第七章 作文はテーマに沿うのが大切、わかる?
起伏に富んだ生活を長い間過ごしたら平穏な生活がどのようなものかを本当に忘れてしまう。でも、私にとっては、ソファやベッドに横たわることができる日が一番平和な日なのだ。
「チリン、チリン」風のない中、爽やかな風鈴の音が響き渡った。我が家の風鈴はどんな状況においても風に吹かれずに鳴ってしまう、その理由は風が吹かない場所に置いていたからだ。
「ご予約はありますか?」私は目をこすりながら、渋々ソファから立ち上がって玄関に向かい、そこで口で風鈴を吹いている冥官が見えた。
そして私はその場で爆発した。
「口で吹いてる?あなたはまさか口で吹いてるの!」このバカ冥官に攻撃を当てるため、食卓に置いているミトン(蒼藍が念力を込めたもの)を手に取って、このバカの頭を叩きのめした。「冥官には風鈴を鳴らす方法が何百個もあるのに、あなたはなぜ口で吹くの?」
明廷深は頭を抱えて、おどおどして言った。「でもこの間、簡さんは風鈴を『吹く』とおっしゃってましたが?」
私の家の玄関でつま先立ちして風鈴を吹くのは馬鹿馬鹿しいと思わない?
また私に罵倒されると思い、バカ冥官は再び怯えながら提案した。「剣で風鈴を鳴らしましょうか?」
お前は幽鬼だぜ!幽鬼!こんな物理的な方法で風鈴を鳴らさないでくれる?何のためにそんなに強い陰気や法術を鍛えたの?ベルトにぶら下がっている剣は風鈴を鳴らすためのものなの?お前の剣は泣いてるのよ、聞こえている?
もうこのバカを突っ込む気力がなく、私はこれ以上に言うのをやめた。明廷深のカウンセリング記録を出して食卓に座り、カウンセリングを始めた。まず、簡単な挨拶から行った。「どう?新しい環境はいかがですか?」
「僕がどうして平等王の近衛に任命された理由はようやくわかりました」
やっと自分の実力の強さを認識したよね。
「平等王の近衛は、飾りとして自分の役職にとどまっていればいいです。僕のような能力の低い冥官には適任だね」
……
宋昱軒と私が彼に探してあげた幽霊屋敷が無駄だと感じたのはなぜでしょう?
「あなたはミッションの賞金を取りに行った時、人間業務管理室の方も唖然としたと宋昱軒が言ったよ?」宋昱軒が私にその話をした時、喜びがいっぱいだった。おそらく当時オフィス全体の人の表情はコラ画像にまとめることができるほど面白かっただろう。それとも何百年も解決できない幽霊屋敷を解決したのは、このバカであること誰も信じないかもしれないね。
「ああ、ミッションが解決できたのは昱軒先輩のおかげですよね?」宋昱軒の名前に言及すると、明廷深の顔に敬慕する気持ちが表れていた。「昱軒先輩の助けがなければ、幽霊屋敷に閉じ込められて亡霊の仲間入りをしていたかもしれません」
宋昱軒は、最初から最後まで一言だけ、たった一言だけ叫んだ!しかも励ましの言葉でもなかった!彼を崇拝する必要はなくない?
くそっ、宋昱軒!次にこのようなケースがあった場合、あなたは黙って彫像のように私の横に立ってろ。
しかし、カウンセリングしに来ているので、ちゃんとしなくてはならないでしょう。
「自信がないと誰かに言われたことはない?」
「よく言われています……同僚や上司は、もっと自信を持つように僕を励ましてくれます」
「だよね。じゃ、どうして────」
「でも、もしあの時、自分をそんなに信じなければ、妻と子供は僕と一緒に死ななかったかもしれません」
いきなり生前の話に持っていくのはなぜ?
