私、冥界で心理カウンセラーをやってます／雙慧(ソウホゥイ)

第十章 過度の飲酒は（心身）健康に有害

「最近、現生で元気？」

「いつからこんなにわざとらしい喋り方をしたんですか？」

「……酒で懐かしい気持ちに浸ってもダメなの？」向かいに座っている男はお酒を持って一気に飲んだ。「答えないのか？」

「答えなければ、殿様はわたくしに、杖罪をお命じになりますか？」彼がそう言ったので、彼に合わせて遊ぼう。ちょうど最近は時代劇を見たから、少し真似できるでしょう。

「褒美として、つぼの酒を三つ遣わす」

「嫌です！」私はすぐに断り、隣に山ほど積み上げた酒瓶を指差し、「たくさん飲んだのに、まだ飲ませたいのですか？この山には、私は七つじゃなくても五つを貢献したよ！」と言った。

「随分長いことおしゃべりに来てないじゃないか？罰としていくつかを飲むべきだ」額に三日月の印がある黒い顔した男は、酒瓶を取って私のグラスに酒を入れながら言った。「最後まで付き合ってくれるのは君だけだ」

　黒い顔の男の言葉は決して嘘ではない。私がいるこの部屋はすでにたくさんの冥官が酔い潰れている。同席していた冥府十殿の殿主や親しい冥官たちは、例外なく全員が死ぬほど酔っ払っていた。

「それは私が生者だからですよ！あなたたちの酒に免疫力があって……もう入れないでください！私の肝機能数値が──」

「君が肝不全でなくなるわけではないことを保証するから安心して──他のアルコール関連の病気でなくなるわけでもない！」私の言い分を知っていたのか、黒い顔の男は慌てて言葉を足した。

　今、私に酒を勧めているのは、あの有名な地獄十王の第五王――閻魔大王なのだ。人間界では閻魔大王が獰猛で凶悪に見えると言っているが、彼を長い間知っているため、純粋に仏頂面で、笑わない時は三百万元を騙され、且つ美人局の被害にあってしまったような怖い顔がしたが、笑うとかっこよく見えるよ！

　これで、冥官が本当に顔で選んだという推測がもう一度証明された。

「……そこまで言われたらお酒を断れないでしょう？」陶器の浅盃の縁が、しばらく目の前に置かれていた酒碗を軽く叩き、一気に飲んだ。冥府の酒は人間界の酒のように飲めば飲むほど苦味が増し、アルコール度数の高い酒はスパイシーな感じがすることがなく、彼らの酒はほのかに蜂蜜の香りが漂い、飲むとスッキリとして、飲みすぎると魂が軽くなるような錯覚に陥る。

　冥府の食べ物をいっぱい食べたが、大丈夫なはず……だよね？

　……有事だとしても、すでに起こっていたはずだ。もう五年間食べているのに、毎日緊急救命室に三交代制で働いているわけだ。

「もう入れないでよ……」私は受け皿を取って浅盃に蓋をした。「あなたまで酔い潰れたらどうやって人間界に戻るの？あとで飲み会があるのに……」手首を上げ、ロープを見せてリマインドした。ロープのもう一方はまだ宋昱軒の手首に結び付けられているが、昱軒もベロベロに酔っ払っている一人だった。

「僕、僕は、佳芬を、連れて──」

「いいよもう、こんなに酔っていたら人間界に連れ戻るのも怖いんだけど」一言すらちゃんと話せない酔っ払いに自分の魂を渡すことは、いくら仲良いと言っても怖いよね！飲酒運転と同じでしょう！

「じゃ、これが最後の一杯」閻魔大王は約束を守る方で、気分がとても高まっても最後の一杯と言ったら本当に最後の一杯なのだ。凶悪な顔をした男は、溢れそうになった酒椀を持ち上がり、私に対して「君に乾杯」と言った。

