第6節:ラビの記憶Ⅰ
ホーリー・ツリー・イアラ(H.T.E.)二七六一年秋、『サマリアの乱』十一年目のことであった。
その名が「平安」を語源とする『古都ヤドシャルム』にて、今夜は気持ちがとても落ち着かないまま時間が流れた。その西地区のある通りで、地底からドンドンと鈍い音が、時には小さく、時には激しく聞こえ、道路の石レンガがぼんやりと揺れることもあった。
突然、轟音が地面を突き破り、石レンガや土が周囲の家々に飛ばされた。辺りは恐怖の悲鳴に包まれた。二つ目、三つ目の穴が爆発でできた後、四つ目、五つ目、六つ目も続いてできた。その瞬間、地面が稲妻の形のように割れて、その割れが四方八方に広がっていった。次の瞬間、空気も震えるほどの轟音が空全体に響き渡り、半径約百メートル以内の建物、街道、起きている者も寝ている者も全て地面の下に沈んでしまった─
被災の中心地で、ある崩れた石壁が鋭利な物体で真っ二つに割れた。瓦礫の中から飛び出してきた人物が俊足で廃墟の端に向かって走り、マントを着ていた影も数名、廃墟から現れ、その人物の後を追っていた。
追われている者は、片手に羽毛のような形の大剣(刀身は眉月のように曲がり、鍔には絨毛の装飾が施されている)を持ち、もう片方の手で人を担いでいた。その剽悍に動く者はなんと女の姿をしていた。
廃墟の端が目前に迫ったとき、左右の瓦礫の中から二人の敵が姿を現し、挟み撃ちを仕掛けてきた。彼女は血の色をした大きな鋼鉄の刃を振り、壊れた壁に一人を斬り倒すと、軽やかに跳躍して、もう一人を後ろの追っ手の方向へ蹴り飛ばした。
邪魔者を排除すると、彼女はあっという間に廃墟の端にある半壊した家の屋根に飛び乗り、担いだ者をそっと下ろした。
一息つく間もなく、背後からまた別の敵が現れ、冷たく光る斬撃で追い打ちをかけてきた。彼女はわずかなステップでその攻撃をかわし、同時に敵の首を掴んで瓦礫の中に引き戻し、着地するとその頭を鋭い石にぶつけた。
そして、そのまま敵の群れに突撃して、身のほど知らずの手下二人を切り捨て、敵のリーダーである――他の者より背が高い黒い影――に近づいた。
二人の剣がぶつかり合うと、双方は目で互いの殺意を確認した。剣の攻防が目まぐるしく入れ替わり、弧を描いたあと再びぶつかり、その動きがまるで旋風を巻き起こせるように速かった。
手下数人がその隙をついて攻撃しようとしたが、二人の剣の間合いに踏み込むと同時に腕と足が体から離れ、彼女に掴まれて『人間の盾』にされた者もいた。リーダーが自分の部下を斬り捨て、死角から回し蹴りを彼女に仕掛けると、彼女は轟音と瓦礫と共に、半壊した建物まで突き飛ばされた。大きな音を立て、瓦礫も落下した。
女は隙間から起き上がり、血を飲み込みながら、リーダーが壁を踏みつけて自分を斬ろうとしている動きを察知すると、やられまいと全力で敵に突進し、足元の石壁が踏みつぶされた。
両者は自分の武器を慣れた構いで持ち直し、剣の間合いに踏み込むと同時に打ち合った──
リーダーは女の眉間を刺そうとし、彼女はリーダーの腹を刺そうとした。前者は横にかわしたが、瞬時に方向を変えた刃で腹に大きな穴をあけた。後者は頭をひねって辛うじて致命傷を免れたが、左目尻が大きな血しぶきを上げた。
両者は技を放った直後、しばらく静止していたが、間もなくリーダーの足元で液体が大きくこぼれる音がして、剣士――デボラ――の勝利が正式に宣言された。
しかし、瀕死の敵はここで終わらせまいと、震える手を上げてデボラの腕を掴んだ。デボラはわざわざ剣を持とうとせず、足を上げて相手を蹴り飛ばしながら、その力を利用してその場から自分を弾き飛ばした。
