第9節:ラントロの森の狂い火

 シルバーウェア王国には、とある山の麓にひっそりとたたずむ人口のまばらな村があり、王国からも、地図製図者からも忘れられがちだった。しかし、国税庁からの取税人は税金の徴収の際に忘れずにその村を訪れている。

 この村は「ブレビス」という名前だ。もともとは、三十、四十年前に石炭採掘のために石炭採掘ギルドが資金を投入して作った小さな町だった。十数年が経つと石炭が枯渇し、石炭採掘ギルドは町から撤退した。その幹部とお金持ちも町を離れた。町に残されたのは鍛冶屋、大工、鉱夫、バーテンダー、果物農家、牧畜民とその子孫たちで、彼らがここの『本当の住人』となった。

 村にある一軒の家に隠し部屋がある。窓も明かりもないため、とても暗いなのだ。事前に知らなければ、その中に人が横たわっていることに気づかなかっただろう。

 一人の男がその部屋のドアを開けると、外からの光がドアパネルに続いて入り、まるで光る絨毯を敷いているようだった。「団長、『モルデカイ』と他の者たちが来ましたよ」

 団長と呼ばれる人物は、枕の山からゆっくりと立ち上がった。テーブルの前を通った時、ついでにレコードプレーヤーの針を手で持ち上げた。そして頭巾で髪全体を覆い隠し、ドアから出ながら頭巾をしっかりと結び、数本のオイルランプが灯る広間に姿を現した──

 彼女こそがプリム祭盗賊団の団長、『エステル』である。暗い色のブラウスとズボンを着て、ロングブーツを履き、ベルトに必要な革製のポーチやダガー、短銃などを装着している。派手な装飾やオブジェのない、臨機応変に対応できる服装である。

 エステルは広間の中央にある大きなテーブルに近づいた。数十人の男の前でも彼女は圧倒されることがなかった。逆に彼女がテーブルに一歩一歩接近するにつれて、その渾身の気迫に押された男数名は息を呑んだ。

「まだそのキャラバンを襲撃したいと思ってるの?」彼女はテーブルの向こうにいるモルデカイに尋ねた。

『モルデカイ』は『エステル』と同様、団の幹部の称号である。モルデカイは副団長に相当する。彼の体格は傍らの団員と大差ないが、胸当て、ショルダーアーマー、ナイフ、手斧、短銃などの装備がより充実している。

「そうです」モルデカイは自分の意見を述べ、「今月に入ってから俺たちは一回しか略奪していなくて、しかもその収穫は大したものじゃなかったから、今回のチャンスは絶対に見逃せません!」と非難するような口調で言った。

「少なくとも五十マラック相当の品だったぞ」エステルはそう反論した。「その一部を村人に渡した後、団員全体が数週間穏やかに暮らせる量があるはずだ。まさかお前らは取り分を全部水の泡にしたのか?」

 その言葉を聞いて、モルデカイはさらに眉をひそめたが、彼は疑問に答えずに反論した。「団長、何を恐れているのですか?金銀財宝は港からどんどん運ばれてくるのですよ。我々はそれに手を伸ばすだけでよいのです!」

 エステルの表情は微動だにせず、「もう一度読んでやれ」とそばにいる部下に言った。

 その部下は眼鏡を押し上げ、「キャラバンは『ゴルセボ商会』所属です。申告した物品は、ニダラス絹、羊皮紙、リ・ラインダッチコーヒー豆、カン国茶。キャラバンのリーダーは『クリス・ベレッタ』。車両は二頭立て馬車五台。護衛は不明。船便は不明。税関再検査状況は不明、税関再検査員も不明です」と読み上げた。

 エステルは再びモルデカイと目を合わせた。「『ゴルセボ商会』という名前が気になったのではないか?しかし、この品物リストを見る限り、前回の品物より価値があるとは思えないよ」

「それと」ジョナサンという男が付け加えた。「税関に申告された貨物の名称はあまりにも大雑把で、いくら探してもこれ以上の詳細な再検査記録を見つけることができませんでした。その上、今回ゴルセボの貨物の価値は信じられないほど低く、王室御用達の商人ギルドが運ぶには割に合わないものでした。気がかりなのは──」