「どうして私に？」と私が尋ねたが、閻魔大王の酒椀は直接叩きつけて来て、そして一気に底をついた。私もそれ以上の質問をせず、手に持った酒を一気に飲み干した。

　とにかく、殿主が私にそのような言葉で表せない乾杯をしたのは初めてではなかった。この冥官たちの心理カウンセラーとして、無免許と言っても彼らはそうする理由はわかる。

　チッ、ツンデレたち。

　閻魔大王の霊力が高く、霧を召喚してきた後、私はパッと目を開け、すでに自分の体に戻った。ベットサイドテーブルの時計をちらっと見て、すぐにベッドから飛び降り、急いで身支度をしてから、リュックを持って家を飛び出した。

　遅刻しそうだよょょょょょ！救急科の飲み会に遅刻するわけにはいかないよ！

　重要なのは、この飲み会はうちの看護師長の誕生日祝いのためなのだよ！看護師長は良い人だが、遅刻すると悪いイメージを与えてしまうの。しかも私たちの業界は時間をとても重視するので、遅刻しても良いくらいの大先輩になる前に、できるだけ時間を守ろう！

「佳芬が来た！」ドアに入るとすぐに、同僚たちはドアに面した長いテーブルに座っているのが見えた。座っている方も立っている方も緊急救命室の同僚たちは情熱に挨拶してくれた。育玟後輩が親切に一席を保留してくれた。

　ただ、私は心の中でため息をいっぱいつきたい。

　どうしてこの時間は勤務入れてもらってなかったんだ。持ち帰りの高級弁当だけ食べられるだけで十分なのに。

　私は社交、特に人間との付き合いが本当に嫌いだ。

　小魚はメニューを渡してくれた。「佳芬、救急科に来てもう二年なのに、飲み会一回も参加してないよ！今回はついに逃げられないよね」

　だって、行きたくないからよ！そのため、私はいつも飲み会の日に意図的にシフトを入れる。今回は月末に近づき、他の日に振り替えることがどうしてもできないので、仕方なく腹をくくって来た。幸いなことに、救急部の飲み会は役人口調で喋る人や酒を勧める人がいない（試しとして二杯を飲んだけど）。私はいつも通りに沈黙しており、小魚と育玟後輩だけが話しをかけてくる……

　カウンター席に座るまでは。

　本来であれば、病院部門は飲み会を行うとお酒のある場所を選ぶのが普通だった。一般の認識と異なり、医療従事者はちっとも健康ではない。救急科は酒好きで酒飲みの幽鬼らしい方がたくさんおられ、雰囲気が良く酒もある場所を選ばなければあいつらに満足させることはできない……

　そういえば、私は先ほど名実相伴う酒飲みの『幽鬼』の群れから抜け出したばかりのようだ……

「佳芬、」今日の主役は突然私の隣に座り、レインボープースカフェを二杯持って来て、そのうちの一杯は私の前に置いていた。「なぜここに一人で座っているの？悩み事でもある？何かあったら私に言ってね！」

　レインボープースカフェか……これは多分何かの色素で作られたのでしょうね。前回二殿の楚江王がお酒を飲む途中に突然興味が湧き、虹から色を取り出して、清酒に色を染めた。その場にいた冥官たちはこの技にとても賛嘆したね！

「何もないです。師長、お心遣いありがとうございます」私は最も安全な回答を選んだ。

　ああ、周りに大酒飲みがいっぱいいるのを感嘆しているなんて、彼女に言えないだろう？生者も死者も。

「何を考えているの？」師長は『何もない』という答えを受け入れてくれないようで、もう一度尋ねた。

「来月の評価を考えています。評価にはまだちょっと怖いですね──」適当に言った理由はひどすぎて罪悪感を感じながら、何もない振りをして目の前のレインボープースカフェを飲んでみた──