ご存知のように、生前のことは冥官にとっては非常にプライベートの話なので、気軽に聞くのがとても失礼であり、特に死因を聞くことだ。宋昱軒とは長い付き合いだが、彼の生前の名前すら知らなかった。この間に生前に結婚していたことも初めて聞いた。
冥官の名前を勝手に教えてはいけないなので、何気なく私に本名を教えてくれた明廷深はバカだった。
「言いたくないなら言わなくていいよ」
「確かに言いたくありません」明廷深の周りに巻きつけた陰気が少し波動した。
ああ、どうやってカウンセリングを続けるの?叱るのも、殴るのもできないし、彼はすでに記憶の沼に落ちており、陰気の激しさも上々に増している……
我が家の電化製品は、このレベルの陰気には耐えられないよ!しかし、すべての電化製品既に壊れてしまい、このカウンセリングを完成しなければ、壊れていたすべての電化製品に申し訳ないよね?
「聞いてもらいたいなら、言ってもいいよ」腹をくくって、私はミトンを着用した手で明廷深の固く握りしめられた拳を覆い、軽い声で言った。「多くはないが、冥官何人も生前のことを話してくれたよ」しかし、冥官が生前の話をする時、通常は強い乱気流と高騰する陰気を伴う。話してくれる場合は、いつも冥府のカウンセリング部屋で行い、しかも宋昱軒が部屋の外で待機していた。人間界でこのようなことするのは初めてだ。
彼は戸惑いながら口を開いた。「僕、昔は普通の鍛冶屋だったのに……」
「深仁、そろそろ昼ごはんだよ。休憩しよう!」
「手元の仕事が終わったら行くよ」
「仕事が終わったらご飯はもう冷めちゃうのよ」優しい妻が心配している顔で催促した。「最近の仕事量は多すぎるね。毎日昼も夜も休まずに鋳造炉で研ぎ澄まされているね」
「もっと稼がないと、どうやって体に良い食べ物をうちの奥さんに買ってあげるの?」そう言いながらも、洪深仁は手元のハンマーで真っ赤な刃物を勢いよく叩き続けた。「子供は冬に生まれるから、もっと貯めないと、どうやって産婆を雇い、子供を暖かくして冬を乗り越えさせるの?」
彼ら夫婦は結婚して十年に経ったが、妻の体が弱いため、なかなか妊娠できなかった。やっと子供が授かり、夫婦は大喜びした。男女を問わず、子供に温かい家を与えたいと夫婦で決意した。
『子供が無事でありますように』二人は先祖の位牌に祈り、同じことを望んでいた。
そのため、ある方から短期間で多くの刀剣を鍛造するように頼まれたとき、彼は断らなかった。
「これは手付金だ」ボロボロになった木製テーブルの上に豆板銀がたくさん入った袋が置かれ、その中には金の輝きも見える。「刀と剣はそれぞれ三十本ずつ、できるだけ早く」
彼は近くのいくつかの村で唯一の鍛冶屋なので、祭りが近づくと、神事に動物をと殺するため多くの肉切り包丁が必要あり、それで彼は鉄器を鍛造する能力が上がった。このご注文は少しおかしく納期は短かったが、妻やお腹の子のため、彼は喜んで一生懸命働いた。
そして、衙役が彼の家に足を踏み入れたとき、彼は逃げなかった。逃げる必要があるのも知らなかった。
「洪深仁!君を反逆罪で逮捕する」
懐妊した妻は途方に暮れ、衙役の袖を掴み泣き、「うちの旦那さんはただの鍛冶屋です、彼は何もしていません!」と言った。
「乱賊のために武器を鍛造することは、反逆罪に問われる!」
「お役人様、お願いします!私達は何も知りません!本当にただの鍛冶屋です──あ!」
衙役の手は妻の顔に強く叩きつけた。妻の口の端から血が滴るのも見えた。
どこから来た勇気と力がわからなかった彼は、衙役に拘束される状態から脱げ出し、新しく鍛造された大刀を手に取り、我に返ると既に三人の衙役が死んでおり、他の衙役達はこのやばい状況を見て、鬼畜を見たように鍛冶屋敷から逃げ出した。
それで彼らは逃げた。