「それが囮である可能性なんだろう?」モルデカイがジョナサンの話を中断した。「奴らは上質のものを輸送していると思うよ。そうでなければ、なぜ軍部の者を護衛としてつけるんだ?しかも、それらの情報を大々的に書いて、それが隠すより現るだろう!」

 ジョナサンの無言で悔しそうな表情と沈黙するエステルを見て、モルデカイは自分がこの勝負に勝ったと思い、得意げになった。「たとえそれが本当に囮でも、心配もない。こんな事態は初めて遭遇するものではない。逆に数人の騎士を捕まえて身代金を要求することができる。あのリーダーは確か大尉だろう。高額の身代金を手に入れられるよ!」

「不安要素が多すぎます!」ジョナサンは大声で反論した。「一昨年、身代金を要求した時に多大な代償を払ったことを忘れましたか?誰かがもう少しで──」

「その時我々は実際略奪より儲かったぞ!そんなことを怖がるなら盗賊をやめてしまえよ。おままごとをしていると思うか?」

 モルデカイとジョナサンの口論がますます激しくなるのを見て、他の団員も次々と意見を言った。モルデカイ派とジョナサン派に分かれたが、モルデカイ派が優勢で、対抗勢力を圧倒していた。

 感情的な言葉や行動が見られるようになると、エステルはナイフを抜き、刀身の半分だけを残してテーブルを突き破り、その場にいる全員に衝撃を与えた。

 これが盗賊団の鉄の掟──『刃のテーブル』である。団員同士の争いが収拾つかなくなったとき、その場にいる最も地位の高い者が片刃の武器を使って、刃を自分に向かってテーブルに一部突き刺すことで、リーダーの自己判断の責任を象徴する。最終決定が下されると、命令に従う者はその刀身を全部テーブルに突き刺し、完全服従を象徴しているのである。

 エステルは腕を組み、皆の注意がナイフから自分に戻るのを待ってから言った。「なるほど、わかったよ、モルデカイ。しかし、今回の情報が少なく、不可解な点が多すぎることはお前も否定できないよね。しかも、これまでの囮キャラバンは傭兵ばかりを雇っていたが、今回は軍の大尉だから、作戦の規模も尋常ではないはずだ。それでも儲けに躍起になっているお前は、最悪の事態への備えができているのか?」

「なら」と言って、モルデカイは両手を広げ、手のひらを上にしてテーブルにいる全員に向けて広げた。「ここにいる小隊長でこの作戦の参加を希望する者は手を挙げてください。作戦が失敗した場合は、負傷者の看護に共同で責任を持つことになります。参加したくない者は何の責任も負わず、任務中、後方支援のみ行うものとします。これならどうですか?」。

 モルデカイが言い終わると、小隊長の約七割が手を挙げ、先ほど討論の時の「主流派」とほぼ同じ比率になった。手を挙げた者たちを見ると、まるでこれが命を擲つに値する最後の戦いであるかのように、全員の目に光が宿っていた。

 エステルは上を向いて目を閉じ、少し眉をひそめた。彼女がこの盗賊団を率いてもう四年になった。当初はあまり問題が起こらなかった。団員たちは互いを信頼し、彼女の決断に反対することがなかった。一連の作戦が進むにつれ、町は活気を取り戻し、人々も違う生活を夢見始めた。しかし、一年前、現職のモルデカイが加わると、彼のように欲深い者が彼と共に加入して、団の雰囲気すら変わったのだ。

 その『仕方ない』を意味する仕草を長く続けなかった彼女は、モルデカイの目をじっと見て言った。「いいだろう。『行動規範』を破らない条件で好きにするがいい。さもなくば、このナイフでお前はけじめをつけてもらう」