デボラは、先ほど仲間を置いた屋上まで戻るのにしばらくかかった。最後はスタミナを使い果たしたので、屋根の平らな部分で横になり、顔の左側からの激痛に襲われたまま、口を大きく開けて熱気を呼吸していた。
戦いに終止符を打った後、石の割れ目から下水道の水が流れ出し、崩れた壁と半分埋まった死体の間に流れた。泣きながら助けを求める人々の声が月明かりの中に響いた。それは、神に慈悲を求める声で、犯人に対する最も痛烈な告発でもあった。
デボラはしばらくのたうち回ってから、自分の体の主導権を取り戻したことを感じた。彼女はよろよろと立ち上がって、ローブの端からナイフで二、三枚の布を切り取り、洗浄や消毒をせず、直接左目の上に被せて、頭に巻きつけて固く結び、最も簡単で不潔な手当を完了させた。
振り返って廃墟の方を見ると、月と火の光が照らす中、黒いマントを着た五、六人が、倒れたリーダーを取り囲んでいた。彼らは先ほど自分と戦った者――ナジルの武僧たちだった。
「生き残った奴は思ったより多いな」とデボラは自分の心の中で独り言を言った。それは単なる皮肉ではなかった。何しろデボラはさっきの下水道の混戦で、四、五人を真っ二つにした手ごたえがあったばかりか、地上でも情け容赦なく敵を切り殺したつもりだった。今の人数の半分しか生き残っていないと思った。
足元にある大剣を手に取ると、柄から皮紐をほどき、身に付けている専用のベルトと結んで、背中にしっかりと固定した。
その後、デボラは仲間の遺体に近づいた。血の気のない顔を見て、自分が泣き崩れるだろうと思ったが、今は心身が疲れ果てて、涙を一滴も出すことができなかった。この人物はデボラの導師であり、今回の任務の護衛対象だったのだ。
もう一人の護衛対象が重要な品物を持って脱出に成功したので、任務自体は成功したが、革命の精神的指導者であるニコデモが死んでしまった。デボラにとって失敗したのはこれが初めてではなかったが、今回はいつも以上に後悔している。
二メートル近い身長のデボラにとって、巨大な剣と痩せた体を同時に肩に担いで運ぶのはいとも簡単だったが、その裏にある意味は、千キロの巨石と同じように重かったのだ。その名を聞くだけで相手が震えるほどの武芸者で、レンガを割って穴をあけることができることが何の役に立つと言うのか?戦いの最後の一里塚で、自分にとって最も大切な人を守ることすらできなかったのだ。
ここから離れようとしたとき、一人の武僧が先ほど集まっていた場所から廃墟を越えて目の前の坂に来ているのが見えた。あと少しだけ、距離に入ることで再度戦うことを意味するが、結局そのまま立ち止まったということは、敵に当分戦う意志はなく、脅しや警告、呪いといった言葉を伝えにきたに違いない。デボラは極めて軽蔑的な表情で、怒りを露わにする相手に振り向いた。
その男は「アドナイに誓う!いつの日か、お前にその代償を払わせてやる。ラビの仇だ!オメガのソプティム!」
「オメガのソプティム」はここ数年間、デボラに名付けられたあだ名であり、直訳すると「戦場の最後の判官」という意味になる。生存者の話によると、ソプティムのローブをまとった女剣士に遭遇するだけで、その命は天秤の片方に置かれ、彼女がどれだけ斬りたいかで生死を決めるという。デボラはその風説に対して納得していない。彼女からすれば、邪魔者を排除しているに過ぎないのだから。
デボラはその武僧に対して特に表情を見せず、ただ平静な口調で「帰れ、この戦いはお前たちの勝ちなのだから」と言ってから、別の家に飛び移り、高さの違う建物を駆け抜け、城壁へと向かっていった。
先を急いでいると、あわただしく掛け声を上げながら、自分とは反対方向に走っていく足元の人たちに目を向けた。彼らが人命救助のために被災地に向かっていることを分かっていた。その人たちは、憔悴しながらも激昂の表情をしており、街路の暗闇の中で人間性の輝きを放っていた。デボラは冷たい視線をそらし、星空の下で稜線を追い続けた。