　アルコール飲料だが、私は飲めるでしょうね？それで、なかなか美味しい……私はさらに数口を飲んだ。

「評価なんて心配しないで！師長の私に任せてよ！あなたは基本問題をちゃんと暗記すれば大丈夫だ！」

　そうだ……基本問題だ。十階のナースステーションは答えをちゃんと覚えていなかったので上層部に目つけられ、何回も講習を受けさせられたと聞いた……

「評価って本当に嫌ですね……」

「逆に評価が好きな人はいる？」隣の人は『評価』という言葉に腹立ったようだった。「意図はいいけど、項目が多すぎて普段の仕事がとても忙しいのに、仕事以外の時間まで取られてしまった。この前、師長の私たちは、評価に失敗したチームが人員や経費削減をすると上層部に脅されたばかり──」

「上層部に脅されたのかい？」私はイライラしながら半分残ったカクテルをかき混ぜると、元々の虹色が混じり合い、薄いコーヒー色の液体になり、見るとさらにイライラになってきた。「上層部って誰だよ……いいえ、あなたたちは私たちを真似して評価までやるくらい暇なの？誰がこのことを持ってきたのか？」

　隣の人は答える前に少し躊躇した。「……以前、医療センターに勤務した上司だよ。彼は評価に合格すれば病院全体の評判が良くなると言った──」

「チッ、それがあいつの面子に立つだろう！さあ、どの上司があなたたちをいじめてるのか教えてくれ──くそっ、私は便利屋じゃないから、何でこんな些細な雑用を毎回手伝うんだよ！私自身も評価を受けなきゃいけないのよ、くそっ、評価を発明した人は油鍋に投げるべきだ！」

　人生で最も嫌いなことを聞き、怒りを抑えず、手に持った酒を一気に飲み干した。空いたグラスがテーブルにドンと置いた。

「佳芬？」

「なに？あなたのくそ上司の問題を解決する方法を考えてるんだよ。うちの師長のように、いつも上からのプレッシャーを私たちに言わずに一人で背負うことをやめようよ。知ってる？毎回彼女が腰を低くして電話に出ているのを見るのはとても辛いのよ！役職が高いやつって偉いのか？」

　騒がしかった周囲がいきなり静まり返った。でも、診察室は元々騒音が少ないほうだ。私の診察室は少なくとも外で拷問された亡霊の泣き声を隔離することができる。

「佳芬先輩、酔っ払っていますよ」誰かが突然私の名前を呼んだ。私はイライラして相手を振り払った。

「酔ってないし、あなたたちの酒は私に効果がない──」私の視線はクライエントに戻し、クライエントの鼻を指差し、自白してもらおうと態度軽く言った……クライエントは何か法術でも使ったのか？どうして部屋全体がぐるぐる回っているのか……

「さあ、時間を無駄にしないで、どの部門なのか早く教えてよ、電話するから──どっちの上司の方が偉いと比べよう！」私はあちこちと電話を探し始めたが、私の手はある大きな手に握り締められ、動けなくなった。

　突然の力で私はもがき続け、理由わからず黒いシャツを着てショートヘアーしている助手に、「宋昱軒、何をしているのだ！」と怒鳴った。

「佳芬、あなたは酔っ払っている」おなじみの冥官は冷静に言いながらも、その温かな茶色の瞳に慌てる気持ちを浮かべた。「傷つけたくないから、ちょっと覚めて──」

「酔っ払い？あなたが酔っ払っているのよ！さっき酔い潰れたのは誰なんだよ！」私は暴れ続けたが、冥官の力があまりにも強く、私のような弱い女子は彼から逃げられなかった。

　私は少しキレた。この男は最近ますます行儀が悪くなってきてる！

「昱軒、私の領域は私のルールだと言った。あなた、その度胸はどこから来た？」

「佳芬、もう言わない──」

「何をしているんだよ！私は口で世界を動かしているじゃないか！放して！すぐ！は、な、し、て！」私は宋昱軒を片足で必死に蹴ったが、宋昱軒は背の高い冥官であるため、私の短い足では当たることができなかった！しかも、そのくそ冥官は死んでも手を放してくれない！

「くそ、私が足短いからいじめだろう！あ、クライエントはまだいる──」

　それから私の記憶が飛んでしまった。