 団長が定めた行動規範は、敵を捕らえて殺さないこと、無事撤退を最優先とすること、そして、仲間を見捨てないことだ。

「問題ありません!」満足したモルデカイはナイフをテーブルに叩きつけ、エステルと数人の小隊長たち、そして広々とした広間を後にして、支持者たちを率いて去っていった。

 残っていた団員は皆団長派の者で、『政敵』が勝利したように見えることに不快感を抱いている様子が顔に出ていた。エステルは冷静に彼らを宥め、作戦中の各小隊の後方支援任務を与えた。やることのない者たちは次々と帰っていったが、ジョナサンだけが最後まで帰らなかった。

 エステルはテーブルの上にある無数のナイフの跡を指でなぞりながら、「増えるペースが速くなったな」とつぶやいた。

 刃のテーブルは暴力的かつ唐突に見える儀式だ。それはリーダーの決意を示す意図的な方法であると同時に、盗賊たちの衝動性がいかに団に傷をつけたかを思い知らせる方法でもある。

 ジョナサンもその跡を見て苦笑いを浮かべながら「そうですね。特にモルデカイが加わってからですね。そういえば、団長が指揮しない作戦は今回が初めてですね。何か問題が起こらなければ良いのですが。では、まだ仕事が残っているので、お先に失礼します」と言った。

 エステルはジョナサンがドアを閉めるのを見届けてから、ようやく一人になった。書類や地図でいっぱいの大きなテーブルの前に立ち、手元にびっしりと書かれた殴り書きの字を見ながら独り言を言った。「クリス・ベレッタ大尉、昇進のためなら何でもする軍内部で評判が高い男。ついに私が彼を相手にする時が来たのか?」

 頭上の空は墨を塗ったように真っ黒で、光を放つものが何一つ見えず、星一つさえも見えないほどだった。

 ラントローの森は、山の絶壁と隣り合っている。灰色の岩壁がフェンスの役割を果たし、木々の生息地の境界線を描くのに役立っている。崖に隠れたエステルのチームは、見晴らしの良い場所を見張り塔として選び、森の境界での動きを観察していた。

 団員一名が上着の隠しポケットから懐中時計を取り出し、左右に振って文字盤がはっきり見える可能性を探り、ようやく体から離れた位置で針の角度を確認した。「団長、もうすぐ五時です。ますます曇り空になって、恐らく日の出が見えないでしょう。暗闇で作戦を行う必要があります」

 崖っぷちにある灌木の茂みの後ろにしゃがみ込んだエステルは単眼鏡を持って、視界のギリギリのところを見つめていた。「三時ごろから天候が変わってきた。空気がどんどん湿ってくるから、何もなければ最高は雨の中を逃げるしかないな」

 ほどなく、エステルのもとに団員が後方からすっとやってきて、「全員配置につきました。前線の斥候からキャラバンを見たという報告とゴルセボの紋章の存在を確認しました」と言った。

 団員の話が終わった瞬間、エステルもキャラバンの馬車の灯りを発見した。「私も見えたぞ。作戦開始の口笛を吹け。全員配置につけ」

 ターゲットが現れた時、戦いは既に始まっていた。プリム祭盗賊団の団員は皆、各種用具.斧.縄.弓矢.長槍などの武器を持って全神経を集中し、獲物が来るのを静かに待っていた。

 その時、大雨が降り始めた。エステルの予想通りだった。バケツをひっくり返したような大雨が梢を打ち付けてから、団員全員の身に落ちてきた。冷たく、べたべたした感触が伝わるのに、そう時間はかからなかった。しかし、雨天時の作戦は初めてではなかったので、闘志は全く消えていなかったが、少し苛立ちを感じていた。

 エステルはマスクをつけて顔から目だけが見えるようにして、手にした望遠鏡を下げることなく、丸い視界ですべてを見つめていた──

 キャラバンは森の中をゆっくりと進み、灯りは時に見えなくなり、時に見え、等しい速度で罠に向かっていった。やがて標的はついに罠を張られた場所に到達した。先頭の馬車の前に木が倒れて、馬が怯えて前足を上げた。馬車の灯りの届く範囲に団員が現れ、馬車の御者が手を挙げて降伏し、先頭の馬車がうまく制圧されたように見えた。車列の後方を見ると、大勢の団員が松明を持って馬車に近づき、中央にある馬車も武器を手にした団員が徐々に近づいてきて、全部計画通りに行ったはずなのだ……か?

