。
    読み返しても、カスミがどういう人間なのか、何を大事にして生きているかという部分が描かれていません。こんなに自己分析しているので、おそらく意図的にだと思いますが。
    それゆえ、望んだはずの結末が、どうもしっくりこなかった、というのが偽らざる感想になります。

    導入部分、話の骨子は魅力的で、非常によく出来てると思います。
    カスミの慎重すぎる性格も、世界観的に、みなそういう感じで生きてるのかなとか、想像で補っていました。SFだし。相手がマキセだし。

    いずれ話が進むにつれて、カスミの内面が描かれるのかなと思っていましたが、そういう展開でもなく。もうハードボイルドで終わるのかなと思いきや、滑り込みでヒューマンドラマになるのは、あまりに唐突な変換で、それ故にとってつけたように感じられたのだと思います。

    この捩れを解消するには、二つの方向があると思います。

    一つは全体を通しているハードボイルド路線で着地すること。
    オオノに弁明させず、祖母の言葉を叩きつけ、二度と会うことなく日常に戻る。
    個人的には好みの方向ではないですが、筋は通ると思いますし、アリでしょう。
    ただ、途中指摘したロジックの穴は、しっかりと埋めておく必要があります。ふわふわだとハードボイルドに耐えられないので。

    二つ目は、最後の場面に合わせて、SFテイストのヒューマンドラマに寄せること。
    カスミの心情やオオノとの交流中の気持ちの変化の描写を中心にすれば、ラストの展開も受け入れやすくなるはずです。途中、マキセと気心が知れる仲になる場面を作れば、なおよし。
    オオノとの諍いについても、そもそも複数回の交流をどんな気持ちで受け入れ、話していたのか、現時点ではほとんど書かれていません。事務的というか無味乾燥的な。カスミの個性と言えばそうなのですが、ヒューマンドラマ的なキャラクターではないでしょう。もちろん上手く描ければ両立も可能だと思うのですが、今回はハードに寄りすぎに思われます。

    主人公がごく普通のOLで、別宇宙の曽祖父を怖がりながらも交流し、無理な希望に耐えかねて決裂するも思い直す。ヒューマンドラマの筋立てなら、こちらの方がわかりやすかったかなと思いました。

    評価については、物語の導入と興味深いSF設定に星を一つ。
    対して、オオノ追及の穴などロジックの不備と、急すぎて面白いと言い切れない終わり方の二点はマイナスで、星1とします。

    物語の着想は高く評価していますので、次に期待します。

    作者からの返信

    こんにちは、お久しぶりです。
    ご指摘とお星さまをありがとうございました。

    長い文章を書く大変さは身に染みて理解しているつもりです。それが他者の書いたお話の感想ともなれば、面倒が勝ってしまえば感想を送らない、という選択も生まれるでしょう。
    そんな中で、これだけの熱意を届けてくださったこと、感謝にたえません。心よりお礼を申し上げます。


    ご指摘いただいた、カスミの性格については私も感じているところでした。
    ねじれ解消のご提案にあった「決裂」で終わらせる予定だったこと、
    結末が変わっても性格を変える手間を惜しんだことが敗因、私の過ちです。

    分かっていれば変えればよかったのですが、当時は不協和音の原因は本当にここなのかどうか確信が得られず、そのままにしてしまいました。

    今回の梶野さんのご指摘で、自分の勘が間違っていなかったという自信につながりました。


    勉強しなおして、今度こそ試行錯誤の手間を惜しまず、もっと楽しんでいただける作品作りに取り組みます。
    どうぞ気長にお待ちいただければ幸いです。