幕間 森に潜む闇

 「な、なんということだ……まさかこんなことになるとは」


 タート村、森の奥――

 黒い水晶の獣が現れた騒動の後、黒いローブを着た男が愕然としていた。


 「我らが神の使徒たる獣三体が倒されているなんて……。この村にそれほどの戦士はいないはずだぞ!!」


 この男こそ、シンハたちが退治した黒い獣たちを生み出した犯人。


 ある目的から黒い獣を生み出し、タート村を襲わせようと画策していた。

 しかし、訳あって少し村から離れているうちに退治されていたことに気づいた。


 本来ならば、黒い獣たちが既にタート村を襲い『あるモノ』を入手していたはずだったが、襲うどころか早々に退治されていたことは完全に想定外だった。


 「しかも『黒水晶』もなくなっているではないか……。あれを『頂ける』数量は限られているというのに……。おのれぇ、いったい誰が!!」


 男は怒っていた。

 このままでは目的を達成できず、自分が罰せられるかもしれない。


 「新たに生み出すにしても、この森の獣たちは脆弱だ。今持っている『黒水晶』の力では耐えられずに消滅してしまう……。やっと生み出せた三体だったのに……。


 ああ、思い出すと腹が立つぅうう!!!」


 ブワッ!

 

 男から猛烈な勢いで黒いモヤ・・・・が吹き出す。


 危険な気配を察知した森の獣たちは、急いで男から距離をとった。森の最強種族である大熊や灰狼も慌てて逃げた。

 黒いモヤが、シンハたちを襲った黒い獣たちのように男を包む。

 

 男は怒りの形相から不意に邪悪な笑みを浮かべ、つぶやいた。


 「後悔させてやる……。計画を邪魔するものには、平等な死を与えねばなぁ!」


 ――身勝手な悪意が、3人に迫り始める。

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