 エステルの脳裏に『ベレッタ』という名前が浮かび、胸中から不吉な予感がしていた。

「団長、見てください!」同じく望遠鏡を手にした団員が、キャラバンを見下ろして興奮気味に叫んだ。「馬車は全六両編成です!一、二、三、四、五、六、報告より一両多いです!大漁ですよ!」

 その言葉にエステルは、自分の目で情報の真偽を確かめなかったという、これまでなら絶対にしなかったような過ちを犯してしまったことに気づいた。視界が悪かったのだろうか?それとも、作戦の責任者でないから気が緩んだのだろうか?理由はどうあれ、悪い予感が彼女の頭の中で大声をあげていた──

 その瞬間、森から空に響く巨大な轟音が、エステルの鼓膜に、そして心臓にまでも届いた。悪い知らせが最も派手な形で『予感が的中したね』ということを彼女に伝えた。その瞬間、エステルが最初に感じたのは恐怖ではなく、心の痛みだった。

 車列の後方は猛烈な炎が燃え上がり、炎に包まれたであろう二、三匹の馬が高速で森の中を逃げ回っていた。その近くでは団員が身を隠したり、逃げたりしたので、陣形がほとんど滅茶苦茶だった。よく見てみると、炎は雨でも弱まらないほど不自然なくらい勢いがあり、何らかの助燃剤を使っていると推察された。

 爆発音の直後、銃声が鳴り止まなかった。その音は大きくなかったが、雨粒の音の中でもはっきり聞こえた。崖の上から下の様子がよく見えていなかったため、車列後方の大きな炎と馬車の周りの灯りを頼りに、車列の近くに人がもういないことを確認できた。代わりに淡い煙で馬車が見えにくくなっていた。

 エステルは「撤退の口笛を吹け!そしてリトルモアに乗って、仲間を救出しろ!」と吼えた。

 団員は後方の森の中に戻り、足の速い鳥に巧みに飛び乗った。走り出そうとしたその時、森の向こう側からはっきりと聞こえる銃声が響いた途端、団員一名が落下した。

 エステルはすぐさま銃を取り出し、敵が騎乗する馬に目掛けて引き金を引いた。「彼を起こせ、他の者は援護につけ!」

 流れ弾や矢で岩や木に穴が開くと、二人の団員が撃たれた仲間を素早く別のリトルモアの背中に乗せ、他の団員もクロスボウの射撃を終えて矢を装填し、踵でリトルモアを煽って発進した。

 追手がある程度の距離まで来たところで、殿を務めたエステルは木の幹に隠してあったロープを切ると、大量の枝葉が降ってきて追手の行く手を阻み、数頭の馬が人を乗せたまま枝葉に突っ込んだ。

 リトルモアは太い足の爪で一歩一歩足跡を地面に叩きつけた。人の顔に叩きつけた雨のカーテンは千本の針のように刺し、人は目を開けていることがほとんど不可能になった。

 前方の道路の状況はぼんやりとしていて、後ろには重装備の追っ手が、右にはそびえ立つ山壁が、左には高さ百五十メートルの崖があり、眼下には樹海が広がっていた。前方に向かってしか走れない状況は、これまでにないほど耐え難いものであった。

 幸い、雲の向こうから太陽が昇ってきて、ようやく人の目で景色を確認できる明るさになった。しかし、これも飛び道具を使う双方の戦いが、ますます激しくなることを意味していた──

「団長!五時の方向!」と、後ろにいる団員一名が叫んだ。

 その声にエステルは振り返り、右目で団員が知らせた方向をちらりと見ると、敵が既にクロスボウの引き金を引いていることに気づいた。冷たく光る矢が飛んできたが、エステルは一瞬のうちにナイフを引き抜き、矢を夜空に弾き飛ばした。