デボラの魂は十一年間この内戦に苦しめられた。正確に言えば、デボラが所属する組織とあの武僧たちの争いでシオンの民は十一年間も苦しめられていたのだ。行く先々で、整然としない傷跡を残していった。相手の背後にある勢力が今の世界では光の象徴であるため、組織の評判がそれとは対照的に聞くに堪えないであることも無理のない話だった。
長い間、噂話を聞いていると、なぜ自分が蜂起に参加したのか、その原点を次第に忘れてしまい、組織の外の人や物事に無関心になっていった。ただ任務と仲間のことにしか関心が持てず、戦闘中に無辜の人が亡くなっても、申し訳ない気持ちさえ感じなかった。
比類なき足の速さで、デボラはすぐに城壁を越え、砂漠のどこかの崖の上にある洞窟にたどり着いた。ここはデボラが所属する組織である「ティーバ」のアジトであり、陥落していない数少ない拠点のひとつである。
デボラはニコデモの遺体を事後処理担当のメンバーに引き渡した。拠点にいた者たちは、既に訃報を聞いていたが、実際に遺体と対面すると、悲しみを隠せなかった。顔を横に向ける者、すすり泣く者、デボラと同じように淡々と受け止める者など、さまざまであった。
その後、医療班が集まってきて彼女の傷の治療を行ったが、彼らが驚いて大怪我をした左目がもう二度と見えないと告げられても、デボラは驚かず、冷静に受け止めていた。
治療が一段落つくと、デボラはニコデモのごくささやかな追悼式への参加を断り、代わりに物資輸送班から少量の保存食とワインをもらい、焚き火に一番近い場所を選んで壁に寄りかかった。後頭部に少し楽な角度を見つけ、目を閉じて、ぱさぱさの食感と蜜のような香りを味わいながら、自分なりに故人を思い浮かべた。
デボラは、「塵から魂が抜けた後に自分の気持ちを語ろうとするのは、心の弱い者の自己欺瞞に過ぎない」という導師の厳しい言葉を覚えている。導師の言葉は、自分がいつ死ぬかわからないという思いから、弟子たちが戦場で闘志を失い、敵につけこまれないようにするためだった。その意図は今なら理解できた。最初は嫌な言葉だと思ったが、考えれば考えるほど、妥当だと思うようになり、今では確実に実戦で役立っている。
どれだけ時間が過ぎたか、族長一人とスクライブ(文士)数名が近づいてきた。彼らはいずれも最前線の戦闘員ではないが、その判断が組織の存亡にかかわるほど権力があった。組織が武僧の背後にいる勢力とここまで戦えたことに、彼らの策略は不可欠であり、また許しがたいでもあった。
彼らはデボラに丁重に頭を下げた後、デボラを中心に半円を描いて適当にあぐらをかき、そのうちの一人がワインの入った革製の水筒をデボラに手渡した。
革製の水筒を受け取ったデボラはその袋の部分を片手で持ちながら、もう片手でノズルを自分の口にめがけて濃厚なワインを一口分飛ばした。眉をひそめてから、喉が焼けるようなワインを飲み干すという、族長に対する最も基本的な礼儀を示した。
革製の水筒を近くにいたスクライブに返した後、族長の灰色がかった白髭の下の口が微笑みながら、長い間受け継がれてきた祝福の言葉を重厚な声でゆっくり口にした。「聖なるアドナイよ!ソプティム・デボラに祝福を与えたもうた。アドナイをほめたたえよ!アドナイをほめたたえよ!堕落者の奸計を打ち破った。バーナバスは商人ギルドが手配した飛空艇に乗り込み、ジャフェンラージュ大陸へ向かっている。『マイチの祈り』は無事だ。そしてニコデモは地上で己の役目を全うした。その魂を憐れんだアドナイは、彼の魂を迎い入れ、アドナイの宮殿で永遠に生きるであろう!」