しかし、遠く逃げることができずに捕まった。しかも、刀剣の制作を依頼した人に捕まられた。
「お前が告発したんだろ」
違う、彼は何もしていない、何も言っていない。彼がどれだけ弁解しても、乱賊は彼の言葉を信じなかった。怒りの発散や残酷な拷問をかけ、彼の舌は最初に引き抜かれ、次に両目も抉り出された。
果てのない暗闇の中で彼は、別の人が依頼人を激しく殴る音が聞こえた。
「お前、バカじゃないの?」それからまたパンチとキックの音がして、依頼人はあえて一言も言えず、叩かれたり怒鳴られたりするのを我慢した。「目を抉り出してどうするんだ?彼もう使えないぞ!これから誰が刀剣を作るんだよ」
「何を見てんだよ?」怒鳴り声が今度少し遠い方向に向かった。「何、旦那さんのことを心配してんの?お前の旦那さんはもう使いものにならない!」
人体が牢屋を鉄扉にぶつかったように、扉が「カチン」と音を立てた。
「深仁……」
「ああ……」彼は舌を失い、無意味な言葉を発するしかできなかった。妻の呼びかけを聞いた時、彼の心は体の虐待の傷よりも痛かった。
「ほら!彼のようになりたくないなら、大人しくやらせろ!」
二人の温かい家から逃げ出す前に、彼は妻にこう言った。「絶対に守ってやるから」
奥さん、ごめんね……守れなくて……
「ごめんなさい、深仁」その日の遅く、妻の声が彼の耳元に鳴り響いた。「来世も一緒になろう」
妻が別れを告げるように額に口づけた後、胸から背中にかけて激痛が走った。
「冥官になってから、妻の記録を探した。僕の死後、彼女は自刎した。自殺なので、彼女は服役するため地獄に送られ、僕は冥官になりました……」ここまで言うと、明廷深は頭をかきながら言った。「そう言えば、僕は自信ないことにはあまり関係ないような気がする……」
「くそ!関係ないってわかってるよね!悲しい話だけど、最初から最後まであなたと奥さんとののろけ話にしか聞こえませんよ!」私はミトンを着用した手で彼を強く叩きつけた。「でも、あなたが自分に自信を持てない理由は、だいたい理解できたわ」
彼の心のしこりは、主に妻を守ることができなかったという傷から生じていた。一見無関係に見えるが、当時彼は豪語したにもかかわらず、結局二人の約束を果たせずにいた。この件で彼は自分の能力に疑問を抱くようになった。
多分その時、彼は妻を守れるのと本当に信じていたのだろう。
したがって、幽霊屋敷のミッションは、最初から方向性が間違っていたため、彼の心のしこりを取り出すのができなかった。
私は棚から一枚の冥紙と書道筆を取り出して明廷深に渡し、明廷深は困惑した顔で私を見た。
「あなたを召喚する法術のやり方わかるよね?昱軒に来てもらって教える必要がないよね?」
明廷深は書道筆を受け取り、墨をつけていない筆は冥紙に「洪深仁」の赤い三文字をきれいに書いた。彼は冥紙を折り、手のひらに置いて軽く吹くと、紙がハンマーの形になってしまった。
「これはあなたを必要な方に渡す」紙ハンマーを赤い封筒に入れて封じながら呟いた。「てっきり生前は学生だと思っていたよ、あなたは全体的に学者のように見えるが……」
「冥官の今の姿は昔とはかなり異なっていますので珍しいことではありません」明廷深は説明した。「他の先輩達の話によると、今の昱軒先輩は昔に比べるとほぼ別人であったと聞きました。僕はまたマシのほうです」
今の宋昱軒は、標準的な武官だよね?今は私の助手としてアルバイトをしているが、たまに後ろ姿を見ると武侠小説の剣士のようで、貫禄があり、怒らなくても威厳があるように見える。
時々、冥官たちの生前には興味がありますが、彼らの生前に興味を持つことに対して代償は少し高いため、普段はあまり聞かなかった。
明廷深は恥ずかしそうにあたりを見回して、「えっと、簡さん、あなたのお宅は……」と言った。