 双方から計十数人が投擲、射撃、銃撃などあらゆる技を駆使して、渾身の力で互いの技を崩した。身をひねったりかわしたりして、刃で矢を防ぎ、リトルモアを岩壁の方向へ飛び跳ねていった。今のところ、矢に当たって倒れた者はいないが、折れた矢が体に刺さっている者は数名いた。

 エステルは前方の道路の状況に集中するだけでなく、ときどき後ろを振り返って団員の安全を確認した。殿の団員が自分たちだけが知っている『目印」』の場所を越えると、近くにいた団員たちにアイコンタクトして、騎乗している鳥の荷物から爆薬の包みを取り出し、中に隠された導火線に火をつけて、とある岩壁の端にまとめて投げ込んだ。

 最後のリトルモアが爆風の範囲外に出たとき、爆薬は予定通りに爆発し、盗賊団が工事していた岩壁がそれに呼応して崩れた。砂や石、腐った木がこぼれ落ちて土砂の山となって追手の行く手を遮った。

 タイミング、火力、敵との距離、その効果まで、すべてエステルの計算通りだった。先ほど一緒に爆薬を投げた団員は「信じられません。本当に成功しましたね。計画通りです。予行演習さえしていないのに」と絶賛していた。

 エステルは口角だけをあげて褒め言葉を受け入れたことを相手に伝えて、「それは少ししか持たない。祝杯は橋を爆破してからにしよう」と注意した。

 今彼らが走っているこの道は、かつて鉱山用に開かれた山道で、畜力車などが通れるほどの幅がある。鉱山が枯渇した後、道に草が生い茂るようになり、近年ではプリム祭盗賊団が最も頻繁に利用し、ほぼ彼らの専用道路と化している。突発的な事件発生時に団員を帰すために、団長は先ほどの土石ダムや、まもなく到達する『橋』など、様々な罠を仕掛けた。

 突然、団員の一人が岩壁を指差して「うわっ、なんだあれ!」と叫んだ。

「お前もあれに気が付いたか?なんか凄い勢いで走っていったぞ。見間違いかと思ったぜ!」他の団員が補足した。近くの団員は何が起きているかと慌てながら聞き、背後にいる敵が何か秘密兵器を用意しているのではないかと焦っていた。

「魔獣じゃないよな?」

「有り得るぞ、体型はリトルモアとは似てないけど、リトルモアよりすばしっこいんだ!」団員たちが議論を交わした。

 エステルが団員の会話を聞きながら、岩壁の方向をしばらく見ていると、素早く動く一つの影に気が付いた。すぐに銃で狙ったが、二秒後、距離が遠すぎて、そして障害物が多すぎるから当たらないと判断して、近くの団員に向かって「何であれ、そいつが目の前に現れたら、できるだけ速く逃げて、必要なら爆薬をお見舞いしてやれ」と言った。

 団員たちは皆頷いた。でも彼女はそう言わなくても、リトルモアと同じくらい俊足の奴に挑戦する勇気のある人がいるとは思えなかったのだ。幸い、この先のカーブを曲がれば、『橋』はすぐそこにあり、奴が何かをしようとしてももう手遅れだろうということだった。

 プリム祭盗賊団が罠を仕掛けた『橋』とは、長さ五十メートルほどの石橋であり、谷で分断された岩壁の両端を結んでいる。もともと鉱石を運搬する畜力車が通れるように建設されたから、とても丈夫なのだが、橋の真ん中に設置されている六百ポンドの爆薬に耐えられるかは定かではない。

「団長!橋の上に誰かいます!まずい、うちの斥候が倒れています!」と団員が叫んだ。

 エステルは何も言わなかった。角を曲がったときから、彼女の目が既にその人を捉えていたのだから。


—‧—‧—


▍リトルモア▍大型鳥類の一種で、飛行はできないが、陸地を走ることを得意としている。荷重負担能力はさほどでもないが、大人一、二人の体重を十二分に支えられるため、短距離旅行をする者が移動用に利用することが多く、山間部を移動するレンジャーや盗賊の頼もしい相棒にもなっている。

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