【オシゴトNo.1】届かない恋文 ヒロコ先生side

教室で、ヒロコは1人で、児童用の机の高さを調節していた。

山ノ上小学校に来て2年目、今年は5年1組を担任することになった。

手元の名簿と身長を見ながら、テキパキと慣れた手つきで、六角ランチを回していく。


はぁ・・・

さっきから何度目だろう。

ため息が止まらない。

手紙を渡したい人がいるの。


でも、その人はずっと遠くにいる。

YouTubeチャンネル「文房具しか知らない世界」でメインMCを務めているカメのぬいぐるみ『かめるん』・・・の中の人。

去年、保護者と大きなトラブルになって、気分がズタボロの時に、元気をくれた人。

辛口だけど、親しみのある口調で、文房具を紹介していく…ぬいぐるみの中の人。

何度、あの笑いに助けられたか。

手紙は書いてあるの。でも、どこ宛に出したらいいかわからないの。



そういえば、昨日赴任して来たとうふ先生のクラスの方は準備進んでるかしら?全然音が聞こえないけど大丈夫かしら?


あ、教頭先生が出て来た。何か紙を持ってるわ。

となりの教室から出て来たってことは、とうふ先生と何か話していたのかな?


そうだ。学年通信でも書いて気を紛らわそう。


「とうふ先生ー。今あいてる?学年通信の相談したいんだけどー?」


「はーい。今行きまーす」


元気な返事が返ってきた。



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