デボラはその『良い知らせ』を静かに聞いていたが、顔が全く嬉しくなさそうだ。視線が一人のスクライブの頭を超えて、焚火の上で舞っている火花を見つめていた。普段なら、このような冷淡な態度は糾弾されるであろう。しかし、デボラは、今この瞬間なら、彼らが自分の珍しいわがままを許してくれることを知っていたのだ。
族長は続けて言った。「戦争は終わった。今夜から仲間は皆、祭司庁の手下に捕まえられる前に、次々とシオンを離れることだろう。我々は失敗したのではなく、最も大切なものは守られたから。いつか再び立ち上がるチャンスはあるのだ。アドナイよ!これからも我々をお導きください」そう言い終えると、族長は一人のスクライブに対して目で合図をした。
指示を受けた男は、マントから二枚の羊皮紙の巻物を取り出し、デボラの前に突き出した。「ソプティム、これが最後の任務です。指定の時間までに、族長二人とその家族を商人ギルド指定の空港で飛空艇の搭乗まで護衛していただきます。二人目の族長と一緒にシオンからシェムオランド大陸に向かってください」
デボラは横目で巻物を見て、しばらくしてからそれを受け取ってローブの中にしまった。その時、スクライブたちの厳粛な表情が初めて和らぎ、誰かの無意識による息を吐く音が微かに聞こえてきた。
言葉以外の反応を見て、デボラは彼らの意図をわかっていた。なにしろ、当初の予定では、デボラは今夜護衛対象と一緒に飛空艇で出発することになっていたのだ。最強の戦士が何らかの事情で間に合わなかったから、組織はこの貴重なチャンスを手放さないだろう。この人たちはどのような思惑でこの二つの任務を押し付けてきたかも明らかだった。
族長は立ち上がり、もう一度アンナに頭を下げた。「ソプティム・デボラ、アドナイのご加護がありますように」そう言って、他の用事を済ませに行った。
スクライブたちは急いで退席することがなく、まるで拘束から解き放たれたように、ある者は背中や腰を丸め、ある者は両手を後ろに置いて体を支え、ある者は、胸までびしょびしょになりながら、ワインを豪快に一気飲みした。リラックスした雰囲気になると、彼らはその場で世間話をし始めた。ある者は数年前の会議で誤った決定をしたことを愚痴り、ある者は武僧の追跡をどうやって逃げきれたかを熱弁し、またある者は外国に着いたらどうするかという話を始めた。
一行が談笑していると、一人の青年が話から漏れていたデボラを思い出し、話の流れに乗って「ソプティム、これからの予定はどうされますか?その腕前なら、どこへ行ってもきっと引く手あまただと思いますよ」
「まだ考えていない」とデボラは興味なさげに答えた。その質問が軽はずみで失礼な態度なものだった。デボラは元々倦怠感で明け方まで昏睡するつもりだったのだ。
十三歳で革命が起こり、十四歳で剣を抜いて人斬りを始めた。現在は二十四歳だ。同じ年齢の人が色んな学問を勉強していたと同時に、彼女は自分の青春を全て戦場に捧げた。殺戮の戦場以外の世界がどのようなものか、少しも知らなかった。
既に家庭を持っているスクライブの一人は、あまりの申し訳なさに、軽はずみな質問してきた者を軽く叩き、「戦争が終わったのに、まだ戦えだの殺せだの、無神経なことを言っているんじゃない」と言った。そして、デボラに平然と微笑んだ。「ソプティムはいい相手を見つけて、子供を産んで、残りの人生を平和に暮らしたいと思うものだろう?」
デボラが答える前、既におせっかいな軍師たちがこの新しい戦場の兵棋演習を始めて、各部族の英雄の名を出して、体格から頭脳、容姿から性格厳選してくれていた。同門のバーナバスまでもが品定めのために駆り出された。
軍師たちが婿候補の部隊を作ろうとしたその時、デボラがようやく我に返り、戸惑いの表情で聞いた。「私は本当に子供を持つ資格があるのだろうか?」聡明な仲間たちはすぐ静かになり、目を丸くしてシオン大陸最強の女を見つめていた。