「請求書を燃やしてやるから、今すぐ出てください」
ちょっと恥ずかしいのかもしれないし、長居してはいけないとわかっているのかもしれませんが、私の次の言葉を待たず、点滅する灯りとともに明廷深の姿は消えていった。
彼が去った後も、私の頭上の蛍光灯は点滅し続けていて迷惑だと思ったが、気絶する前に、心理カウンセリング記録を急いで作成しようか……
「トントントントン!」
外から急いでドアをノックする音が聞こえた。私は頑張って立ち上がり、蹌踉めいてドアまで歩き、覗き穴から外を見ると、予想外の人がそこに立っていた。私はドアを開けた。
「蒼藍、どうして──」
「さっき中にいたのは誰?」高校の制服を着ている蒼藍が話の腰を折り、慌てて尋ねた。「宋昱軒なの?」
「いいえ、別の冥官だ」
「別の?」話を聞いた蒼藍は驚いたが、それでも先に私に要求した。「お宅の禁制を破壊したくないけど、いつ呼んでくれるの?」
この話は、蒼藍が実際に直接入る能力を持っているが、禁制を破壊したら誰かがそれを修正しに来ないといけないのを理解しているため遠慮しているという意味だった。
「
「佳芬姐さん、あなたは無茶しすぎたよ!俺が確認しに来なかったらどうするんだよ!」蒼藍は大声で叫びながら法術で私をソファに移動させた。「そんな強い陰気に囲まれていると、人体に大きな影響になるのを知ってる?」
「私は毎週陰間の旅をしているけど、ちょっとの陰気は……」今になって、自分の声がいかに弱いかを実感した。
「これ、ちょっとって言えるか?」
まぁ、そうだね。家全体は明廷深が彼の生前の物語を語った時に放った乱気流によって全て破壊され、どの電化製品も壊れており、壁にも爪傷のような傷跡があった。
こんなに実力を持っているのに、蒼藍でさえわざわざここに来た……こいつは自分の実力に自信がないのは何なんだ?チクショウ!
「カウンセリングしただけ……」
「もう喋らないで」蒼藍は私の額に呪符を軽く描いた。最後の一筆が終わった後、その模様が私の体の奥深くまで入り込み、暖かい力が体中に遊走し、余分な陰気を追い出した。
「ゴホ、ゴホ!」
しまった。まさか血を吐くとは!
「カウンセリングだけでこんな風になるの?」蒼藍は台風が通り過ぎたようなリビングを指差し、太い腕を降ると、リビングはカウセリング前の状態に戻った。
あらばあ、請求書は燃やせなくなるじゃん!
「うるさいな!坊やは素直に学校に行きなさいよ!サボるのをばれたら大丈夫なの?」私は無理して振り返ってリビングを見た。「うちの電化製品は大丈夫?」
総替えしたくないよ!
「まず自分の体に聞いてみてはどう?」蒼藍はぶっきらぼうに言った。「あなたは今、本当にそちらに連れて行かれるところだったよ、知ってるの?」
「ああ、白黒無常は優しく私を引っ張るでしょう……」あの二人は常連だもん。
「俺はもうあなたに何を言うべきなのか本当にわらかないよ……」私の角度から蒼藍の二重あごしか見えないが、彼の白目はおそらく空までむいていることは想像できる。
「じゃあ、言わなくてもいいのに!」
多分私に対して完全に無言になったから、蒼藍はこれ以上話すのをやめて、始末の手伝いをしてくれた。
さっき修理が終わったのではないのか?蒼藍が何をしているのかを見る前に、私は深い眠りに落ちてしまった。
幸いなことに、カウンセリング記録は書き終わった……
–
明廷深
初期診断:極度の自信欠如と天然キャラ
治療評価:「困難なミッションを解決する」治療が失敗した
処置:「弱者を守る」をミッションカテゴリーに追加するほうが、心のしこりを取り出せる可能性があること。助手昱軒に保護対象を探すよう依頼すること。要観察。
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