デボラは右の手のひらを覗き込みながら、長い間心の中に埋もれていた疑問を明かし続けた。「私はこの手でたくさんの命を刈り取った。殺めた者たちも、誰かの父や母、兄弟姉妹だったのかもしれん。どんな続柄であっても、誰かの子だったはずだ。手が血で汚れた私に、本当に小さな命を抱きしめる資格があるのだろうか?」
大きな鉄塊を軽々と扱える戦いの女神が、そんな繊細なことを考えているとは誰が想像しただろうか。スクライブたちは顔を見合わせたが、誰もどう答えたら良いかわからない。結局、場を気まずくさせた奴に尻拭いをさせることにした。皆が振り向いて、家庭を持っているスクライブは非難のまなざしを浴びた。
「えっと……家族というものは違うと思います」一呼吸おいて、彼は親しい同僚たちと視線を交わしてから話を続けた。「結局のところ、我々スクライブも皆殺人者です。ただ、剣の代わりにペンと口を使いますが、それでも皆家族を愛することができるんですよね。それはまさしくライオン、そう、雌ライオンのようです。狩りのときは獰猛ですが、それでも子供の世話はするでしょう」彼は再び笑顔を弾けさせると、その場にいる全員を見回し、自分の弁舌に感心しているように見えた。
その後、デボラは再び言葉を発することがなかった。その目は彼らの中間の何もない空間に向けられ、先ほどの議論で得られた論点と心に芽生え始めた夢を静かに振り返っていた。スクライブたちはデボラを煩わせることをやめ、話題を雌ライオンからかけ離れたものへと広げ、数分後に彼らの言葉は得体の知れない喧騒となって、デボラの耳元で吹き通って、夢という田んぼから隔絶された。
その夜から五日目、デボラは二人の族長と自分を飛空艇に乗せて、任務を無事に完了した。
シェムオランド大陸に足を踏み入れるや否や、デボラは組織の元パトロンのもとを訪れ、浮遊世界最大の商閥に自分自身の本領を売り込んだ。デボラは三年足らずで、シオン大陸の伝説から裏社会で最も人気のある『人間兵器』となり、鉱脈争奪戦から魔獣の谷の密猟事件まで、商閥たちが財を成そうとするところに己の剣の跡を残していったのである。
かつての戦友たちが、デボラの魂が汚れていると非難する手紙を送ってきたとき、彼女は既に本当にやりたいことを始めた――つまり、秘境の地を購入して、一人の孤児を一人目の養子として迎えることを実現していたのである。
デボラは残りの人生で、依頼を受けてお金を稼ぐこと、拾った孤児を育てることの二つに専念していた。デボラは子供たちに、生きるために必要な技術をすべて教えたが、唯一教えなかったものがあった。それは殺人術だった。このことは、商閥内のパトロンたちにとっては不満だった。彼らはソプティムが強大な才能を秘めた次世代のソプティムたちを育てることを期待していたのだ。
九十一歳のとき、デボラはある孤児を自分の最後の養子として迎えた。少女が大きくなるにつれて、商閥の連中はソプティムがどこにいても、必ずこの小さな子を連れて行くということに気が付いた。それは今までなかった現象だった。単に祖母の孫に対する愛情の表れだと考える者もいた。なにせデボラは既に高齢のうえ、自分と血の繋がりがある者はいなかった。しかし、デボラが後継者を育成しているのだと信じている、あるいは期待する者も少なくなかった。
ある日、組織のパトロンから手紙が届き、その内容には『時が来た』と書かれていて、そして約束の時間と場所だけが書かれていた。
それはホーリー・ツリー・イアラ(H.T.E.)二八四四年、デボラが百七歳の時の事だった──
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